温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

小安峡温泉 松葉館

2018年04月13日 | 秋田県
 
引き続き秋田県小安峡温泉を巡ります。今度はお宿の日帰り入浴を楽しむべく、旅館「松葉館」を訪ねることにしました。ちょうど温泉街の真ん中に位置しており、観光案内所に隣接しています。玄関で日帰り入浴をお願いしますと、女将さんは快く受け入れてくださいました。


 
お宿は傾斜地に建てられており、玄関や帳場があるのは2階です。一方、お目当てのお風呂は1階にあるため、階段で1フロア下ることになります。
館内の浴室は露天風呂付きと内湯のみの2室に分かれています。訪問時は前者に男湯の暖簾が掛かっていました。なお男女入れ替え制なので、宿泊すれば両方に入れるのでしょうね。


 
清掃が行き届いた脱衣室を抜け、まずは内湯から利用することに。大きな窓に面して浴槽が据えられ、その反対側の壁に沿ってシャワー付きカランが6基並んでいます。シャワーから吐出されるお湯は、硫黄の湯の香をはっきりと漂わせていました。湯船のみならずシャワーにも温泉が使われているのでしょう。
十和田石で造られた浴槽は、目測で2m×5m程のなかなか大きなもの。10数名は余裕で同時入浴ができそうです。


 
内湯に張られているお湯は循環されており、中央の湯口から出てくるお湯は既に適温状態でした。しかしながら、浴槽の隅にあるホースからは激熱のお湯が注がれていましたから、おそらくこの熱いお湯は新鮮源泉かと思われます。ホースの水栓にはベージュ色の析出がビッシリとこびりついていました。


 
続いて露天風呂へ。「檜露天風呂」と称しているだけあって、随所に桧材が多用されています。露天とはいえ大部分は屋根に覆われているのですが、後述する湯船に入って外の景色を眺めると、額縁効果がもたらされるのか、目の前の木立が美しい風景画のように見えてきました。この露天風呂には浴槽が2つあります。


 
 
手前側の高いところに設けられた浴槽は檜風呂。縁が高いのでステップで上がって入浴します。手作り感溢れる四角い枡形の浴槽は2人サイズ。内湯と異なりこちらは放流式の湯使いを採用しており、また加水も極力控えているらしく、湯口から注がれる激熱な温泉の投入量を絞ることによって湯加減調整していました。その発想は良いのですが、調整の塩梅がその時の気候条件などに合っていなかったのか、湯量の絞り過ぎにより、私の訪問時はかなりぬるくなっており、特に底は水のような状態でした。私は日帰り入浴でしたのでリクエストを遠慮しましたが、宿泊時には宿の方に声を掛ければ再調整してくださるものと思われます。


 
もうひとつの浴槽はタイル貼りで5~6人サイズ。松葉館というお宿の名前に因んでいるのか、浴槽の形状も松葉です。思わず目を惹くのが、浴槽内に沈められている石のステップ。そこにはイワナのイラストとともに「ご湯っくり」と刻まれていました。それを目にした私は思わずニンマリ。寛ぎの場に相応しい脱力系グッズと言えるでしょう。

お湯は市が所有している源泉の混合泉を引いています。無色透明で僅かに塩味があったような無かったような…。各浴槽では無味無臭のように感じられたのですが、上述した通り洗い場のシャワーから出てくるお湯は、はっきりとしたイオウ感、具体的には火山ガスのようなツンと刺激する匂いとタマゴ感、そしてゴムボールのような風味が伝わってきました。またこの知覚的特徴は露天の湯口でも同様に感じ取ることができました。総じてお湯の個性は大人しく、掴みどころに欠けるような気もしますが、おそらく個性が弱い分、体には優しいかと思われますので、濃いお湯が苦手な方やのんびり湯浴みしたい方には宜しいのではないでしょうか。

お風呂上がりに女将さんがお菓子をくださいました。ありがとうございます。
身も心も温かくなるお宿でした。


皆瀬1号井・皆瀬2号井混合泉
単純温泉 87.5℃ pH8.4 湧出量測定不可(自然湧出) 溶存物質0.563g/kg 成分総計0.564g/kg
Na+:125mg(83.69mval%), Ca++:12mg(9.23mval%),
Cl-:138mg(62.13mval%), HS-:0.8mg, SO4--:84mg(27.78mval%),
H2SiO3:151mg,
(平成26年7月23日)
加水あり(源泉温度が高いため)、循環あり(内湯。衛生管理のため)、消毒あり(衛生管理のため)
加温なし

