温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

海雲台温泉 海雲温泉

2020年01月08日 | 韓国
新年2回目の当記事からは、しばらく連続で韓国の温泉を取り上げます。
韓国(朝鮮半島南部)に地熱活動が盛んな場所は(おそらく)ありませんが、温泉浴場は各地に点在しており、庶民の憩いの場となっています。まずは韓国第二の都市である釜山市の温泉を巡ることにします。

釜山市には温泉地が複数あるのですが、手始めに海岸沿いの海雲台温泉へ向かうことにしました。海雲台温泉がある海雲台地区には、地下鉄とバスの両方でアクセス可能なのですが、ラッシュ時の渋滞が無い日中ならばバスの方が本数が多くて早いようなので、バスを利用することにしました。



釜山駅前から1003番の路線バスに乗車します。たしかに頻発していますし、座席が多い高速バス仕様の車両ですので駅前からなら座れる可能性が高く、至極便利で快適です。駅前を出発したバスは釜山の中心部から東部の近郊へと進んでゆくのですが、途中の停留所で次々にお客さんを載せ、やがて車内は大混雑・・・。



私が当地を訪れたのは2019年の夏だったのですが、海雲台はビーチリゾート地ゆえ海水浴客が大量に乗りこんで混んでしまったようです。釜山駅から約40分ほどで多くのお客さんが下車したビーチ目の前のバス停にて私も降りてみました。



この日は真っ青な空に白い砂浜が実に美しく、天高くそびえる高級リゾートの建物は夏の陽光を反射してキラキラと輝き、ビーチではたくさんの歓声が飛び交っていました。あぁ海に飛び込んで思いっきり泳ぎたい・・・。そんな感情を押し殺して街中へ。



海岸からちょっと入って路地を進むと、こんな庶民的な商店街もあるんですね。



当地には温泉浴場が複数あるのですが、まず向かったのは「海雲温泉(ヘウンオンチョン・해운온천)」という民間の施設です。私はハングルが全く読めないのですが、こちらはどうやら公衆浴場を併設した宿泊施設らしく、スマホの翻訳機能を駆使しながら外壁に書かれた文字を読んでみると、どうやら「100%食塩温泉水」と記されているようです。その言葉を信じ、入ってみることにしました。



1階駐車場の奥にある受付で湯銭を支払い、半券をもらってエレベータで上へあがります。エレベータ内の案内によれば、2階が女湯、3階が男湯で、5階と6階が客室とのこと。



3階でエレベータを下りると、すぐ目の前が男湯入口のドアでした。
中に入ると広い脱衣室があり、室内に待機している三助(おそらく垢すり)のおじさんへ券を渡します。まるで日本の銭湯のような脱衣室に文化的親近感を抱きつつ、任意のロッカーを使って着替えました(下足もロッカーへ収めます)。室内には床屋さんも併設されており、私の訪問時も実際におじさんが髪を切られている最中でした。

海外の温泉入浴で気になるのが、全裸なのかあるいは水着着用なのか、という点ですが、韓国の温泉は一般的に全裸入浴です。しかも陰部など恥ずかしいところをタオルで隠すことなく、堂々と行動するのが流儀のようです。私もご当地の流儀に従い、胸を張ってスッポンポンでお風呂へと向かいました。



浴場内も一見すると日本の大きな公衆浴場と同じように思えますが、細かく見てゆくと韓国ならではの設備も見られます。
室内の手前側には垢擦り場と洗い場が配置され、その左手に水風呂とサウナがあり、後述する浴槽を挟んだ奥の壁沿いにも洗い場が並んでいます。この後にも私は韓国各地の温泉浴場を巡るのですが、ご当地の浴場には必ずと言って良いほど、垢すり台と水風呂が設けられているのです。洗い場と浴槽の他、垢すり台と水風呂という4点セットが、韓国の公衆浴場には必需の設備のようです。



洗い場にはシャワー付き混合水栓がズラリ。たくさんあるので多少混雑しても全く問題ないでしょう。ただしシャンプーやボディーソープの備え付けは無く、使いかけの石鹸が置かれているのみなので、石鹸ではご不満の方は自分で持参する必要があるでしょう。



浴場の中央に大きな浴槽がふたつ並んでいます。脱衣室側の浴槽には亀の湯口が設けられ、亀の口からピューっとお湯が注がれていました。とはいえ亀の口から注がれるお湯の量は少なく、槽内で稼働している循環装置からの投入と吸引がメインとなっているようでした。特に槽内吸引がとても強力です。循環機能の甲斐があってか、湯加減は適温。じっくり湯浴みできる良いお湯でした。

