温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

海潟温泉 江之島温泉

2016年11月20日 | 鹿児島県
 
鹿児島県は日本屈指の温泉の宝庫ですが、大隅半島に限っては高温で湧出する温泉が少なく、薩摩エリアや霧島市内のように、行き当たりばったりで湯巡りしてもすぐに温泉に巡り会えるような環境ではありません。しかしながら、桜島の付け根に当たる垂水市海潟地区は、大隅半島では貴重な高温の温泉が湧出する温泉地。今回はそんな海潟地区の海岸沿いにある公衆浴場「江之島温泉」を訪ねてみました。温泉ファンから人気を集めているこの浴場は、防潮堤沿いの路地に面しており、錦江湾の入江を挟んだ向こう側には桜島がそびえていました。


 
堤防に面した駐車場に車を止め、「湯小屋」と書かれた道標に従って敷地内へ進みます。


 
 
鶏小屋でニワトリが鳴く敷地内を歩いていると、まるで古民家のお庭にお邪魔しているかのような気分になります。駐車場の真下にあたる箇所には源泉ポンプと思しき設備が設置されており、そこから伸びる配管のひとつは鶏小屋付近にまで伸び、そこでお湯を垂れ流していました。屋外で何か物を洗う際に使われるのでしょう。


 
敷地内を奥へ進んで行くと、目指す浴場棟(湯小屋)が姿を現しました。年季を幾重にも積み重ねた趣きある建物の妻面には、鏝絵の要領で浴場名が記されています。


 
湯銭は湯小屋の左隣にある母屋の軒先で支払います。250円ちょうどを持っていれば、上がり框の上に置かれた料金箱へ直接お金を置いて、そのまま浴場へ向かえば良いのですが、もしお釣りが必要な場合、またタオルや石鹸などを購入したい場合などは、玄関の土間で声をかけて、管理なさっている方を呼び出すことになります。


 

湯小屋の建物自体は長い歴史を有しているのですが、脱衣室内は綺麗な白木の総木造に改装されており、古いラジオや石鹸の広告ポスター、そして以前こちらで使われていたと思しき木造ロッカーの扉などが飾られ、昭和レトロを演出していました。


  
改装された脱衣室とは対照的に、浴室は昔ながらの佇まいが残されていました。浴室の中央には浴槽が据えられ、その周囲を温泉成分の付着によって変色した床タイルが囲っています。そして、水色の壁タイルに沿って洗い場が配置されています。浴室右奥には小さな鏡と小棚が括りつけられており、そこには角材の枕が用意されていました。いわゆるトド寝するためのものでしょう。


 
 
洗い場にはカランが計5基あり、うち温泉のお湯が出るシャワー付きが3基、残り2基は水のみの単水栓です。水のみの水栓金具は硫化して青黒く変色していました。なおシャワーから出てくるお湯は100%源泉のお湯です。


 
浴室の片隅にはコンクリ造の小さな水風呂が設けられているのですが、これが実に気持ち良い。後述する湯船に浸かって火照ったら、この水風呂でクールダウンすると、心身がシャキッと蘇ります。訪問時の水温は20℃くらいでしたので、冷たすぎることもなく、水風呂が苦手な方でも入れるかと思います。


 
湯船は大小に2分割されています。奥側の小さな方(3人サイズ)には湯口のお湯が直接注がれているため、ちょっと熱め(43℃前後)の湯加減となっていました。そして、浴槽内のお湯には白い消しゴムのカスみたいな湯の花がたくさん舞っていました。
一方大きな槽はおおよそ4人サイズで、小さな方から流れてくるお湯を受けており、41℃前後と長湯したくなるような湯加減が維持されていました。こちらの湯中では白色のほか茶色っぽい湯の花も見られ、それらは小さな槽に負けないほど多く舞っていました。

お湯の見た目は無色透明で、テイスティングしてみますと弱いタマゴ臭が鼻へ抜け、ゆで卵の卵黄のような濃いタマゴ味と薄い塩味が口の中に広がります。湯中では大量の湯の花が舞い、食塩泉らしい(少々のグリップ感を伴う)ツルスベ浴感がしっかりと肌に伝わりました。滑らかな浴感ゆえ浴室内は滑りやすいので、転倒しないよう注意しましょう。分析書の上ではアルカリ性単純硫黄温泉という泉質名ですが、私が入浴した実感から申し上げれば、食塩泉に近いフィーリングでした。
なお湯使いは完全放流式。湯船では鮮度感抜群のお湯を楽しめます。お湯は常時浴槽の縁からオーバーフローしており、私が湯船に入ると勢い良く浴槽の四方全辺から溢れ出ていきました。

温泉ファンから熱い支持を集めるこの温泉。お湯の質が良いことは言わずもがな、昭和の懐かしい面影を残す、いかにも九州らしいフォトジェニックな温泉浴場でした。


12号・13号(2種混合温泉。混合比率1:1)
アルカリ性単純硫黄温泉 47.5℃ pH9.3 80L/min(動力揚湯) 溶存物質588.9mg/kg 成分総計588.9mg/kg
Na+:162.2mg(85.79mval%), Mg++:7.7mg, Ca++:6.0mg,
Cl-:216.2mg(71.85mval%), OH-:0.4mg, HS-:2.9mg, Br-:0.8mg, S2O3--:0.9mg, CO3--:34.7mg,
H2SiO3:91.5mg,
(平成24年11月6日)

鹿児島空港・国分駅・桜島港などから鹿児島交通(路線バス)の垂水港行きで「海潟」バス停下車、徒歩1〜2分
(バスの時刻は「九州のバス時刻表」で検索してください)
鹿児島県垂水市海潟541-1  地図
0994-32-0765
ホームページ

8:30~21:00 不定休
250円
備品類なし。貴重品は番台預かり・石鹸やタオルなど販売あり。

私の好み:★★★

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (レン)
2016-11-20 21:04:36
駒の湯サポート お疲れさまでした。
「江之島温泉」 くぅぅぅ ここは大好きな温泉です。
プリミティブな硫黄の香り、浴感はにゅるスベ・・・
日ノ本探しても、このお湯に近似値のお湯を私は知りません。
なので「国士無双」の湯、と勝手に命名しています(笑)

鹿児島から錦江湾を渡るフェリーで食べる、「うどん」が美味なのもお薦めです。
Unknown (K-I)
2016-11-21 18:36:31
レンさん、こんばんは。
ここは佇まいといい、お湯といい、素晴らしいですね。なるほど、比類なきその存在感は「国士無双」かもしれません(笑)。

>うどん
江之島温泉の時とは別なのですが、数ヶ月前も鴨池・垂水間のフェリーでうどんをいただきました。美味しいですよね。あのうどんは、お汁云々もさることながら、やっぱりあの雰囲気が出汁代わりになっているんでしょうね。

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