鉄道切符収集マニアにはお馴染みの湯ノ岱駅から歩いて10分程度の温泉入浴施設です。列車の車窓からはっきり見える場所に位置しているので迷うこともないでしょう。切符収集家の皆さんは発券と次列車を待つ間に、ついでにここのお風呂に入って時間を潰すのが通例なんだそうですが、私の主目的はあくまで温泉、お湯に入るためにここを訪問しました。
元々は宿泊施設だったのでロビーは広々しています(現在は入浴のみ)。受付の男性係員はとても愛想良く、にこやかに「ゆっくり温まっていってください」と声を掛けてくれました。浴室は玄関正面の廊下を真っ直ぐ進んだ突き当りの右側(左側には小さな休憩室があります)。余談ですが、古い建物なのにトイレは洋式でした。
脱衣所も広いのですが、素寒貧な内装なので、ちょっと寒々しいかも。籠がたくさん積んであるので、それに衣類を入れて、棚に収めます。洗面台は2台設置。
浴室は奥へ長い構造で、男湯の場合、右手に窓が並んでその下に浴槽が3つ、左手にカラン(シャワー付き混合栓)が配置され奥に打たせ湯があります。
こちらでは2つの源泉を用いており、それぞれ混合することなく、別個の浴槽で堪能することが出来ます。一番手前(脱衣所側)の浴槽は2号泉を加温して投入しており、温度は42~3℃。濃いオレンジ色に濁り、透明度は30cm程度で底は見えません。味・匂いともに金気が強調され、そこへ塩味+出汁味+土気味+炭酸味がミックスされた複雑な知覚です。後述しますが、濁り方こそ強いものの、味や匂いでは3つある浴槽の中で一番薄いように思われました。
続いて真ん中の浴槽。こちらも2号泉ですが、加温されず、そのまま注がれています。手前側の浴槽のような濁り方はしておらず、薄暗い黄色の透明で底がちゃん見える透明度があります。加温槽より味・匂いとも強く、特に炭酸味がはっきりと感じられ、また匂いは金気臭の他に硫黄のような匂いも混ざっていました。同じ源泉でも数度加温するだけで全然違う性質になっちゃうんですね。カルシウムが濃いためかかなりギシギシとした浴感で、お湯に入ると夥しい気泡が肌に付着し、炭酸水を入れたコップの内側みたいな状態になるほどでした。色といい味といい炭酸具合といい、オロナミンCから甘さを抜いて塩味と出汁と金気を混ぜたような感じです。
浴槽の石には石灰分の析出がコンモリ付着。オーバーフロー部の床は赤く着色していました。
38℃という長湯にもってこいの温度であるため、お客さんは皆ここに集まる傾向にあるようでした。かく言う私もその一人。
一番奥の浴槽。こちらは1号泉を加熱せずそのまま投入しています。普段は35℃前後なんだそうですが、この日は雪が強い時だからか33℃しかなく、かなりぬるめでした。2~3人サイズの小さな浴槽で、底からは機械によって物凄い勢いでアブクが上げられています。泡発生装置が仕掛けられているのだから、浴槽は堅牢なものかと思いきや、底は砂利が不自然に敷かれており、意図的なのか或いは単にボロいだけなのかは不明。お湯は知覚的には2号泉より濃く、色は暗い黄緑色の笹濁りで、強い炭酸味+塩味+出汁味+土気味+金気味が混ざり合い、鉄の赤錆臭+微かな硫黄のような匂いが漂います。炭酸ガスの量が多いようで、匂いを嗅ごうと鼻を湯口に近づけたら、ガスで思いっきりむせてしまいました。
またカルシウム分が多いためか、ものすごく引っかかる浴感で、浴槽やオーバーフローが流れる床は、石灰の析出によって千枚田のような石灰棚が形成されていました。長年の蓄積によって千枚田ができあがったのでしょう、床を歩くのが痛いぐらいにものすごく分厚く彫り深く出来上がっています。
打たせ湯もすごい。おそらくこちらも1号泉を使用しているのでしょう、析出のコンモリが半端じゃなく、湯口は鍾乳石や石筍のように幾重にも皺を刻みながら膨らんだ状態で固まっており、お湯が落ちるところに置かれた腰掛にも分厚くコーティングされています。赤茶色の着色もすさまじく、色・形ともにもはや自然の造形美といっても過言じゃないかも。温泉マニアならこれを見て興奮すること必至です。
3つの浴槽を簡単に比較して見ます。
手前側をA(2号泉・加温)、真ん中をB(2号泉そのまま)、奥をC(1号泉そのまま)とすると、
・濁りの濃さ:A>C>B
・炭酸の強さ:C>B>A
・味の強さ:C>B>A
・石灰析出の多さ:C>>B>A
といった順になるでしょうか。あくまでいい加減な私の個人的見解なので、異論はあるかと思いますが…。
ネット上ではしばしば「混んでいる」という情報を見かけますが、訪問時(お昼頃)はお風呂を1時間ほど独占できました。お湯がぬるいので厳冬期には向いていないのかもしれません。でも炭酸ガスが多いため、じっくり長湯すれば炭酸の温浴効果で体の心までポカポカです。石灰質の凄い析出を見て興奮しながら、掛け流しのぬる湯に長湯していると、あっという間に時間が過ぎ去っていきました。聞きしに勝る強烈な個性のお湯でした。
1号井
ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 33.7℃ pH6.6 440L/min(掘削自噴) 溶存物質5.242g/kg 成分総計5.951g/kg
2号井
ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 39.0℃ pH6.4 250L/min(掘削自噴) 溶存物質4.370g/kg 成分総計4.978g/kg
JR江差線・湯ノ岱駅より徒歩10分(750m)
北海道檜山郡上ノ国町湯ノ岱507-2 地図
0139-56-3147
上ノ国町による紹介ページ
10:00~21:00(冬季は20:00まで) 第3月曜定休
350円
貴重品用100円リターン式ロッカー・ドライヤーあり、石鹸類やタオルは販売
私の好み:★★★