地球に優しくという言葉が好きになれない。
地球という存在にとって、その表面上に生息する数多の生物は、いかなる存在意義を持つのだろう。そんな疑念が、私の頭の片隅から離れない。
地球上に生物が存在するようになったのは、今から40億年ほど昔のことだ。以来、何度となく大絶滅が繰り返されてきた。最大の絶滅は、30数億年前の海で起こったとされる。太古の生物が暮らす海に、突如として発生した恐るべき怪物。当時の生物には有毒な酸素を放出する怪物の所業で、当時の生物の99%が死滅したという。酸化作用という化学反応を引き起こす酸素は、太古の生物には耐えられない猛毒であり、ほんのごく一部の生物が深海や地中の奥深くに逃げ込んで生き延びた以外は全滅した。
代わって地球上に蔓延したのが、酸素をエネルギーに転換できる生物たちだ。我々人類も、当然にこの子孫になる。数え方にもよるが、この40億年で大きく7回は大絶滅があったとされる。一番近かったのは恐竜を死滅させた6500万年前の大変動だ。
原因は謎とされる。宇宙から飛来した隕石の衝突説が巷間に流布されたのは、比較的最近のことだが現在は否定的だ。隕石衝突説が弱いのは、6500万年前にユカタン半島に墜落する以前から恐竜たちは衰退の状況にあったことを説明できないからだ。止めを刺す要因にはなったと思うが、恐竜絶滅の真因にはなりえない。
現在強く支持されつつあるのがスーパーボルケーノ説。つまり超巨大噴火活動だ。地球の表面(地殻)のはるか下に今も蠢くマグマ層が数億年に一度、地殻をぶち破って大量に噴出する。その際の火山灰が大気を数年間覆い、太陽の日差しを遮り寒冷化を招き、植物を死滅され、動物を絶滅に追いやる。地球が完全に氷結したことすらあった。
ただ幸いなことに地表の7割は海で、大半のスーパーボルケーノは深海で起こるらしい。海洋生物には大打撃だが、地表への影響は少ない。しかし、運悪く地表でこのスーパーボルケーノが発生した場合は、生物の大虐殺が引き起こされる。
なれば、地球にとって、その表面上に生息する生物の存在は、いかなる価値を有するというのか。この地球にガイアという概念を当てはめ、意思ある存在として提起した学者の一人が、表題の著者松井孝典だ。
馬鹿らしいと吐き捨てるのは簡単だ。それでも無視しきれないのは、宇宙の生誕から、生物の進化にはある種の意思あるいは方向性を感じることがあるからだ。人智では計り知れない意思の存在を、神と呼び、畏れ、讃えたのは、か弱き人類の気の迷いかもしれない。
SF的アイディアとさえ思えるガイア説が、一般人よりも科学者たちに広まったのは、誰よりも科学者たちが人智の限界に近いからではないか。読んだ当初は「とんでも本」ではないかと思っていたのですが、現在は少々不安に思うこと多々あり。
我々人類なんて、地球の表面上にはびこる細菌のような存在でしかないのではないか。地球に優しくなんて、とんでもない傲慢に感じる。地球にとって人類など必要な存在であるわけなく、あくまで生存を黙認されているだけではないか。
松井先生は、東京大学の助教授(当時)であり、次のノーベル賞に最も近いとまで噂される学究の人です。奇をてらってガイア説を取り上げたわけではなく、学術研究の一つの試論として取り上げただけだと思います。それなのに、私にとっては下手なホラー小説よりも恐ろしく感じてしまったのです。
地球という存在にとって、その表面上に生息する数多の生物は、いかなる存在意義を持つのだろう。そんな疑念が、私の頭の片隅から離れない。
地球上に生物が存在するようになったのは、今から40億年ほど昔のことだ。以来、何度となく大絶滅が繰り返されてきた。最大の絶滅は、30数億年前の海で起こったとされる。太古の生物が暮らす海に、突如として発生した恐るべき怪物。当時の生物には有毒な酸素を放出する怪物の所業で、当時の生物の99%が死滅したという。酸化作用という化学反応を引き起こす酸素は、太古の生物には耐えられない猛毒であり、ほんのごく一部の生物が深海や地中の奥深くに逃げ込んで生き延びた以外は全滅した。
代わって地球上に蔓延したのが、酸素をエネルギーに転換できる生物たちだ。我々人類も、当然にこの子孫になる。数え方にもよるが、この40億年で大きく7回は大絶滅があったとされる。一番近かったのは恐竜を死滅させた6500万年前の大変動だ。
原因は謎とされる。宇宙から飛来した隕石の衝突説が巷間に流布されたのは、比較的最近のことだが現在は否定的だ。隕石衝突説が弱いのは、6500万年前にユカタン半島に墜落する以前から恐竜たちは衰退の状況にあったことを説明できないからだ。止めを刺す要因にはなったと思うが、恐竜絶滅の真因にはなりえない。
現在強く支持されつつあるのがスーパーボルケーノ説。つまり超巨大噴火活動だ。地球の表面(地殻)のはるか下に今も蠢くマグマ層が数億年に一度、地殻をぶち破って大量に噴出する。その際の火山灰が大気を数年間覆い、太陽の日差しを遮り寒冷化を招き、植物を死滅され、動物を絶滅に追いやる。地球が完全に氷結したことすらあった。
ただ幸いなことに地表の7割は海で、大半のスーパーボルケーノは深海で起こるらしい。海洋生物には大打撃だが、地表への影響は少ない。しかし、運悪く地表でこのスーパーボルケーノが発生した場合は、生物の大虐殺が引き起こされる。
なれば、地球にとって、その表面上に生息する生物の存在は、いかなる価値を有するというのか。この地球にガイアという概念を当てはめ、意思ある存在として提起した学者の一人が、表題の著者松井孝典だ。
馬鹿らしいと吐き捨てるのは簡単だ。それでも無視しきれないのは、宇宙の生誕から、生物の進化にはある種の意思あるいは方向性を感じることがあるからだ。人智では計り知れない意思の存在を、神と呼び、畏れ、讃えたのは、か弱き人類の気の迷いかもしれない。
SF的アイディアとさえ思えるガイア説が、一般人よりも科学者たちに広まったのは、誰よりも科学者たちが人智の限界に近いからではないか。読んだ当初は「とんでも本」ではないかと思っていたのですが、現在は少々不安に思うこと多々あり。
我々人類なんて、地球の表面上にはびこる細菌のような存在でしかないのではないか。地球に優しくなんて、とんでもない傲慢に感じる。地球にとって人類など必要な存在であるわけなく、あくまで生存を黙認されているだけではないか。
松井先生は、東京大学の助教授(当時)であり、次のノーベル賞に最も近いとまで噂される学究の人です。奇をてらってガイア説を取り上げたわけではなく、学術研究の一つの試論として取り上げただけだと思います。それなのに、私にとっては下手なホラー小説よりも恐ろしく感じてしまったのです。