草津温泉のシンボル、湯畑。いつも多くの観光客で賑わっています。
そんな湯畑の前、かつて駐車場があった場所に2013年オープンした日帰り入浴施設が「御座の湯」。オープンから5年近くが経ち、いまや草津の新たなランドマークとして威風堂々たる存在感を放っています。この浴場に関しては既に多くの方がネット上で紹介なさっているので、今さらこの拙ブログで紹介するまでもないのですが、今回は草津白根山の噴火により客足に影響が出ている草津温泉を応援するべく、簡単ながら取り上げさせていただきます。なお私が訪れたのは約1年半ほど前(2016年)ですので、その当時と現在とでは若干の違いがあるかもしれませんが、何卒ご容赦ください。
唐破風の玄関が印象的な木造建物は歴史ある温泉街を代表するに相応しい風格を備えており、威風堂々たる構えはとてもフォトジェニックです。この日も多くの方が建物を背にして記念撮影していました。御座之湯という湯屋は明治期まで存在していたらしく、その後取り壊されてしまったようですが、温泉街の新たなシンボルを創るに際し、かつての浴場名を復活させ、あわせて伝統的な様式も取り入れて、いにしえの温泉街を感じてもらおうというコンセプトで計画がすすめられたようです。なお「御座」とは源頼朝が座ったという伝説に由来しているんだとか。
破風の玄関を入ると、フローリングで明るいフロントもまた立派な造り。受付の方に説明を受け、男女に分かれた1階の浴場へと向かいます。東日本を代表する温泉地ですから、多くの利用者が訪れることを想定しており、脱衣室に用意されているロッカーの数も草津の入浴施設にしては多い方なのですが、それでもこの日はほとんどが埋まっており、貴重品用の小さなロッカーも7割近くが使用中でした。温泉は入ってこそ楽しめるものですから、湯畑を目にして感動した観光客が、その足でこちらへやってくるのでしょう。
浴室は「石の湯」と「木の湯」の2つがあり、男女日替わりで使われています。ちなみに、私が訪れた日は「木の湯」に紺の暖簾が掛かっていましたので、以下「木の湯」について述べてまいります。おそらく両者は浴室名の通りに使われている建材が異なっているものの、構造そのものはシンメトリであるものと推測されます。
屋根が高く開放的であり、且つ柱や梁が立派。天井の天頂部は明かり採りになっているので、単に開放的であるのみならず、明るいのです。それでいて余計な飾りつけなどは無く、落ち着いて静かに入浴に専念できる環境が整えられていました。
「木の湯」の場合、浴室に入って右側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが4基並んでいます。利用客数に対してカランの数が少ないように思われるのですが、それでも何とか上手く回っており、特にシャワー待ちのお客さんはいらっしゃらないようでした。なお洗い場に備え付けられているボディーソープやシャンプーは、資生堂が開発した草津温泉オリジナル品「泉と恵」。温泉街の各旅館でも同じものが導入されています。
一方、洗い場と反対側には掛け湯用の湯枡が設置されており、湯畑源泉と思しきお湯をぬるくしたものが張られていました。「木の湯」は床も木材使用なのですが(「石の湯」は石材敷きのようです)、木材に強酸性のお湯が掛かると足元が滑りやすくなるためか、床にはブロック状に滑り止めのスリットが入っていました。
浴槽は2つ並んでおり、それぞれは(目測で)2.5m×3.5mほど。各浴槽の中央には太い丸太が渡されており、大きな浴槽を2つに分割することで入浴者が寄りかかれるスペースを増やしているほか、枕のような機能も果たしていました。これら2つの浴槽は、源泉によって使い割れられています。こちらに引かれている2つの源泉は、草津の外湯でおなじみの「湯畑源泉」と「万代鉱源泉」。両浴槽の中間に据え付けられた湯口よりそれぞれに対してお湯が注がれており、それぞれ万人受けする42℃前後の湯加減に調整されていました。これらの源泉が引かれている草津の外湯は、これよりはるかに熱い場合が多いのですが、さすがに観光客向けの施設ですから、温度は適温に調整されていました。とはいえ加温循環消毒の無い放流式の湯使いですので、循環のお湯が嫌いな御仁でも大丈夫。両浴槽とも浴槽の縁の切り欠けからお湯がしっかりと溢れ出ていました。