秋田県湯沢市皆瀬字湯元50-1  地図
0183-47-5019
ホームページ

日帰り入浴8:00~20:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★
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小安峡温泉 元湯共同浴場「山神の湯」 2017年再訪

2018年04月10日 | 秋田県
 
秋田県小安峡温泉の知る人ぞ知る共同浴場「山神の湯」。拙ブログでは9年前に取り上げたことがありますが(以前の記事はこちら)、昨年(2017年)の某日、久しぶりに再訪してみることにしました。
某温泉宿の脇から伸びる小径を歩いてゆくと、その路傍に手書きの看板が立てかけられており、そこには共同浴場の利用者に向けたメッセージが書かれています。浴場を利用する場合は指定の民家へ200円を支払ってね、そして入浴は40分以内でお願いしますね、とのこと。この看板に従い、まずは民家で湯銭を納めます。なお、支払いを受け付けている民家は、軒先にその旨を記した札が括りつけられています。


 
湯銭を支払った後、小径の一番奥に建つ湯小屋へと向かいます。久しぶりの再訪ですが、外観は前回訪問時と全く変わっていませんでした。近年は入浴施設の廃止が相次いでいますから、このように変わらぬ姿で再会できると、大袈裟かもしれませんが、心の底から安堵してしまいます。


 
引き戸を開けて更衣室へ。棚などが用意されているだけの至ってシンプルな室内です。この度再訪して初めて気づいたのですが、この湯屋の更衣室は、男性用の方が圧倒的に広く、更衣スペースの3分の2が男性用で占められているようです。



更衣室は男女別ですが、お風呂は1つ、つまり混浴です。とはいえ、さすがに混浴はハードルが高い。実際に私が入ろうとすると、先に地元のお婆様が2人入っていらっしゃったのですが、外来者である私の気配に気づくと、お二人ともお風呂から上がり、私に浴室を譲ってくださいました。「お寛ぎのところを大変恐縮です」と厚意に感謝しながら、ありがたく湯浴みさせていただくことに。



浴室の様子も以前と全く同じ。透明なポリカ波板の天井から陽光が降り注いで明るい室内には、モルタルで造られた浴槽がひとつ据えられています。1.5m×2mの3人サイズで、木材を多用することにより無機的な質感を極力打ち消す配慮がなされています。集落住民のための無人共同浴場ですから、シャワー等の設備はありません。備え付けの桶で湯船から直接お湯を汲んで掛け湯することになります。なお、後述する加水用水道管でしたら洗い場の方へ分岐されていますので、そこのバルブを開けば洗い場で冷水を使うことができます。


 
湯口の様子も以前のまま。外からやってくる温泉のパイプには非常に熱いお湯が流れているのですが、このお湯が浴槽上の小さな枡に一旦落とされ、そこで源泉のお湯とほぼ同量の冷たい水と混ざることによって、ちょうどよい湯加減となって浴槽へ供給されます。投入量が多いため、浴槽のお湯はふんだんにオーバーフローしており、湯船のお湯はとてもクリアでフレッシュです。

お湯は無色透明で、湯口にて僅かな塩味とタマゴ感(味と匂い)が得られ、ゴムボールのような硫黄感も少々伝わってきました。湯中で肌を擦ると少々の引っかかりがあるものの、基本的には弱いサラサラで癖のない優しい浴感です。とにかくここのお湯は鮮度感が素晴らしく、小さくて実用的なお風呂でありながらいつまでも入っていたくなり、あっと言う間に40分が経ってしまいました。素敵なお風呂を守って下さる地元の方に感謝。いつまでもこのお風呂に入れることを祈っています。


