日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

止まらぬ食の偽装事件、なぜトップが会見しないのか

2013-11-07 | 経営
ホテル、百貨店をめぐる「メニュー食材の偽装問題」は、その後も続々新たな“偽装”が発覚しとどまるところを知りません。この問題について改めてどうこう言うつもりもありませんが、個人的には食材の偽装云々以上に気になっていることがあります。問題発覚に関する謝罪に際しての各企業の対応です。

私が何より気になっているのは、謝罪会見になぜ真っ先にトップが出てこないのか、です。一昨日新たに問題が発覚し会見した高島屋、昨日問題が発覚会見をした三越伊勢丹、共に会見に出席したのはトップではなく担当常務でした。両百貨店に関しては、偽装はホテルとは異なりテナントがやったことが主であり、自身は管理責任のみという判断での“トップ温存”なのでしょうか。もしそうなのだとすれば、それは大きな間違いであるとハッキリ申し上げておきます。

企業が不祥事を起こし謝罪会見をする場合、謝罪をする相手は新聞記者ではなく世間に対してのものであり、自店を利用する利用者に明らかな迷惑を掛けた問題であるのなら、会見は利用者、消費者に対する謝罪の場であると理解をするのは、危機管理広報におけるイロハのイなのです。それと同時に、その場に登場する人物の格によって、その企業が当該不祥事をどう受け止めているかという重さが計られる、と理解しなくてはいけません。

今回のような明らかに自社の顧客に対して迷惑を掛けた問題、特に直接の被害者でなくとも自社を愛し贔屓にしてくれてきた利用者から自分たちの信頼を裏切る行為であると受け取られるような不祥事においては、トップが先頭に立って謝罪をするのが常識であると考えます。それができない各社は、今回の問題をなめている、根本的には利用者、消費者をなめていると言われても仕方がないということになるでしょう。

阪急阪神ホテルズの最初の会見、高島屋、三越伊勢丹、すべて判で押したように、担当責任者たる役員が会見し、第三者調査委員会も設けず「偽装ではなく誤表示」とあくまでミスであるという見解を貫く。この横並び意識は何なのでしょう。特に、高島屋、三越伊勢丹は共に主にテナントの食材偽装であり、担当常務が中央で謝罪するという絵面まで一緒。三越伊勢丹会見である記者がした「テナントさんの不祥事ですから、百貨店は被害者じゃないんですか」という質問は冴えてました。無論、回答は「いいえ」でしたが、この質問私には「あなた方、テナントの不祥事だからってなめてるんだろ!」とハッキリ聞こえました。

この状況、言ってみればビートたけしの歴史的ギャグ「赤信号みんなで渡れば怖くない」を地で行く対応です。しかしよくよく考えてみれば、そもそも今回の不祥事自体が「この程度のごまかしはどこでもやっていることだ」という「赤信号みんなで渡れば怖くない」的発想の下に起きたものではなかったのでしょうか。このような各社判で押した対応の繰り返しを見るに、「反省の色、未だ見えず」としか言いようがないのです。

みずほ銀行も、阪急阪神ホテルズも、結局当初にトップが謝罪に立たない会見対応により消費者の心証を著しく悪くしました。少し前に米の産地偽装問題でクローズアップされた岐阜の三瀧商事は、最後までトップが会見に応じないまま事態は悪化し会社解散の憂き目に会っています。トップが謝罪に立つことがそんなに怖いのでしょうか。もし仮に、トップが謝罪をすることによるイメージダウンを恐れているのなら、むしろそれは逆で、トップが謝罪会見をしないイメージダウンの方を恐れるべきなのです。しかも、トップが謝罪会見に立ち厳しい意見にさらされればされるほど、再発防止および改善計画にも力の入り方が変わり、組織として好ましい変革を起こすチャンスにもなるはずなのです。

問題続々の食の一流ブランドにおける食材偽装問題ですが、“トップ温存”という真剣みを感じない対応と、不祥事の根本原因とも言える“横並び意識にどっぷり姿勢”を感じさせられるにつけ、この手の問題の真の解決にはまだまだ程遠い状況にあるとつくづく感じさせられる次第です。

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