「湯畑源泉」と「万代鉱源泉」という草津を代表する両源泉について、いまさら拙ブログでその特徴を申し上げるまでもないのですが、いくら適温に調整されているとはいえ、「万代鉱源泉」は肌に対して攻撃的であり、ピリピリくる刺激が敬遠されてしまうのか、私の訪問時にいたお客さんの多くは「湯畑源泉」の湯船に集中していました。その一方で当然ながらお湯の特徴を知らずに「万代鉱源泉」へ入る方もいらっしゃり、迂闊に長湯をして軽い疲労感に見舞われている光景も見られたのですが、そんな場合も大丈夫。室内の壁に沿って長いベンチが括りつけられており、そこに腰かけてゆっくり休めます。日本のお風呂は休憩と言う概念に欠ける傾向があり、逆上せたような場合でもひと息つけないお風呂が散見されますが、こちらのように腰をかけるスペースがしっかり設けられていると、安心して入浴を楽しめます。小さくて目立ちにくい箇所ですが、私としてはこのベンチに対して大いに評価したいところです。
1階はフロントと浴場で占められており、正直なところ休憩できるような空間がないのですが、その代わり2階には湯畑を見下ろすお座敷「大広間」が用意されていて、御座の湯入浴客でしたらどなたでも利用できます。この他別料金を要する「中広間」もあり、ご家族やグループ利用での休憩にはこちらが良いかもしれません。
この他、こちらでは外出用浴衣レンタルのサービスも行っているんだとか。お宿に泊まらなくても浴衣が着られるわけですから、海外からいらっしゃった旅行客だけでなく、国内旅行者にも喜ばれそうですね。オープンから間もなく5年になり、すっかり草津の代表的な施設となった「御座の湯」は、これからも草津の観光客を温もりをもって迎えてくれることでしょう。
湯畑源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 51.3℃ pH2.1 自然湧出 溶存物質1.65g/kg 成分総計1.69g/kg
H+:8.91mg(36.54mval%), Na+:56.0mg(10.06mval%), Mg++:36.3mg(12.33mval%), Ca++:73.5mg(15.16mval%), Al+++:43.8mg(20.14mval%), Fe++:17.5mg,
F-:9.9mg, Cl-:311mg(35.63mval%), Br-:1.3mg, SO4--:640mg(54.16mval%), HSO4-:192mg(8.04mval%),
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.3mg, CO2:36.7mg, H2S:7.1mg,
(平成25年5月15日)
万代鉱源泉
酸性-塩化物・硫酸塩温泉 96.5℃ pH1.6 湧出量測定せず(掘削自噴) 溶存物質3.30g/kg 成分総計3.32g/kg
H+:26.0mg(54.84mval%), Na+:101mg(9.35mval%), Mg++:57.0mg(9.97mval%), Ca++:102mg(10.84mval%), Fe++:6.31mg, Al+++:47.1mg(11.15mval%),
F-:23.2mg, Cl-:742mg(44.41mval%), SO4--:836mg(36.92mval%), HSO4-:732mg(16.00mval%), Br-:2.9mg,
H2SiO3:501mg, HBO2:18.7mg, H2SO4:48.1mg, CO2:14.7mg,
(平成25年5月15日)
群馬県吾妻郡草津町大字草津421 地図
0279-88-9000
ホームページ
4/1~11/30→7:00~21:00(最終入館は20:30まで)
12/1~3/31→8:00~21:00(最終入館は20:30まで)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★