温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

千歳市 祝梅温泉

2015年06月05日 | 北海道

新千歳空港へレンタカーを返却する前に、ひとっ風呂浴びるべく、陸自の東千歳駐屯地の西縁をたどって名(迷?)湯「祝梅温泉」へ向かうことにしました。途中の公道では96式装輪装甲車の行列に遭遇。彼らの後をついてのんびりとドライブ。



自慢話になってしまいますが、私は一度訪れたことのある場所なら、大抵は再訪時に地図など見ず記憶に従い辿り着くことができちゃいます。でもこの「祝梅温泉」に限っては話が別。数年前に訪れたことがあるのですが、周囲に目標物が見当たらない上、似たような道や地形が多いので、当時の記憶を活かすことができずに辺りを軽く彷徨ってしまい、温泉の目印となる巨大ボーリングのピンを見つけた時にはホッとしました。


 
敷地内には大量の廃材が積み上げられており、ボーリングのピンとともに、強いB級感を醸し出しています。これらを目にしちゃうと、普通の人でしたら訪問することに及び腰になってしまいますうよね。こちらの源泉は温度が低いので、加温して浴室へ供給しているわけですが、どうやらこの廃材は薪として使われているようです。廃材の山の上空を、新千歳に離発着する飛行機が頻繁に飛び交っています。駐車場に車を停めると、尻尾を振りながらワンコが出迎えてくれました。


 
数年前に火災に見舞われて烏有に帰してしまったそうですが、その後見事に復活。とはいえ、民家然とした渋い佇まい
とても入浴施設だとは思えません。マニア好きする佇まいと、一般受けする趣きは、えてして反比例するものです。



 
外観のみならず内部も民家そのもの。お邪魔して良いか不安になりながらドアを開けると、居間みたいな空間にお祖母ちゃんがいらっしゃり、この方に直接湯銭を支払いました。この空間まわりではリンゴや野菜類が販売されており、ロッカーや洗面台(ドライヤーあり)も備え付けられています。民家じゃなく、れっきとした客商売をしている施設なんですね。


 
掘っ立て小屋のような印象を受ける脱衣室。床の上にはコンパネや畳の類が、放置されているかのような形で置かれています(敷くのはなく、置かれているのです)。以前に訪問した時にはもっと雑然としていたように記憶しているのですが、その後に整頓されたのか、この日は然程ゴチャゴチャしていませんでした。ユニークなのは、室内に1台置かれている洗面台。濡れたタオルを絞るためだけに用意されており、排水管に接続されておらず、洗面器で受け止めるという極めて簡素な構造なのでした。従いまして、洗面台の蛇口を捻ったって水は出ません。



出入口からステップを数段下って浴室へ。扉を開けた途端、室内のムワッと篭っていた湯気に包まれ、同時に鉱泉由来のタマゴ臭も鼻孔をくすぐってきました。見るからに草臥れているのですが、数年前に発生した火災では、この浴室まで火の手が及ばなかったため、浴室ばかりは古いままの姿が保たれているんだそうです。このお風呂は、お庭に面した窓側へ下る感じで、屋根が一方向へ傾斜しており、脱衣室側ではごく普通の高さがあるものの、窓下では天地がかなり狭まっています。また浴室自体も、出入口側に向かってかなり傾いています。この部屋にいると、平衡感覚が狂いそうだ…。


 
壁・床・浴槽など主要な部分はタイル貼りなのですが、補修を繰り返してゆく際に、有り合わせのタイルを使ってきたのか、部位によって色や模様がバラバラで、デザイン的な統一性は微塵も感じられません。浴槽はおおよそ6人サイズ。廃材で沸かした冷鉱泉が溜められています。隅っこには岩のオブジェがあるのですが、お湯を投入する際にはこの岩が湯口になるのかな。鉱泉に含まれる硫化水素等によって、手摺の金属がボロボロに腐食し、湯面のあたりで完全に切断されちゃっています。


 
まるでコーヒーのように濃い琥珀色を呈する黒湯。その色合いのため、ステップは辛うじて目視できますが、底は見えません。この湯船に入浴してみますと、強いツルツル浴感が全身を滑らかに包んでくれました。いかにもモール泉っぽいフィーリングです。湯面は芳しいタマゴ臭をふんわりと放っているのですが、お湯を沸かすために廃材を燃やす煙が、窓の隙間から浴室へ入りこんでいるため、室内もお湯も、炭のような焦げた臭が漂っていました。湯面には微細な白い物が浮いていたのですが、これってアルカリ泉によく見られる浮遊物なのか、はたまたお湯が鈍って発生したものなのか…。


 
床がかなり傾斜している洗い場には、シャワー付きカランが3つ並んでおり、それぞれが異なる形状をしています(これも有り合わせを取り付けたのかな)。カランから出てくるお湯も冷水も源泉を使用。特に源泉そのままの冷泉は、鉱泉が持つ個性が明瞭に残っており、口にしてみますと、薄塩味+(地中に堆積した有機物を由来とする)芳醇な卵黄味と匂い+重曹的清涼苦味+弱モール臭が感じ取れました。そしてこの鉱泉のシャワーを浴びますと、それだけでもヌルヌル感を伴う強いツルスベ浴感が全身を覆い、しかも全身からタマゴ臭とモール臭が香ってくるではありませんか。タマゴ臭が大好きな私にとって、この感覚に興奮を覚えずには居られません。うぉーっ、堪らんぞ! 溜め湯式の湯船はあまり鮮度が良さそうに見えなかったのですが、シャワーの鉱泉でしたら誰の体に触れていませんから、香りと浴感を楽しむべく、浴室内ではこのシャワーを浴びまくってしまいました。

B級温泉に慣れていない方でしたら、利用に二の足を踏んでしまいそうな、ちょっと近寄りがたい雰囲気があるこちらの浴場ですが、このヌルスベの黒湯には一定の人々の心を引きつける魔力があるのか、私が訪問した午後3~4時というやや早めの時間帯でも、先客2人に後客2人という、それなりの数の固定客が湯浴みしていらっしゃいました。わかりにくい立地である上、鄙びきっているお風呂ですが、まだまだ人気はあるんですね。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉
(温泉分析書見当たらず。数値は不明)

北海道千歳市祝梅2142-7  地図
0123-29-2222

14:00~21:00
350円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (4)
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