

前回取り上げた海潟温泉から更に大隅半島を南下して、温泉ファンには有名な「テイエム牧場温泉」へ行ってみることにしました。現地にたどり着いたものの、道路沿いに建つ「天然自噴温泉」と書かれた建物は廃墟になっており、「あれれ? 廃業しちゃったか」と不安を覚えつつ辺りを見回したら、廃墟の左脇に、海岸へ伸びる下り坂を発見。


その坂道を下って砂浜沿いの道を歩いていきます。錦江湾を隔てた向こう側の薩摩半島では、開聞岳が聳えていました。


砂浜沿いに「温泉公園」と称する区画が広がっており、看板に従って中に入って受付小屋の中にいたおじさんに声をかけると、温泉はここだとのこと。おじさんに湯銭を支払い、ロッカーキーを受け取って敷地内へと入りました。

受付小屋の下には、温泉成分のスケールで詰まった配管が輪切りになって並べられていました。炭酸カルシウムが発生しやすい温泉なのでしょうけど、すぐに詰まってしまうのでは配管を頻繁に交換せねばならず、管理に相当のご苦労を重ねているものとお察しします。


公園のような構内を歩いて湯小屋へと向かいます。


脱衣室はスノコ敷き。洗面台が2台あり、扇風機も設置されているのですが、全体的にどこか草臥れており、B級感が漂っています。スチールロッカーは結構な年代物なのか錆が目立っていますが、そこそこの数が用意されているので、急に大勢のお客さんが押し寄せても問題ないでしょう。なおロッカーは受付で手渡された鍵と同じ番号の箇所を使用します。各ロッカーに振られている番号の数字は、カレンダーの日にちをハサミで切り取って嵌めたもの。


浴室も手作り感たっぷり。木材の骨組みにアクリル波板の屋根を載せ、側面も半透明のアクリル板で囲っています。元々は露天風呂を想定してつくったものの、なんらかの事情によって仕方なくアクリル板で囲ったような感じです。そんな空間の中に浴槽が二つ設けられているのですが、後述するように奥側の浴槽は使われておらず空っぽになっており、お湯が張られているのは手前側の一つだけでした。そして、そのお湯が張られている浴槽の手前側に洗い場が配置されていて、真湯が出るシャワー付きカランが6基並んでいました。


浴槽はアメーバのような形状をしていますが、石灰のこびりつきが著しく、元の形や素材は全くわかりません。上述のように露天風呂のようなつくりですが、半透明のアクリル波板で覆われており、せっかくのロケーションが活かされていません。でもこれは致し方ないことなのです。その理由は後ほど。
この浴槽には塩ビ管がむき出しになっている湯口からお湯が絶え間なく注がれています。受付小屋で見たように、配管にはすぐにスケールが詰まってしまうので、容易に交換できるよう、塩ビ管をむきだしにしているのでしょうね。お湯は濃い山吹色に強く濁り、透明度は10cmあるかないか。お湯を口に含むと、弱金気臭や土類臭が香り、薄い塩味・ほろ苦み・弱金気味・土気味、そして少々の刺激を伴う炭酸味がはっきりと感じられます(泡付きはありません)。


上述したように隣の浴槽は空っぽで、単なるお湯の排水口と化していました。でもお湯が抜かれているおかげで、内部に赤茶色のカルシウムが分厚く付着していることが一目瞭然であり、いかにスケールのこびりつきが凄いかよくわかりました。


浴槽と洗い場の間には桶や腰掛けが並べられており、そしてその傍らにはハエたたきが備え付けられていました。遊離炭酸ガスが836.9mgと非常に多い温泉なので、夏にはアブが集まってブンブン飛び回るのでしょう。それだからこそ、周りを徹底的に囲わなくてはいけないわけです。


入浴しているとき、底面に触れると指先に何かが剥がれる感覚があったので、衝動的に指を動かしてみますと、上画像のように簡単にスケールを剥がし取ることができました。浴槽内では薄い層が幾重にも積み重ねるような感じでスケールがこびりついているのですね。完全掛け流しで40℃前後というぬるめの湯加減ですが、炭酸の影響なのか、力強く温まり、湯上がりはいつまでもポカポカし続けました。


