ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「神々の指紋」 グラハム・ハンコック

2007-08-22 12:40:38 | 
私は由緒正しいアンモナイトの子孫である。根拠?うん、夢で見たのさ。太古の海を気持ちよく漂っているアンモナイトの自分をね。文様が美しい貝殻と、繊細で力強い触手を棚引かせながら、緑の海を優雅に泳ぐ古代生物である自分に気づいた時の安堵感は、なんとも素晴らしいものであった。

ところが、巨大な口を空けた凶暴なシーラカンスが襲ってきて、哀れ華麗なアンモナイトは・・・あ!目が覚めた。

冗談はさておき、私は過去を飾り立てる自己紹介が嫌いだ。とりわけ笑っちゃうのが、旧貴族の出であることを語る輩だ。日本の貴族ぐらい間抜けな連中も珍しい。本来なら武士に実権を握られた段階で滅亡してもおかしくない。実力なき旧・支配者が滅ぶのは歴史の必然と言っていい。

ところが、心優しき日本人は、天皇やその取り巻きの貴族どもを滅ぼさなかった。滅ぼすだけの価値もなかったのかもしれないが、どうもある種の文化遺産の管理者として残しておいたようだ。実際問題、私は天皇制自体を、古代から引き継がれた文化遺産だと考えている。だからこそ、今も大衆から愛されて(?)いるのだろう。

古代の貴族は、当然に実力ある支配者であったが、その子孫どもときたら、生き残っただけがとりえの情けない連中だと私は思う。このあたりの思考は、私が過激な左翼思想のもとで思春期の一時代を過ごしたことの名残だ。

だから、「私(わたくし)の祖先は藤原家ですの、オホホホッ」なんて恥も知らずにのたまう馬鹿に出会うと、心底軽蔑したものだ。黙っていれば、素の当人を正当に評価してやるものを・・・

しかし、まあ、人間って奴は古今東西を問わず、過去を飾るのが好きなようだ。そんな人間の心根につけこんだのが、表題の本だと思う。

白状すると、最初に読んだ時はずいぶんと興奮したものです。

でも、日を置き冷静に振り返ってみると、その内容はかなり問題がある。気がついたのは、その仮説のほとんどが実証されていないこと。さらにその仮説のもととなる資料の扱い方に偏向が感じられることだ。

思い入れが強すぎて、反証の検討が十分でない。仮説を既定の事実としてしまい、史跡などをその既定の事実化の道具として扱っている。ちょっとオカシイぞ、と思い直したのは再読後のことです。

既に沢山の反論がなされ、見事「トンデモ本」の仲間入りを果たしたようですが、未だに真に受けている方も散見します。新聞のTV欄を見ていたら、まだ取り上げている番組があったので仰天した覚えがあります。まあ、未だに解明されていない海底の遺跡の映像は、たしかにロマンが漂いますが、あくまで仮説として楽しむにとどめるべきでしょう。

コメント (4)
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