温泉分析書掲示なし

秋田県湯沢市皆瀬
地元の方用のお風呂であることを考慮してここでは地図の掲載を控えます。

入浴可能時間:20:00まで(OPEN時間は不明。常識の範囲内で)
200円

私の好み:★★★


コメント (1)
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泥湯温泉 奥山旅館 2017年

2018年04月07日 | 秋田県
秋田県湯沢市の泥湯温泉は、山奥の地熱地帯に湧く濁り湯が人気を集める有名な温泉地ですが、硫化水素中毒による被害の発生、旅館の火災、閉鎖、そして雪崩など、災難が相次いでおり、一介の温泉ファンとして、そうした報を知るたびに心を痛めてまいりました。そこで秋田県南部へ足を運んだ某日、久しぶりに泥湯温泉へ立ち寄り、奥山旅館でひとっ風呂浴びることにしました。


 
泥湯温泉の狭いエリア内に櫛比していた木造の建物は、旅館の焼失や廃業によって、数年前の半数近くに減ってしまったようです。久しぶりに現地へ行ってみると、視界が妙に広いことに驚き、この数年で当地が経てきた苦難を想うと、胸が痛くなりました。解体撤去された建物の跡地は更地になり、砂利が敷かれて駐車場として使われていました。


 
泥湯旅館には数年前まで3軒の旅館がありました。「小椋旅館」はそのうちの一軒であり、昨年私が訪れた時にも通常営業を続けているようでした。一方、その手前にあった「豊明館」は廃業し、建物は完全に解体されて更地となり、治山工事の詰所として使われていました。


 
さて、今回の訪問先は泥湯で最も有名な「奥山旅館」です。既にご存知の方も多いかと思いますが、こちらのお宿は2016年に火災のため烏有に帰してしまいました。その後、焼け残った浴舎と露天風呂で日帰り入浴のみの営業を暫定的に再開しています。今年は宿泊棟の着工を目指しているんだそうですが、その完成までは日帰り入浴のみの営業が続くものと思われます。以前私が訪れた時には、昭和の風情を色濃く残す昔ながらの食堂で昼食をいただいたのですが、先日伺った時にはその食堂は無く、その代わりに小洒落たカフェがお店を開いていました。



【チケット】
路地に面した仮設の受付小屋で湯銭を支払うと、黄色く細長いチケットが手渡されました。入浴の想い出になりますね。湯銭は500円。これで「天狗の湯」と「露天風呂」の2つのお風呂を利用できます。まずは「天狗の湯」へ行ってみましょう。

※お風呂は撮影不可なので、以下外観のみ画像で取り上げ、内部に関しては文章でお伝えします。悪しからずご了承ください。館内の様子をご覧になりたい場合は、公式サイトをご覧ください。



宿名を記した立派な看板の前に不老不死の銘水が落ちる「天狗の湯」。山間の秘湯にふさわしい、総木造の風情ある佇まいです。浴舎の中は薄暗いのですが、却ってそれが落ち着いた雰囲気を生み出しているようでした。
棚だけしかないシンプルな脱衣室を抜けると男女別の内湯です。室内には浴槽がひとつ、そしてL字型にシャワー付きカランが5基設置されています。泥湯という名前の通り、温泉には湯泥が多く含まれており、内湯の湯船も湯泥でグレーに濁っていました。濁り湯というものは、日本人が持つ温泉情緒と見事に合いますね。

内湯からドアを開けると露天風呂です。屋外で女湯側と合流するので混浴です。露天風呂には屋根掛けされた浴槽が段違いに2つ設けられており、下段は適温、上段はかなり熱めのお湯が張られていました。熱いとはいえ、山の水がホースから常時出ているので、もし入れなければ水で適宜薄めれば良いでしょう。露天風呂のお湯は、はじめは透明度が高かったものの、私が湯船に入ると沈殿していた湯泥が舞い上がり、一気に濃いグレーへと濁りました。お湯からは酸っぱい味と匂いが感じられるほか、硫化水素臭もはっきりと嗅ぎ取ることができました。なお、味覚は酸っぱいのですが、口が収斂するほどではなく、マイルドな酸っぱさであったように記憶しています。



