温泉天国の大分県には、ありとあらゆる泉質の温泉が勢揃いしています。なかでも今回取り上げる七里田温泉はかなり特徴的ではないかと思われます。テレビ番組などでは「危険な温泉」という物騒な取り上げ方をされるこの温泉ですが、周囲には至って長閑な田園風景が広がっています。何が危険かといえば、炭酸ガス(二酸化炭素)の量が多いことで、湯面近くに沈んだ炭酸ガスによって酸欠を起こす可能性があるんだそうです。
七里田温泉で外来客が入れるお風呂には、「七里田温泉館・木乃葉の湯」と地域の共同浴場である「下湯」のふたつがありますが、ここは迷わず「下湯」を選びます。とはいえ、料金を支払う先は「七里田温泉館・木乃葉の湯」になりますので、温泉館の券売機で料金を支払い、係員の方から「下湯」の鍵を受け取って、数十メートル先にある「下湯」へ向かうことになります。現地までは随所に看板が掲示されているので、迷うことはないでしょう。
小さな川に面している「下湯」は、まさに地域のための共同浴場というべき何の装飾もない素朴な建物。側面には「日本無類の炭酸泉」というプレートが貼られておい、否が応にも期待に胸が膨らみます。男女別に分かれた入口には入浴方法の説明が掲示されており、①窓を開ける、②扇風機をまわす、③10分待つ、④つかる時は胸までにする、と早速危険を臭わせるような文言が並んでいます。
飾りのない外観から受ける想像を裏切ることなく内部も至ってシンプルで、脱衣所と4人サイズの浴槽があるのみですが、普通と違うのは入口同様にガスの危険を喚起する注意書きが掲示されているところ。「この温泉は本格的な炭酸泉のため、高濃度の炭酸ガスも噴出していますしガスが充満することも考えられます。このため、危険であるため湯船または洗い場で寝そべることは禁止です」と書かれています。そしてこの説明の真下には大きな換気扇が設置されています。普通のお風呂ならば天井近くに設置される換気扇ですが、ここでは比重の重い炭酸ガスを排出する必要があるために低い位置に設けられているわけです。
さて、いざ入湯。浴槽周りや洗い場には温泉成分の析出が茶色くびっしり付着しています。余程濃いのでしょうか。お湯は無色透明ながら炭酸の泡が非常に多いために若干白濁して見える程です。体をお湯に入れると炭酸がシュワシュワと勢いよく音を立てながらはじけます。あたかも炭酸飲料に身を沈めているかのようで、お湯に浸かっているところは忽ち泡に包まれます。まさに全身気泡まみれ。炭酸泉には今までも何箇所か入ってきましたが、こんな泡を体験したのは生まれて初めてで、温泉ファンならずとも興奮することは必至です。口に含むと当然のように炭酸の味が感じられ、これに加えて茶色い析出の正体と思われる金気の味と匂いも感じられました。お湯はぬるめですが、炭酸ガスによる温浴効果のため、湯上がり後も体の芯から温まります(ただし厳冬期は少々肌寒いかと思われます。お湯が40℃を超えると炭酸ガスが逃げ出してしまいますのでやむを得ません)。
確証はありませんが、おそらく日本一の炭酸泉でしょう。おどろおどろしい警告文も、あくまで万一のことを考えてのものですので、普通に浸かっていれば問題ないかと思われます。他に類を見ないシュワシュワ感と、全身泡まみれになる様を、是非一度味わってみてください。
受付を行っている「七里田温泉館・木乃葉の湯」
温泉館で受け取る「下湯」の鍵
「下湯」までの道は、こうした看板で案内されます
入口に掲示された注意書き。入浴までの手順が示されています
浴室にも炭酸ガスの危険性を喚起する注意書きが
浴室の低い位置に設置された換気扇
大人気の「下湯」。常連さんでいっぱいです
(温泉分析表の掲示なし おそらくMg・Na-炭酸水素・硫酸塩泉)
大分県竹田市久住町大字有氏4050-1 地図
0974-77-2686
(所在地・電話ともに「七里田温泉館・木乃葉の湯」)
9:00~21:00
300円 第二火曜日定休
私の好み:★★★