一方、その隣にある浴槽では吸引装置などの稼働は確認できず、至って静かだったのですが、後程おじさんがこの浴槽に入って、設置されている赤いバルブを開くと、その先から熱々の温泉が大量に投入され、これに伴って浴槽縁の切り欠けからしっかりとお湯がオーバーフローしていきました。なるほど、亀がいない方の浴槽は溜め湯式で、客が任意でバルブを開けることにより新鮮源泉が注がれるわけですね。ただしお湯は熱いので常時入れっぱなしにすることはできず、適度なところでバルブを締めなければならないのです。

さてお湯に関してですが、建物の外壁に書かれていたように典型的な食塩泉であり、無色透明ほぼ無臭のお湯からははっきりとした塩味と薄い苦汁の味が感じられました。しかしながら塩辛いわけではなく、津軽平野の内陸部に点在する食塩泉のような、甘塩味とでも表現すべきものでした。海に近いからといって、ダイレクトに海水の影響を受けているわけではないようです。湯中ではツルスベの滑らかな浴感の中に引っかかる感触が混在して肌に伝わりました。食塩泉ですから体の芯までしっかり温まります。なかなか良いお湯でした。



脱衣室には分析表が掲示されていました。蒸発残留物が5970mgで、ナトリウムイオンが2133mg、塩化物イオンが2371mgという典型的な食塩泉です。効能書きには漢字が多用されているため、私でも大体読み取れました。



風呂上がりに施設のまわりをウロウロしていたら、裏手に「鉱泉」と赤く書かれた看板と、コンクリで蓋をされた構造物を発見しました。もしかしたらここが源泉かもしれませんね。


ナトリウム-塩化物温泉 61℃ pH7.3 蒸発残留物5970mg/kg
Na+:2133.0mg, Ca++:615.0mg,
Cl-:2371.0mg, SO4--:450.0mg,


釜山広域市海雲台区中1洞1128-41
(부산광역시 해운대구 중1동1128-41)

営業時間不明
7000ウォン

私の好み:★★+0.5


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都幾川温泉 旅館とき川

2020年01月02日 | 東京都・埼玉県・千葉県
あけましておめでとうございます。
2020年も何卒御贔屓の程宜しくお願い申し上げます。

さて新年一回目は、御屠蘇気分を記事の上でも楽しむべく、昨年(2019年)の5傑で選んだ埼玉県都幾川温泉の「旅館とき川」を取り上げます。こちらは旅館と名乗っていながら宿泊することはできず、1日4組限定の完全予約制で、食事付の日帰り入浴のみを受け付けています。お財布の余裕のある温泉ファンから高い評価を得ているこちらのお宿では、果たしてどんなお湯に巡り逢えるのでしょうか。素寒貧一歩寸前の侘しい生活をしていながら、人一倍見栄っ張りの私は、宵越しの金を全部使い切る覚悟で、昨年8月の某日に予約をし、現地へと出かけたのでした。



峠越えのサイクリスト達が多く疾走する県道172号線を山塊へ向かって西進し、途中で脇道に逸れて狭い山道を進んだ先に目的地の看板が立っていました。



お宿の建物はまるで奥武蔵の木々に隠れるかのようにひっそりと佇んでいます。
駐車場に車を停めると中からお宿の方が出てきて案内してくださり、玄関では女将が恭しくご挨拶してくださいました。



まずはお部屋へ通されます。2間で構成された和室で、とても綺麗で静かです。
なお客室は2室のみ。1日4組限定ですが、2室しかないため、昼2組、夕2組、といったように時間帯により分かれています。今回はお昼に伺いました。