つづいて「露天風呂」へ。上述の「天狗の湯」の露天風呂は内湯に付帯しているものでしたが、こちらの離れの露天風呂は、まさに露天風呂だけでお客さんを感動させてくれる、大きくて開放的なお風呂です。また「天狗の湯」の露天は混浴でしたが、こちらは男女別ですから、混浴が苦手な方でもこちらなら気兼ねなく露天を楽しめます。
脱衣小屋を経てお風呂へ出ると、俄然視界が開け、あたかもプールのように広い浴槽が白濁したお湯を湛えていました。男女の仕切り塀に庇がついているものの、一部にとどまっているため、非常に開放的です。浴槽の底面は砂利敷きですが、底には湯泥が沈殿しているため、私が湯船に入るとしっかり灰白色に濁ってくれましたが、さすがに広いだけあり、濁ったのは私が入った周辺だけ。そこから離れると透明度を保ったままの状態でした。
この「露天風呂」は「天狗の湯」と別源泉のお湯が引かれており、濁りの程度が幾分淡い他、酸味などの味や匂いも若干薄いように感じられました。源泉温度が90℃近いため、温度調整のための加水が多く、その影響で薄まってしまっているのかもしれませんが、成分そのものも103mgしかないので、そもそもが薄いお湯なのでしょうね。とはいえ、湯加減は実に素晴らしく、いつまでも浸かっていたくなるような極上湯でした。

たとえ宿が焼けてしまっても、泥湯の名前は天下に轟く。甍は灰燼と化しても記憶は旅人の心に残り続ける。私が訪れたのは平日の日中でしたが、それでも遠方地のナンバープレートをつけた車が複数台やってきて、皆さん湯あみを楽しんでいらっしゃいました。再建には並々ならぬご苦労があるかと存じますが、是非ともまた宿泊できる日がやってくることを願ってやみません。


(天狗の湯)
天狗の湯源泉
酸性-鉄(2)-硫酸塩温泉
67.5℃ pH2.48 蒸発残留物1170mg,
H+:3.33mg(42.31mval%), Al+++:7.1mg(10.13mval%), Fe++:50.1mg(22.95mval%),
Cl-:5.0mg, SO4--:351.3mg(92.77mval%), HS-:39.1mg(5.08mval%),
(平成16年5月18日)
加水あり(源泉温度が高いため)、加温循環消毒なし

(露天風呂)
新湯
単純温泉 88.3℃ pH3.8 溶存物質86.4mg/kg 成分総計103.3mg/kg
H+:0.15mg, Na+:4.5mg, Ca++:6.4mg, Al+++:0.3mg, Fe++&Fe+++:0.4mg,
Cl-:2.3mg, HS-:0.2mg, SO4--:35.9mg,
H2SiO3:33.9mg, CO2:16.2mg, H2S:0.7mg,
(平成20年1月9日)
加水あり(源泉温度が高いため)、加温循環消毒なし

秋田県湯沢市高松泥湯沢25  地図
0183-79-3021
ホームページ

11月中旬から翌年4月下旬まで冬季休業
10:00~17:00(受付16:30終了)、休業日あり
暫くは日帰り入浴のみ
500円
「天狗の湯」のみシャンプー類あり、ドライヤー・ロッカー見当たらず

私の好み:★★★
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新真室川温泉 関沢荘

2018年04月04日 | 山形県
 
山形県北部の真室川に渋い佇まいの温泉があると聞き、どんなお湯に出会えるのか実際に行ってみることにしました。カーナビに導かれるまま車を走らせて行くと、田園風景の中、ちょっぴり高い土地の上にポツンと建っている平屋の建物を発見。これが今回の目的地「関沢荘」です。日帰り入浴の利用が多いかと思われますが、湯治宿としても営業しており、むしろ宿が本業なのでしょうね。


 
道路の向かい側には上画像のようなボイラー小屋があり、そのまわりには廃タイヤがたくさん置かれていました。後述しますが、こちらのお湯は源泉温度が低いために加温しています。おそらくこのタイヤはボイラーの燃料として使われるのでしょう。そして、ボイラーで沸かしたお湯は、青い配管を通じてお風呂へ流れてゆくものと思われます。


 
玄関の引き戸を開けると、節電モードで薄暗い館内は妙にガランとしており、はじめ見た時には「営業しているのか?」と不安になってしまいました。番台で店番をしているご機嫌斜めな感じのおじさんに湯銭を支払います。


