温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

安通温泉 安通温泉飯店 (台湾東部)

2012年04月15日 | 台湾
 
安通温泉での宿泊は当地の老舗である安通温泉飯店でお世話になることにしました。山奥の質素なお宿を想像していましたが、意外にも立派で大きな建物です。スタッフは(個人差があるものの)日本語か英語のいずれかが通じるので、台湾語が話せなくても問題なし。今回の利用にあたっては日本からメールで予約しておいたので、チェックインは実にスムーズでした(なおメールは日本語と中国語の普通話を併記して送信したのですが、英語で回答が返信されてきました)。


●部屋
 
編み笠を被った日本語を話せるおじさんが館内を案内してくれました。通されたお部屋はEVから近くて便利な503号室。なお建物自体は5階建てですが、「四」が「死」に通じるため忌み数となり、実質的な4階が5階として使われています。室内構成としてはごく一般的ですが、きちんと綺麗に清掃されており、広さもまずまずで居住性は良好。天井にはシーリングファンが設置されているので、これを扇風機代わりにすることができました。室内では無線LANも使えるので便利です。



部屋に付帯しているベランダから外を眺望。すぐ下は露天SPA、道路の向こうは大きく湾曲して流れる安通渓です。前回取り上げた川原の公衆露天風呂もこの画面の範囲内にあります。


 
お部屋にはユニットバススタイルのお風呂とトイレが設けられており、お風呂のお湯は源泉は引かれています。無色透明のお湯からはタマゴ臭&味が明瞭に感じられ、ヌルヌル感も強く、かなり良質です。



バスタブ横に貼ってある注意書きには「温泉水は加温していないので10分間出しっ放しにしておいてください(朝は20分)」と書かれていました。ボイラーなどを使わず、源泉から直接配管を引っ張っているので、温かいお湯が出てくるまで時間がかかるわけですね。


●お風呂について
 

(両画像ともクリックで拡大)
こちらのホテルではお部屋のお風呂の他、水着と水泳帽を着用する露天SPA、裸で入浴する内湯、別途料金が必要な最上階の貸切露天風呂「星光湯屋」の3つの温浴ゾーンがあり、このうち私は前2者を利用しました。
画像左(上)は全体図、右(下)は温泉分析表です。図において、上半分が内湯、下半分が露天SPAを示しています。また分析表では放流式(掛け流し)の湯使いであることが明記されています。


●露天風呂(SPA)
 
ロビーや食堂がある本棟と4階建ての宿泊棟に挟まれたスペースには、いろんな温浴プールが。
いずれも温泉水が張られているのが嬉しいところ。プールに近づくだけで温泉由来のタマゴ臭(硫黄臭)が鼻孔をくすぐってくるので、私はついつい麻薬探査犬のように鼻をクンクン鳴らしてしまいました。


 
本棟から見て右手手前にあるのが重力水療区と泳池区。重力水療区という字面からは重々しい物を感じますが、早い話が打たせ湯などによって水圧を楽しむエリアということでして、台湾のSPAではおなじみの沖撃湯(体がバラバラになりそうな程に強力な打たせ湯)が3本と、2階の天井と同じ高さから垂直に落とされる打たせ湯が2本、それぞれ凄まじい水音を轟かせながら噴射されていました。一般には沖撃湯と称する施設を、ここでは湯口の形状から「重力鴨嘴噴頭」とネーミングしているのがユニークです。プールの温度計は「43℃」と表示していましたが、体感的には38℃くらいでした。一方、その隣にある広いプール「泳池区」は読んで字の如く遊泳プールなのですが、なぜか前浴槽の中で最も熱く、温度計は39℃を示しているのに、体感としては43℃近くありました。このため、試しに平泳ぎで2往復してみましたが、熱さで体力が奪われてしまい、たちまちヘトヘトに…。


 
泳池区の向かいにあるのが浸泡区。日本の岩風呂のような作りをしており、まさに日本の露天風呂のようにじっくりと湯あみするための浴槽です。日本人が思わず入りたくなる雰囲気ですね。これで全裸で入浴できれば最高なのですが…。温度計には49.3℃と表示されていたので恐る恐るお湯に指を突っ込んでみたのですが、実際には42℃ほどで、全身浴に丁度良い湯加減でした。もちろんこちらも温泉です。
それにしても重力水療区、泳池区、浸泡区、そのいずれにおいても温度計の数値がデタラメなんですね。心の中で「意味ないじゃん」と叫んでしまいました。


