ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

ポール.ヴァーホーベン

2012年09月23日 | 映画

 

最高気温30度がいきなり20度の世界に。と、こんな事態も考えてみれば毎年のことであった。取り敢えず水不足の心配はなくなりつつあるのではないか。

GYAOでブラックブックという映画を見た。見終った後に気付いたのだが、監督はポール.ヴァーホーベンロボコップの監督である。水準以上の娯楽作品を作る監督だが、フィルモグラフィを見ると、氷の微笑(全く好きではないが)以降、あまりヒット作はないようだし製作数も少ない。スターシップトゥルーパーでこけたのが響いてるのか。個人的にはロボコップと同じくらい好きなのだが、巨大化した夥しい数の昆虫や残酷な場面が嫌われたのか、全くヒットしなかった。皮肉もきいてよく出来てると思うのだが。

そんな彼の最新作がこのブラックブック(それでも2006年)。他の作品とは打って変わってシリアスな内容だ。監督出身のオランダが舞台で、第二次大戦下ナチに占領されたオランダ市民の抵抗と裏切りが描かれている。主人公はそんな時代をどうにか生き延びるユダヤ人の女性。それはオランダの隠された歴史、恥部とも言えるものだ。フランスで言えばベルディブ事件を扱ったサラの鍵などに近いものがある。監督としては是非とも撮って置きたかったのだろう。実話をヒントに作られたと表示されていた。

二時間以上の長い作品で、スパイとして送り込まれた主人公がその正体がばれるかどうかのピンチが当然描かれるのだが、この手のものの常道として、助かるのは分かってるのだがひやひやもので、その辺りは監督はつぼを心得ていて、見る方はうまく弄ばれる(となれば両者幸せ)。ただ、全体の時間が分かってると、これで終るわけはないと見るほうも色々想像してしまい、合ってればやっぱりねということになりちょっと興醒めというのは致し方ない。

全体では長時間にも拘らず良く出来ていると思う。全編オランダ語とドイツ語で、ドイツ人なのに何故英語だというハリウッドにありがちな適当さもなく、当時のオランダの状況をどうしても描きたいという監督の意思も良く伝わってくる。その辺りに興味のある人は十分楽しめるし、サスペンスとしても、イングロリアスバスターズほどの娯楽色はないが楽しめると思う。

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