温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

小野川温泉 うめや旅館

2012年07月27日 | 山形県
 
5月下旬の某日、所用で仙台へ出掛けた翌日が完全オフとなったので、以前から泊まってみたかった小野川温泉の「うめや旅館」で1泊することにしました。数ある小野川の旅館の中で、なぜこの宿をチョイスしたのかと言えば、比較的リーズナブルであることが理由の一つ、そしてもう一つ重要な理由があるのです・・・


●お部屋
 
宿泊当日の午前中に直接お宿へ電話して平日限定プラン(1泊2食で\8,600)でお願いしたところ、3階の表通りに面した広い和室を用意してくださいました。とても綺麗で居心地の良いお部屋です。
宿泊当日は使用しませんでしたが、客室の暖房(ヒーター)は温泉熱を利用したものでして、この温熱システムは先に述べた私がこの宿を選んだ理由と大きく関係しております。



窓からは小野川のランドマークである尼湯など温泉街が見下ろせます。



廊下には自由に読める本棚もあり、民宿のような家庭的な雰囲気。


●食事

花より団子、腹が減っては戦もできぬ。温泉を取り上げる前にまずはお食事から。なお食事は夕食・朝食ともに別室にていただきました。



宿泊料金は8,600円とビジネスホテル並みですが「こんなにいただいて良いの?」と申し訳なく思えるほど、地元の食材を中心とした彩り豊かな品揃えに吃驚しちゃいました。


 
画像左(上)は米沢牛のすき焼き。お口の中でフワっと溶けちゃう極上の逸品には感激せずにいられません。画像右(下)はご当地の名物である鯉の甘露煮。しっかり煮詰めてあるので鯉の臭みは全くなく、骨までしっかり食べられちゃいます。


 
画像左(上)はこごみ入りのトロロそば。訪問日は初夏だったためこごみが旬を迎えていたわけですね。画像右(下)は筍と玉こんにゃくの煮物。筍は咀嚼する力を要さないほど柔らかくて、その食感に思わず目尻が下がってしまいました。


 
こちらは朝食。中央にこごみのおひたしが据えられ、両脇を焼鮭や温泉卵が固める、いかにも日本の温泉旅館の朝らしい布陣です。撮影し忘れちゃいましたが、一緒に供された緑色のふわふわ(おぼろ)豆腐は豆の風味が強くてべらぼうに美味く、あっという間にペロっと平らげちゃいました。


●お風呂

お風呂は1階の帳場の奥方にあり、男女別内湯が一室ずつで、男女の入れ替えは無く、露天風呂もありませんが、それでもこの宿を選びたくなる理由が・・・



こちらのお宿の湯使いにあります。小野川温泉では、主力の4号泉が激熱であるため、ぬるい5号泉を混ぜて適温にしたり、あるいは4号の単独使用であっても、湯加減調整のために加水したり、あるいは投入量を絞ったりしているのですが、こちらのお宿ではそのような方法を採らず、4号源泉を単独使用の上、熱交換器に通すことによって浴槽へ提供しているのであります。これによって湯量を絞らず加水もせず、新鮮な状態の4号源泉をふんだんに掛け流すことができるのです。熱交換により得られた熱は給湯や暖房に転用されており、上述のお部屋の紹介にて、暖房の温熱利用もこの宿の選択理由に関係があると申し上げたのは、こういう事情なのでありました。



脱衣所は至ってシンプルですが一通りのものは揃っており、手入れも行き届いておりとても清潔です。


 
窓に面している浴室は、夜間はもちろんのこと日中でもやや薄暗いのですが、これは浴室内で落ち着いて湯あみしてもらうために敢えてそのような明かりの設定にしているんだそうです。洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基用意されており、小野川の他の宿と同様、金属部分は硫化して黒く変色しています。



浴槽は四角い4人サイズでタイル貼りのものが一つしかなく、外見は至って普通なのですが、一湯入魂と言うべきで、上述のようにお湯のクオリティが全然違う!


 
浴槽に隅っこに設けられた湯口から源泉が注がれており、そのお湯は洗い場の床へ溢れさせないよう、浴槽縁の手前で口を開けているオーバーフロー管によって排湯されています。
このお湯は上述のように4号源泉単独使用でして、小野川の他の宿でも4号を単独利用しているところがありますが、同じ4号単独でもこちらのお湯は全然違います。他の宿のお湯に比べてごく薄く白く靄がかかっており、トロトロとした感触を有し、湯面から硫黄の匂いがはっきりと感じられます(換気がきちんと行われているために、硫黄臭の室内充満は軽度です)。飲泉すると出汁が効いた美味しいタマゴスープ味が明瞭に口腔内に拡がり、見た目、匂い、味、そしてトロミなど、ありとあらゆる知覚面の全てが他の宿のお湯より抜きんでいるように感じられ、湯船に浸かるとまるで自分が濃厚タマゴスープの具になったかのようでした。なお小野川の他のお湯に比べて湯の華がかなり少ないのですが、これはお湯が新鮮である証でしょう。

とても人当たりが優しい若旦那曰く、先代の主人が何とかお湯を良い状態のままで提供できないものかと思案した末に、このような熱交換システムを導入したんだとか。硫黄・塩分による腐食や成分によるスケール付着など、維持管理面でご苦労されているかと思いますが、そのおかげで小野川温泉のお湯本来の姿を存分に堪能することができました。
なお若旦那は鉄道や旅行がお好きのようでして、同じく「鉄」分の濃い私はその素性がわかると俄然饒舌になり、寝台列車やローカル線の話題に華が咲いて夜遅くまで話し込んでしまい、若旦那のお仕事の邪魔をしてしまいました。事情も察せずにひたすらしゃべり続けてごめんなさい。この場を借りてお詫びします。でもお蔭様でとても楽しいひと時が過ごせました。


●たんぼアート
 
若旦那のおすすめで、翌朝、温泉地からちょっと離れたところにある田圃アートを見学しに行きました。
田圃を見下ろす展望台には寄付金箱がありますので、寸志を入れてあげてください。防犯カメラもありますから、お金をくすねちゃダメよ。


 
まだこの時(5月下旬)は苗を植えたばかりだったので、絵がうっすらとしか現れていませんが、それでも「なせば成る」の言葉とともに米沢藩の名君である上杉鷹山の肖像、そして山形が誇るお米の品種「つや姫」のロゴを確認することができました。河北新報の記事によれば、このたんぼアートはちょうど今が見ごろを迎えているそうですよ。


協組4号
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 80.3℃ pH7.0 蒸発残留物6470mg/kg 溶存物質5515mg/kg
Na+:1518mg, Ca++:437.7mg,
Cl-:3124mg, HS-:1.6mg, S2O3--:0.8mg,
H2SiO3:77.4㎎, 遊離H2S:1.8mg,
(平成17年2月4日分析)

JR米沢駅から山交バスの小野川温泉行で小野川温泉下車、徒歩1分
山形県米沢市小野川町2494  地図
0238-32-2911
ホームページ

入浴可能時間13:00~翌9:00
現金での立ち寄り入浴は要問い合わせ
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (12)
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