館内では浴衣に着替えてゆったり過ごします。男女ともに浴衣を選べるのですが、特に女性用は多く用意されているので、どれを着ようか迷うこと必至です。



浴衣に着替えた頃合いを見計らって、女将がお抹茶を立ててくださいました。お菓子は柚子の羊羹。こちらのお宿は柚子がご自慢なんだそうです。ほっとひと息。



お茶で潤った後は、いざ入浴。浴室も2室あり、予め指定されています。つまり貸切です。
脱衣室は広くて綺麗。素晴らしいです。



脱衣室内に掛けられたプレートには、源泉100%のお湯を掛け流している旨が書かれていました。



浴室はシンプルですが、よく手入れされており、石の鮮やかさと木のぬくもりがしっかり感じられる素敵な和の空間です。



洗い場には計3つのシャワー付き混合水栓が取り付けられています。



上述のように浴槽には源泉100%のお湯が注がれており、循環などは一切行われていません。そのお湯は無色透明で綺麗に澄み切っています。ほぼ無味無臭でこれといった癖などもありません。大変清らかなお湯なので、身も心もすっかり浄化されること間違いなし。
特筆すべきは日本で最もアルカリ性が強いことであり、なんとpH11.3という驚くべき値です。
かといってウナギ湯のように極端にヌルヌルするわけではなく、程よくヌルッとした感を伴うツルスベの滑らかで優しい浴感が全身を包んでくれます。私のようなオッサンを含め、誰しもが「アタシって美人になっちゃったかも」と湯中の自分の肌を擦りながら感動してしまうことでしょう。

ちなみに当地の自家源泉では鉱泉が自噴しているのですが、湧出温度が低いために加温されていますし、なによりも湧出量が毎分2.4リットルと少ないため、前夜のうちに翌日使うお湯をストックし、それを加温して浴槽へ供給しているのです。
「湯水の如く」源泉のお湯を使えず、しかもそんな貴重な資源をかけ流して提供しているため、お客さんの数を絞らざるを得ないのでしょう。実に涙ぐましい努力の賜物なんですね。



客室にはこの鉱泉を紹介している書籍・雑誌類が並べられていました。中でも目を惹くのが高校の「化学Ⅰ」の教科書です。酸や塩基などを学ぶページで、日本で最もアルカリ性の強い温泉としてこの都幾川温泉が紹介されていました。旅行雑誌や新聞に掲載されることなら、他の温泉でもよくあることですが、教科書に載る温泉は滅多にお目にかかれませんね。



この特徴的な鉱泉を使った温泉ミストや、このお宿ご自慢のゆずでつくったワインなどが販売されていました。



こちらの施設は原則的に入浴とお食事がセットになった形で利用することになります。
お食事は柚子を使った薬膳料理のコースです。せっかくですので、お食事も簡単にご紹介しましょう。もちろん季節により献立が異なります。私はいただいたのは8月ですのでご参考までに。

まずは食前酒のゆずワインで口を潤します。前菜はゆず豆腐、枝豆と山芋が載った饅頭、なす煮浸し、ゆばといったラインナップ。この他、写真はありませんが茶わん蒸しも提供されます。
イワナの塩焼きは香ばしく、身もたっぷりで食べ応えがあり、実に美味でした。



山芋の磯辺揚げ、ゆず小鉢といった山の幸のほか、メカブとオクラの甘酢和えという海山の合わせ技も登場。画像はありませんが、粟や稗などの雑穀を混ぜ込んだ薬膳ごはん、お吸い物、お新香なども出されます。品数こそ多いもののひとつひとつの量はとてもお上品なので、小食な女性でもペロっと食べられるかと思います。



最後はアイスとフルーツ。今回出されたブドウは地元都幾川産なんだそうで、これが箆棒に甘くて美味しいのです。埼玉県のフルーツもなかなか上質なんですね。

掛け流しのお風呂で体を浄化し、美味しい薬膳料理で体の中もすっかり健康に。
お風呂は貸切ですので、時間内でしたら何度入っても構いません。
私も食後に軽くひと寝入りした後、思う存分に極上の鉱泉を堪能し、浮世を忘れてのんびりと湯浴みさせていただきました。1回の利用時間は4時間まで。こちらで過ごす4時間はあっという間に経ってしまいます。もっと長い時間過ごしたいなぁ。


いわゆる規定泉(メタケイ酸の項で温泉法の温泉に当たる)
14.9℃ pH11.3 2.4L/min(掘削自噴) 溶存物質0.219g/kg 成分総計0.219g/kg
Na+:39.2mg(47.11mval%), Ca++:35.1mg(48.21mval%),
CO3--:47.6mg(42.51mval%), HSiO2-:54.1mg(18.72mval%), OH-:16.0mg(25.13mval&\%),
平成2年8月13日
加温あり
加水循環消毒なし

埼玉県比企郡ときがわ町大字大野537
0493-67-0331
ホームページ

料金はホームページでご確認ください

私の好み:★★★

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コメント (2)
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