伊豆の河津から天城峠に向かって登ってゆくと、ループ橋から1km程手前の右手に曹洞宗の古刹慈眼院があります。このお寺は1857(安政4)年にアメリカの初代駐日総領事であるハリスが、日米修好通商条約を締結するために江戸へ赴く途中で宿泊したお寺で、山門の袂にはその歴史を今に伝える石碑が据えられている他、滞在時にハリスが使用した椅子(曲録)も残っているそうです。
このお寺の境内にはかつてハリスに因んで名づけられた「ハリスコート」というユースホステルがありましたが、数年前に全面改築され、いまは「禅の湯」と名前を変えて日帰り入浴を受け付けている他、改築後もユースホステルとして営業を続けており、伊豆としては格安の値段で宿泊することが出来ます。
境内に入ると手前に本堂が、そしてその奥に隣接する形で「禅の湯」があります。「禅の湯」はいかにも現代建築という外観ながら、隣接する本堂に不思議とマッチする真っ白な建物で、内部もとてもスタイリッシュ。玄関の上がり框こそフローリングですが、そこから先は畳敷きになっており、また随所に木材をちりばめたりと、現代建築ながらしっかり和のテイストを織り込んでいます。
外観同様、脱衣所も内湯も白を基調としたインテリアになっており、内湯は大きなガラス張りで開放感たっぷり。露天風呂はウッディな造りで、デッキチェアも置かれているので、これに横たわってお風呂で火照った体を冷ますもよし。伊豆の山間らしい長閑な景色が眺められます。このようにお風呂は限られたスペースを有効に使って開放感と明るさ、そしてゆとりの空間を作り出しています。
お湯は自家源泉を使った源泉掛け流しで、伊豆らしい無色透明の透き通ったもの。湯口にコップが置いてあるので飲んでみると、味は無いものの微かに鉱物湯のような匂いが感じられます。アルカリ性泉のツルツル感と硫酸塩泉のキシキシ感が混在した浴感で、お湯を手に掬うと硫酸塩泉ならではのとろみが楽しめます。
またこの「禅の湯」には「石の湯」という名の岩盤浴も備えられています。はじめに料金を支払う際に岩盤浴着を渡されるので、これを着て入浴をするのですが、普通の岩盤浴のように一枚板の岩盤の上に臥せるのと違って、ここは玉砂利の上に横たわるので、砂利が体の曲線にうまい具合にフィットして実に心地よく、また温度や湿度の加減も高すぎず低すぎず、忍耐を伴うことなく快適に汗を流すことができました。
開放感ある清潔なお風呂に爽快な岩盤浴と、実に快適な環境の中で、時間の経過を忘れていつまでも湯浴みを楽しませていただきました。日帰り入浴料金は伊豆らしく高めですが、それに見合ったパフォーマンスが得られる優良施設だと思います。
慈眼院の山門
「禅の湯」入り口
内湯
内湯の湯口
露天風呂
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
47.0℃ pH9.0 169L/min 成分総計1.383g/kg
静岡県賀茂郡河津町梨本28-1 地図
0558-35-7253
ホームページ
10:00~22:00 無休
1000円
私の好み:★★★