ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「ヘビ少女」 楳図かずお

2007-08-07 09:25:22 | 
蚊に刺されて腫れた箇所を、かきむしってはイケナイと良く言われたものだ。

わかっちゃいるけど、掻いてしまう。だって、痒いのだもの。だけど、表題の漫画を読んだ時は、さすがに掻きむしるのを止めてしまった。もし掻いて、鱗が剥がれてきたらと想像しただけで浮ュなったからだ。

蛇のような爬虫類を嫌う人は、けっこう多いと思う。あの鱗のヌメル感じや、無機質な目が嫌らしい。生理的というか、感覚的に嫌悪を感じるようだ。爬虫類を嫌うのは、太古に恐竜に貪り食われた記憶が脳幹に刻まれているからだと言った人がいるが、あたしゃその発想のほうが怖い。

著者、楳図かずおも息の長い漫画家だ。私が小学生の頃は、ホラー漫画の大家だった。途中からギャグ漫画「まことちゃん」へと転進したこともあったが、今でも時折ホラーを書いている。やはり、この人はホラーが一番面白いと思う。

ギャク路線を始めた時、なぜにと不思議に思ったが、案外笑いと恐怖は近い感情なのかもしれない。どうしようもない恐怖が目前に迫った時、気がついたら笑っていたことがある。

いささか時節はずれの話だが、初冬の谷川岳で新雪雪崩に巻き込まれた時のことだ。山腹を横に進んでいると、ひらけた場所に出た。空は透き通るような晴天で、雲ひとつ無い清々しい朝だった。ふと、見上げると雲が広がっていた。雲?

雪崩だった。凄いスピードで迫ってくる。足がすくんで動かない。気がついたら笑っていた。引きつった笑いではあったが、膝が震えているのに、顔は笑っていた。

あっという間に烈風に吹き飛ばされた。潅木の茂みに叩き付けられ、起き上がった瞬間に雪の流れに巻き込まれた。必死の思いで手足をばたつかせ、泳ぐようにもがいた。

気がついたら、雪に半身を埋められてはいたが生きていた。慌てて抜け出した。呼ぶ声がするので見上げると、同行の先輩が呼んでいる。先頭を歩いていた私だけが、雪崩に巻き込まれたようだ。80~100メートルほど流されただけで済んだ。岩に叩きつけられることもなく、手足が折れることもなく、雪に埋められることもない僥倖だった。

降りてきてくれた先輩と無事再会し、今度は安堵の笑みがこぼれた。助かった・・・まあ、全身打撲でボロボロだったけど、それでも生きている。ありがたかった。

それにしても、何故にあの時笑ったのだろう。足がすくむほど怖いのに、なぜに笑ったのか?人の心の動きは複雑だと、つくづく思わざる得ない。

冷静に楳図かずおの漫画を読むと、案外恐怖場面で笑いを誘われることがある。笑いと恐怖は隣り合わせの感情なのかもしれません。
コメント (12)
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