風呂上がりに汗を拭っていると、受付小屋のおじさんが源泉を見せてくれました。おじさん曰く、源泉井は1000〜1200mの深さを有し、炭酸ガスの圧力によってお湯が自噴しているとのこと。ただ、自噴した温泉はそのままですと炭酸ガス濃度が強すぎるので、湯小屋の手前に設置した設備でガス抜きしてから浴槽へ供給しているんだそうです。
全体的にB級感が強くて草臥れており、海沿いにありながら開放感は得られないので、正直なところ一般の観光客がわざわざ足を運ぶほどの価値があるかどうかちょっとわかりませんが、コッテコテにこびりついた石灰の温泉が好きな温泉マニアの方なら興奮すること間違いない、ビジュアル的に面白い温泉でした。
垂水16号
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 41.8℃ pH6.5 溶存物質3370mg/kg 成分総計4207mg/kg
Na+:467.0mg(49.25mval%), Mg++:70.8mg(14.14mval%), Ca++:274.6mg(33.22mval%), Fe++:3.7mg,
Cl-:127.0mg(9.06mval%), HCO3-:2185mg(90.61mval%),
H2SiO3:168.5mg, HBO2:30.7mg, CO2:836.9mg
(平成21年12月4日)
鹿児島県垂水市新城赤石4453-1
0994-35-3520
11:00~19:00 無休
390円
ロッカー・ドライヤーあり
私の好み:★★
青森からだとかなりの時間と出費が・・(涙
ここは気にいりましたぞ
行ける日が来るかどうかは全くわかりませんが・・遠い目
コテコテの析出物とお湯の色が印象に
残ってます
鹿児島は遠いっす(T-T)
行きたい温泉は沢山あるんだけどね〜
湯小屋の雰囲気がとても良かった記憶があるかなぁ
>関東からならなぁ
そうなんですよね。ご存知のように、LCC等のおかげで、新幹線や車で東北や関西へ行くより、飛行機で九州へ飛んじゃった方がはるかに安かったりするんですよね。特に青森は交通手段が限られてますもんね…。こういう時ばかりは首都圏に住むアドバンテージを実感します。
この温泉はビジュアル的にインパクトがありますよね。しかも源泉井では炭酸ガスの圧力で自噴しているというのですから凄いです。
>Danさん
こちらへ行かれたんですね。私もコテコテの石灰華が強く印象に残っており、浴槽内で剥がれた石灰華を何枚か持ち帰ってしまいました(笑)。鹿児島は多種多様な温泉が湧いていて、本当に面白いですね。LCCのネットワークが、首都圏や関西だけでなく、東北でも充実してくれたら良いのですが…。
これは何ともすごい景観ですね!
まるで鍾乳洞の様です。この先どうなるんでしょう(笑)
このテイエム、と言うのは競馬のテイエムですか?
テイエムオペラオー、とかのテイエムなのでしょうか?
私はこの記事で、充分興奮しておりますよ^^b
ただ鹿児島ですからねぇ。あまりにも遠く・・・
私はこの土、日、月で伊香保温泉に行って来たのですが、
やはり温泉は掛け流しに限る、と再認識致しました。
夏季休暇の時に利用した「はるひら丸」は非常にグー!
単純温泉でも、掛け流しのフレッシュ感はバッチリで、
食事も白御飯が全く食べれない程に出ましたよ^^。
私も最近、K-1殿を見習ってテイスティングするのですが、
循環、もしくは掛け流し併用だとしても、
純然たる掛け流しでない場合、塩素臭がしますよね(><)
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ちなみにこれが料理の写真であります^^。
部屋は超ボロイし、接客も網元らしく豪快ですが、
我々サイドの人間には、むしろ高評価かと^^。
では長々と失礼いたしました。
配管を詰まらせるスケールはものすごいですよね。すぐにこのようになってしまうのだそうですから、管理なさっている方のご苦労は相当かと思います。
おっしゃるよう、こちらは競馬で有名になったテイエム牧場の関連施設です。テイエム牧場はこの温泉がある鹿児島、そして北海道にあり、お馬さんは季節によって鹿児島と北海道を行き来するんだそうです。
>「はるひら丸」
料理、すばらしいですね。さすが網元だけあります。
伊豆にもまだまだ魅力的な宿がたくさんあるのですね。