日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ブックレビュー~「ドラッカー戦略/藤屋伸二」

2009-12-04 | ブックレビュー
●「ドラッカー戦略/藤屋伸二(日本能率協会マネジメントセンター1500円)」

ドラッカー本です。本年6月に出版された同じ著者の「ドラッカー入門」の第2弾的位置付けのようです。今回のテーマはドラッカーの「経営戦略」。前作は、その平易さ読みやすさから、11月で既に8刷を重ねるヒット・ビジネス本となっています。PFドラッカー氏に関してはいまさらですが、「マネジメントの父」「経営学の巨人」など幾多の近寄りがたいほどの賛辞的形容で語られる、まさしく“経営の神様”です。20世紀のアメリカに出現した巨大企業の組織分析をGMを題材に実践し、マネジメントの重要性を初めて世に説いたまさに“巨人”です。私などは、大学時代に経営学のゼミに所属し「マネジメント」を読まされ(原書ではなく翻訳版、しかも要約版)、「難しくて何もわかんねーよ!こんなもん何の役に立つんだよ!」などとのたまって開き直っていたりしたのですから、今の仕事を考えると何とも恐ろしや…です。

著者の藤屋氏はドラッカー研究に熱心な経営コンサルタントで、ドラッカーの理論を応用してクライアントの問題解決にあたっているそうです。このシリーズは「図解で学ぶ」とあるように、見開き単位でドラッカーの理論をワンテーマごとに取り上げ、右ページは文章で簡潔に解説、左ページは図解(あるいは箇条書き整理)を用いて至って分かりやすく視覚にも訴えかけてくれる構成なのです。言ってみると左ページはホワイト・ボード状態で、“ドラッカー理論の見える化”ができるといった様相なのです。こんな工夫で、「戦略の本質」「3つのマネジメント」「組織のあるべき姿」「コスト管理の5原則」などなど、ドラッカーの基本的な理論の“さわり”を実に平易に紹介していくれています。

今更ながらドラッカーの理論を読んで分かることは、すべての経営指南書(いわゆるビジネス書の類)はドラッカーを基本に書かれていると言っても過言ではないということ。すなわち、どんなビジネス書よりも先に、企業経営者はまずドラッカーを読み、ドラッカーを知るべきであるということであると強く感じさせられます。その意味で、このシリーズはドラッカー入門編としては最適の部類に入るのではないかと思います。ただし、掲載されている内容はあくまで“見出し”的な情報にすぎないので、深い内容は一切なし。私が考える本書の使い道は、各項目は見開きの左ページ下に出典が掲載されているので、その辺を参考にどの著作からドラッカーを読むか決めるのに使うのがいいように思います。

そんな使い方が出来ると言う点で、よくできた“ドラッカー・カタログ”といった趣きですので、10点満点で8点とします。ドラッカーを読んだことのない悩める中小企業経営者には、ぜひともおすすめしたい1冊です。このカタログ的書籍を読むだけでも、改めてドラッカーのすごさがよく分かると思います。まさに「マネジメントはドラッカーに始まりドラッカーに終わる」。「学生時代にもっと勉強しておけばよかったなぁ」と、今さらながら我が過去に反省しきりの小職であります。