温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

猿ヶ京温泉 湯元長生館

2015年08月28日 | 群馬県
 
前回記事の「五十沢温泉ゆもとかん旧館」で極上のお湯に酔いしれた後は、その余韻を残したまま帰宅の途に就くつもりでしたが、まだ外は明るく、多くの旅館は日帰り入浴の営業時間内でしたので、根っからの貪婪で諦めが悪い私は、関越道の水上で一般道へ下り、更に上州で2箇所ほど湯めぐりをすることにしました。
この時に目指したのは旧新治村方面です。水上からは猿ヶ京へショートカットする赤谷越を走行しました。中越地方に警報を発令させるほどの大雪はこちらでもしっかり降ったようで、峠越えの山道に厚く積もっていました。


 
無雪期にこの仏岩トンネルを通過したことなら何度もありますが、積雪期は今回が初めてです。さすがに三国峠の上州側は、越後サイドに比べれば積雪の程度は軽いのですが、それでも積雪量は十分に多く、路面に轍が数本あるものの、交通量は少なくて、途中で行き違った車はゼロでした。用事が無きゃこんな山道なんて通らないんだうなぁ。


 
無事峠を越えてやってきたのは猿ヶ京温泉。今回訪れたのは野天風呂がご自慢の老舗旅館「長生館」です。事前の調査によれば、日帰り入浴の場合は内湯と野天で料金が別々とのこと。スキーシーズンの週末だというのに、薄暗い館内を目にして不安を覚えたのですが、玄関にて声を掛けて野天風呂の入浴を希望したところ、腰の曲がったお婆ちゃんが対応して下さいました。


 
 
玄関前には屋根付きの立派な飲泉所があり、親切にもお湯を持ち帰るためのPETボトルまで用意されていました。飲泉所の上にはタンクが聳え立っていますが、これは貯湯槽なのでしょう。竹筒から熱いお湯が石の器に注がれており、器の外側は白い析出で覆われています。備え付けの竹の柄杓で実際に飲泉してみますと、猿ヶ京のお湯らしい石膏の味と香りが、ほのかながらもしっかりと感じられました。


 
野天風呂へは、建物の左端にある非常用通路のような階段で、谷へ向かってどんどん下ってゆきます。お宿の方曰く80段あるんだそうですが、結構勾配が急ですので、慎重に下りないと滑ってしまいそう。この日はしばらく来客が無かったらしく、階段には足あとが全く見られませんでした。階段を照らすためにぶら下がっている裸電球がB級感を醸し出しています。


 
階段を下りきった左手にある簾で目隠しされた吹きさらしの小屋が、どうやら男湯用の脱衣小屋のようです。内部にはスノコが敷かれ、棚にプラ籠が用意されているばかりで、ビール会社の提灯が妙に寒々しい…。中には雪が吹き込んでいるため、スノコの上も真っ白く覆われていましたし、野天風呂へはここから通路を横切り、雪が積もったステップを下っていかなければならない…。このままでは雪の上を裸足で歩かなきゃいけないので、着替える前に風呂まで行き、桶でお湯を汲んで足元のお湯を溶かしてから、着替えることにしました。


 
お宿自慢の野天風呂へ。こちらのお宿では野天風呂の元祖を標榜しているらしく、真偽の程はよくわかりませんが、そんなことはどうでも良く思えるほど、広々とした開放的な環境であり、斜面に茂る木立の彼方に赤谷湖(ダム)が望め、見晴らしも良好です。川を見下ろすお風呂はいわゆる岩風呂で、最大幅で11m×5m強はあり、余裕で30人は同時に入浴できちゃいそうな立派なものです。なお女湯は男湯より一段高いところに設けられているものの、見晴らしが良いはずの谷側に目隠しが立てられているため、眺望はいまひとつなんだとか。


 
お湯は滝のように岩の上を流れ落ちながら、ドバドバと大量投入されていました。お湯の供給はこの滝のみならず、此処よりちょっと手前や脱衣室よりのホースなど複数箇所から並行して投入されており、これによって湯加減の均衡が図られ、大きな野天風呂でも湯温の偏りを感じずに湯浴みが楽しめるよう配慮されていました。降雪期はお湯がすぐに冷めちゃうでしょうから、湯加減の維持には相当ご苦労なさっていることかとお察しします。言わずもがな完全掛け流しであり、湯船を満たしたお湯は谷側の縁からふんだんに溢れ出ていました。

お湯は無色透明。日没に近い時間帯でしたので、湯中における湯の華の存在等は目視できませんでした。実際に湯に浸かると、湯面からは僅かに石膏臭が香り、少々のトロミと石膏泉らしい引っかかりが得られる他、浸かり続けているとお湯が優しく肌に染み入り、シットリとした感覚も味わうことができました。上述のようにお湯を複数箇所から注ぎ込ませており、その量も適切であるため、雪が強く降って冷えきる夕暮れ時だというのに、湯加減が素晴らしく、鮮度感も良好です。


 
ちょうど日没の時間帯だったので、湯浴みしているうちに日が暮れていったのですが、この日は暗くなるにつれて吹雪が強くなり、寒さも厳しくなる一方。暗くて寒い屋外は決して入浴に適した環境ではありませんが、湯加減は最高ですし、浴感が良くて後を引く気持ち良さでしたので、まるで演歌の世界で歌われるような荒れた天候の中、私は一人でこの野天風呂を終始独占し、なんだかんだで1時間も入り続けてしまったのでした。入浴中は吹雪が気にならないほど全身がホコホコし、湯上がり後の温まりも良く、猿ヶ京温泉のパワーを実感することができました。


共有泉湯島
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 55.5℃ pH7.6 蒸発残留物1.25g/kg 成分総計1.21g/kg
Na+:130mg, Ca++:218mg,
Cl-:100mg, SO4--:652mg, HCO3-:28.7mg,
H2SiO3:54.3mg, HBO2:11.1mg,
加水加温循環消毒なし(野天風呂における状況)

群馬県利根郡みなかみ町猿ヶ京温泉1178  地図
0278-66-1131
ホームページ

日帰り入浴時間不明(20時まで?)
野天風呂500円
野天風呂には備品類なし

私の好み:★★

コメント (2)
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