 
廊下の突き当たりが浴場です。男女の入り口が左右に並んでおるのですが、この入口の引き戸を開けるには、ちょっとした注意が必要です。というのも、引き戸に戸袋がなく、たとえば男湯の戸を開けると女湯の方にその戸がスライドするため、女湯側で出入りができなくなってしまうのです。このため男女共にこの戸を開けるときは、隣の方でお客さんの出入りが無いかを確認、あるいは様子を窺った方が良いでしょう。


 
浴室は男女別の内湯のみ。石板とタイルで構成された室内はかなり年季が入っており、全体的にくすんでいるような印象を受けます。私が訪れた時、室内には湯気とともにカルキ臭が漂っていたのですが、お湯から放たれているものか、あるいは浴室清掃時に使われた薬品の残り香なのか、そのあたりの事情はよくわかりません。


 
洗い場は2ヶ所に分かれており、シャワー付き混合栓とスパウトのみの水栓、計3個の水栓が設置されています。私が利用した時にはシャワーからお湯が出なかったので、湯船のお湯を汲んで掛け湯したのですが、これは偶々だったのかな。


 
丸太を模したコンクリの縁取りが施されている浴槽は、馬蹄のような形状をしており、おおよそ6人サイズ。獅子の湯口より加温されたお湯が吐出されています。湯使いに関しては、どうやら加温した上での放流式らしく、浴槽に満たされたお湯は縁の切り欠けからオーバーフローしているのですが、お湯の投入量はあまり多くないため、一度溢れ出すと湯嵩が減り、元の嵩まで回復するには結構な時間を要します。
獅子の湯口にはコップが置いてありました。消毒薬を投入しているお湯を客に飲ませるはずありませんから、コップがあるということは塩素系薬剤を使用していないと解釈してよいのかもしれませんね。浴室内に漂っている匂いは、消毒薬ではなく源泉由来の臭素なのかもしれません。
湯船のお湯は微かに山吹色を帯びた淡い赤銅色に微濁し、浴槽の周りやオーバーフローの流路は赤く染まっています。なお湯船の中で湯の花の浮遊は見られませんでした。上述のコップでお湯を口に含んでみますと、はっきりと塩辛さを感じ、また近所の羽根沢温泉を思わせるようなアブラ臭がほんのり香ってきました。湯中では食塩泉らしいツルスベ浴感が得られるのですが、腕を擦ると少々の引っかかりもあり、なかなか複雑な浴感を有していているようです。しょっぱいお湯ですから非常によくあたたまり、湯上がり後はいつまでもポカポカと温浴効果が続きました。

冒頭でも申し上げましたように、こちらは湯治宿ですが、200円という廉価で入浴できるため、近所の方は公衆浴場の代わりに利用しているようです。全体的に草臥れており、大変渋い佇まいであるため、いろんな意味で好き嫌いが分かれるかと思われます。わざわざ遠くから訪れるほどではありませんが、鄙びた風情がお好きな御仁でしたら、行ってみる価値はあるかもしれません。


沓沢源泉
ナトリウム-塩化物温泉 32.4℃ pH7.5 掘削自噴(湧出量未記入) 溶存物質8947mg/kg 成分総計8958mg/kg
Na+:3164mg(89.55mval%), Mg++:41.4mg, Ca++:236.8mg(7.69mval%), Fe++:0.6mg,
Cl-:5173mg(97.49mval%), Br-:16.3mg, I-:1.3mg, HCO3-:204.5mg,
H2SiO3:23.8mg, HBO2:50.7mg,
(平成27年6月8日)

山形県最上郡真室川町川ノ内769  地図
0233-62-2860

9:00~19:30
200円
備品類なし

私の好み:★★
コメント (4)
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肘折温泉 ゑびす屋 後編(2つのお風呂)

2018年04月01日 | 山形県
前回記事の続編です。
さて、このブログの主題である温泉のお風呂へと参りましょう。

●浴室

館内1階の奥に伸びる廊下に沿って浴室の入口が設けられています。ややもすると見逃してしまいそうな、控えめな佇まいです。


 
脱衣室こそ男女別ですが・・・



浴室は男女が同じ、つまり混浴なのです。宿泊するのに混浴は嫌だという女性の方、ご安心ください。このページの最も上の画像をご覧になるとわかりますが、1階廊下の突き当たりには女性専用の浴室も設けられていますよ。
しばしば、混浴なのになぜ脱衣室を男女に分けるのか、という疑問を耳にしますが、人間の羞恥心は不思議なもので、一糸まとわぬ姿より更衣の過程の方がより恥ずかしさを覚えるものであり、また心の準備をする空間も必要ですから、たとえ混浴であろうとも脱衣室くらいは男女に分けておくべきなのであります。
2つの脱衣室を挟んでシンメトリになっている浴室の真ん中には後述する浴槽が設けられ、左右両側に洗い場が1つずつ用意されています。