 
本棟の左側には岩風呂風のプールもあり、熱水区と温水区の二つに分かれています。熱水といっても多少熱い程度で、温水区に至っては水風呂に近いのですが、あくまでレジャー感覚で楽しむプールですから、むしろぬるくないと不適当なわけです。こちらには三つ又状の打たせ湯やジェットバスなどが設置されており、こっちの打たせ湯は比較的おとなしいので、重力水療区の刺激が強すぎる方にはこちらの方がいいかも。

この他、足湯や温泉蒸気のよるスチームバスなども利用でき、この露天SPAだけでも存分に温泉温浴が楽しめました。


●内湯

さて安通温泉の真打ち登場。露天と異なり、こちらは全裸で入浴します。結論から申し上げると、この内湯は秀逸でした。露天SPA側に開けた入口から中へと入り、内湯専用のカウンターで部屋番号を告げて、脱衣所のロッカーキーを受け取ります(係員によっては「キーをちょうだい」と言わないと手渡してくれないかも)。
なお以下は内湯の大浴場について紹介しますが、大浴場の他、同じフロアには個室風呂もあり、宿泊者はこの個室風呂も無料で利用できるそうです。受付の右手が大浴場、左手が個室風呂です。今回は右手へと進みます。


 
ロッカーが壁を埋め尽くしている更衣室。宿泊中は2度この内湯を利用し、その際にあてがわれたいずれも中央に位置するものだったので難なく使えましたが、もし天井や床に近いロッカーだったら、どうやって使ったら良いんでしょう。


 
内湯全景。タイル貼りで何気ない浴室に見えますが、浴室へのドアを開けた途端、はっきりとした硫黄臭が感じられ、ここのお湯が只者ではないことを知らせてくれます。自ずと期待に胸が膨らんでしまい、早くもニヤニヤが止まりません。
洗い場の水栓(シャワー付き混合栓)は9基。各ブースは仕切り板でセパレートされており、一人あたりの区画も広いので、ゆったりと使えました。なおシャワーから出てくるお湯は温泉でして、温泉に含まれる硫黄の影響か、水栓金具は硫化して若干黒ずんでいました。


 
シャワーとは別に小さな掛け湯専用の槽もあり、お湯はもちろん温泉。



浴槽は3つあって、うち2つが温泉の温浴槽です。右側が熱くて43~4℃、左側はぬるめで約38℃といったところ。ちなみに温度計は前者が45.1℃、後者は40.1℃を示していましたが、露天同様にやはりここも誤表示だろうと思います。
いや、温度計なんてどうでもいい! 何とはともあれ、お湯がすばらしい! 無色透明の澄んだお湯からははっきりとしたタマゴ味に焦げたような苦み、そして薄い塩味が感じられ、強いタマゴ臭を放っています。湯口付近でよく嗅いでみると、タマゴ臭というより石油を思わせるような匂いと表現してもよいかもしれません。明瞭で個性的な知覚面もさることながら、ローションも真っ青なヌルヌル浴感がすばらしく、入浴中は何度も肌をさすりたくなること必至でしょう。
露天もお部屋のお湯も同じ源泉を使用しているようですが、知覚や浴感では内湯が遥かにレベルが高く、質の良さで並べると内湯>部屋>露天SPAの順になるかと思います。この内湯のお湯だけでも「わざわざこんな山奥まで来て良かった」と感動できるほどでした。



両浴槽ともお湯は2mほどの高さにある獅子の湯口から落とされています。獅子のお口には白い析出が付着していますが、この析出はとても脆く、指先でちょこっと触れるだけで結晶が崩れてしまいました。



温浴層の他に水風呂もあり、冷温の交互入浴も楽しめます。私は19時と22時半の2度このお風呂を利用したのですが、いつ行っても内湯で入浴し続けている中年のおじさんがいて、22時半に利用した際に「何時間入っているんですか?」と聞いたところ、「(夕方)6時半に入っているから、もう4時間以上だね」という答えが返ってきました。こんな閉塞的な空間に4時間以上も入っていられるなんて驚愕ですが、おじさんは「お湯の滑らか質が大好きで、且つ水風呂と熱い風呂の交互入浴を繰り返していると本当に気持ち良いから、時間を忘れていつまでもお風呂にいられるんだ」と笑みを浮かべながら語っていました。


