ヌマンタの書斎

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償却資産税の恨み

2007-08-17 09:22:55 | 経済・金融・税制
騙されたとの思いが抜けきらない。

テナントビルの一室を借りて、そこで店舗を営業したとしよう。当然、借りたままの現状では、店舗としては使えない。資金を投じて店舗の内装工事をするのが通例だ。これを内部造作と言う。

その内部造作は修繕工事の性質を持つが、一括で必要経費とはならない。工事の内容により、建物付属設備として、あるいは器具備品として資産計上することになる。

ところで、1月に提出する償却資産税の申告は、例によって会社経理とは異なるものとなる。内部造作については、主に構築物と器具備品に分けて申告することが、償却資産税の申告の手引きに書かれており、その通りに申告していた。

疑いも持たずに、過去何年もそのように申告していた。

それが忘れもしない平成16年税制改正だ。地方税法343条に新たに加えられた9項の中身に仰天した。要約すると「内部造作は、取り付けたものが事業の用に供する場合に限り、償却資産税を課税することができる」となっていた。

おい!この条文は創設だよな。では、今までの課税根拠は一体何だったんだ?

調べてみると、総務省の見解では内部造作については家屋の所有者に家屋として固定資産税を課するとあるが、地方税法には根拠条文がない。平成10年に通達を定めて、それに基づいて東京都は課税していたらしい。おいおい、いつから通達は法律になったのだ。呆れたことに、地方税法を拡大解釈して、長年内部造作を課税していたらしい。

賦課処分の取り消しを求めて東京都に審査請求をした税理士もいたようだが、平成10年の通達を根拠に棄却されたようだ。当然にそれ以前の賦課は、時効の壁に阻まれてもはやお手上げ状態だ。私自身の考えでは、そもそも総務省の見解自体が、実態と合わず無理があるので、償却資産税の対象となるのは相応だと思う。でも、租税法律主義の観点からは納得できない。

私は税金は、有権者の信任を受けた議員により構成される議会(立法府)で承認された法律に基づいて課税されるものだと考えている。いつから東京都主税局は立法府になったのだ。平成16年改正は、過去の不正を正当化する小細工なのか?

都税事務所から送付された申告書の手引きを信じて、根拠条文を調べなかった納税者及び税理士にも問題はないとは言わない。正直言って、償却資産税の申告は付随業務で、本気で取り組んでいる仕事としての意識は薄い。せいぜい、改正事項に目を配る程度の関心しかないのが実情だ。ほとんどの税理士がそうだと思う。

不愉快なのは、東京税理士会の税務審議部の答弁で、「個々の税理士が関与先と対応すべき事案」だと逃げたことだ。誰もが右山税理士や飯塚税理士にはなれない。税務訴訟は、行政訴訟であり、相当な経済的余裕がないと出来るものではない。問題が専門的に過ぎるので、世論やマスコミの支援は難しい。

このような事案こそ、税理士会の支援が必要だと思うが、どうも逃げ腰のようだ。猫に鈴をつけるのは、やはり誰もが嫌なのだろう。一人では無理でも、税理士会の支援があれば可能ではないのか?私のような下っ端の支部幹事の発言力なんぞ、多寡が知れている。それでも機会があったら、声を上げてみたいと思う。
コメント
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