 
浴槽は野球のホームベースを潰したような形状。幅2.5m・奥行1.8m程で5〜6人サイズでしょうか。縁には御影石が用いられ、浴槽内は石板貼りです。赤茶色に染まった瘤状の析出が下部にびっしり付着している石の湯口より、適温よりやや熱めの温泉が注がれており、浴槽を満たしたお湯は縁の左右両側から溢れ出ています。特に向かって右側のオーバーフローの流路は赤黒く染まっていました。注がれるお湯は温度調整のために加水されており、おかげで適温が維持されていました。なお湯使いは加水した上での放流式。入りやすいコンディションが維持されたお風呂に浸かっていると、憂き世の艱難辛苦もたちどころに消え去ります。


●貸切風呂
 
1階廊下の突き当たりには女性専用の浴室のほか、時間指定で使う貸切風呂があります。宿泊客は無料で利用できるため、私もチェックイン時に帳場で予約しました(入浴のみ利用の場合は500円)。なお予約は毎時00分で空いている任意の時間を指定し、その00分から45分間利用できます。つまり貸切風呂を使えるのは1時間ごとに1組のようです。
まずは出入り口にさがっている札を裏返して「只今 入浴中」と表示させ、ドアを内側から施錠しておきます。



更衣室は妙に綺麗。陶器の洗面台のほか、テレビまで用意されています。この貸切風呂は現代のニーズに合わせて増設されたのかもしれませんね。とはいえ、貸切の45分間にお風呂に入り、且つテレビまで見る余裕はあるのかな?


 
浴室もなかなか綺麗。年季が感じられる混浴の浴室に比べ、相対的に新しいのではないかと思われます。浴室には湯船のほか洗い場があり、シャワー付きカランが2つも並んでいました。複数人数で利用する場合でも、洗い場を譲り合う必要がないので、時間を有効に使えますね。


 
縁が御影石で内部がタイル張りの浴槽は2人サイズ。可愛らしい仏様が微笑む湯口より温泉が注がれており、浴槽のお湯は、常時はオーバーフロー管から排出されているのですが、私が湯船に入ると一気にドバーッと勢いよく溢れ出し、洗い場が洪水状態になってしまいました。投入量や加水の塩梅が良く、湯船は適温が維持されていました。この貸切風呂でも放流式の湯使いが採用されています。

こちらのお宿に引かれているお湯は、肘折ではおなじみの混合泉。淡い赤みを帯びた黄土色に弱く濁っており、薄い塩味と弱い炭酸味、金気、そして土類感が得られます。湯中ではスルスル感と引っ掛かりが混在する浴感が得られ、体によく馴染み、そして優しいながらも力強く温まります。肘折らしいお湯です。なお加水を最小限に抑えるためか、館内では温泉熱を利用した熱交換暖房や熱交換給湯が実施されているそうです。

リーズナブルで快適な湯浴みと宿泊を楽しめた、素敵なお宿でした。


混合泉(組合2号源泉・組合3号源泉・組合5号源泉)
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 65.9℃ pH6.6 溶存物質3410mg/kg 成分総計3768mg/kg
Na+:879.2mg(81.83mval%), Mg++:22.0mg, Ca++:89.6mg(9.57mval%), Fe++:2.3mg,
Cl-:991.2mg(58.43mval%), SO4--:234.9mg(10.22mval%), HCO3-:912.0mg(31.25mval%),
H2SiO3:146.1mg, HBO2:54.2mg, CO2:357.9mg,
(平成28年9月23日)
加水あり(温度調整のため)
加温・循環・消毒なし

山形県最上郡大蔵村大字南山526
0233-76-2008
ホームページ

日帰り入浴時間不明
300円(貸切風呂500円)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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