●源泉地帯
 
翌朝、天気の良さに誘われて宿の周りをお散歩していたとき、何気なく奥の駐車場スペースへ踏み込んだ際に、鬼太郎の妖怪アンテナならぬ我が温泉アンテナ(つまり第六感のようなもの)が激しく反応したので、導かれるがままにアンテナが示す方向へ向かってみると、そこには「高温注意」の赤い立札が立てられ、柵によって円形に囲まれたエリアがありました。


 
柵の内側には熱湯が煮え滾る小判型の池を発見。これは明らかに安通温泉の源泉地帯ですね。源泉はここのみならず、安通渓の川に沿って約200~300mの間に分散しているそうです。


●その他

台湾はどんな田舎に行っても集落に1軒くらいは飯屋やコンビニがあるものですが、安通温泉にはコンビニはおろか、レストランすらも無く、適当に外を歩いて食事を楽しむようなことができません。従って夕食は必然的にホテル内の食堂で摂ることになります。今回選んだ宿泊プランに夕食は含まれていなかったので、別料金で注文することに。頼んだのは豚肉の炒め物の定食で、お弁当のような容器に詰められて出されました。中身は豚の炒め物の他、空芯菜炒め(私の大好物)、目玉焼き、そしてココナッツのお刺身です。ココナッツのお刺身は、初めての人は「なにこれ? イカの刺身?」なんて驚きますが、私は何度もいただいているので別段驚きはしません。でも、丸い器の中には台湾南東部の名産である金針菜(ワスレグサ・百合の一種)の花を具にしたスープが入っており、初めていただく金針菜の素朴な味には心が癒されました。
ちなみに朝食は中式(中華料理)のバイキングでした。



安通温泉は1904年に樟脳(カンフル)を採取しようとした日本人によって発見され、その当時から温泉地として拓かれていったんだそうです。現在の宿泊棟の裏手には日本統治時代からの旅社が残っていますが、戦前の木造建築にしては妙に艶々しており、おそらく実際には建て替えられているんでしょうから、残っているというより復元されていると表現したほうが適切かもしれません。この日は何かのロケが行われており、すっかり中華風の姿に変わっていました。古い建物ですから、時代物の撮影のセットとして重宝するんでしょうね。


 
玄関ではニャンコが呑気に大あくび。
ニャンコじゃなくても思いっきりあくびを誘われてしまう、静かでのんびりした環境の温泉でした。



塩化物・硫酸塩温泉
56.2℃ pH8.3 0.007m3/sec(=420L/min) 総溶解固体量1673mg/L
Cl-:670mg/L SO4-:188mg/L HCO3-:17.6mg/L 遊離CO2:0.05mg/L 硫化物0.21mg/L
陽イオンはFe++以外分析表に記載なし(しかもそのFe++ですらND(not detected))(おそらくNa+がメインだと思う)

花蓮県玉里町楽合里温泉36号  地図
(03)8886108
ホームページ

入浴のみの利用可能

私の好み:★★★

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2 コメント

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こんにちは (クミ)
2014-10-20 11:42:56
K-Iさんご無沙汰しておりますm(_ _)m
またブログのリンク貼らせてもらいました~。

夏の台湾でK-Iさんのブログを見て、
こちらの安通温泉飯店さんに行ってきました!
真夏だったので温泉どうかな~と思ってたのですが、
トロトロの気持ち良いお湯でリフレッシュ出来ました♪
いつも温泉情報ありがとうございます。
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Unknown (K-I)
2014-10-20 22:34:56
クミさん、こんばんは。
いつもこのブログをご覧下さりありがとうございます。今回のご旅行では、高雄や台東のグルメをたくさん攻めていらっしゃいますね。拝見していると、すぐにでも再び台湾へ出かけたくなります。
安通温泉は、施設こそ並ですけど、トロトロでタマゴ臭の漂うお湯は私のストライクゾーンにはまり、かなり気に入りました。川原の露天公衆浴場も面白かったです。
クミさんの旅行記、これからの展開も楽しみです。
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