真田丸の感想を書いてすぐ、休む間もなく「火村英生の推理」を見た。
僕はもともと原作者、有栖川有栖のファンである。今回の「絶叫城殺人事件」も読んでいる。内容はすっかり忘れていたが。
有栖川有栖の作品には二つのシリーズがある。英都大学ミステリ研究会(EMC)の有栖川有栖が語る名探偵江神二郎の活躍「学生アリス」シリーズと、今回ドラマ化された推理作家有栖川有栖が語る名探偵火村英生の活躍「作家アリス」シリーズである。火村の探偵譚は学生のアリスが書いた作品で、江神のは作家のアリスが書いたことになっている。
作品の数は長編4+短編少々と少ないのだが、学生アリスのほうが完成度が高い。というか、有栖川有栖の最高傑作は、学生アリスの「双頭の悪魔」か「孤島パズル」だと言われている。たぶん。僕も異議なしである。
作家アリスは数は多いが玉石混交。特に僕はいかにも架空の団体といった趣でリアリティがないシャングリラ十字軍関係の話があまり好きではない。
しかし、この第一話でいきなりシャングリラ十字軍が出てきた。嫌な予感がした。本筋には絡まなかったけど、いずれ対決することになるのだろう。わざわざ長谷川京子をボス役に起用してるし。
斎藤工は火村のイメージに合っている。もし僕がキャスティングをしても、彼を起用するだろう。しかし、彼の素の雰囲気だけで十分なのに、ネクタイの締め方や服装が火村的にすぎる。あんなにしなくても十分火村に見えるのに。
作家アリスは火村の同年代で、三十代半ばの設定である。なのに、半周りも年下の窪田正孝とは。年齢も合わないが、彼はイケメンすぎる。作家アリスは現実の有栖川有栖のイメージ(ただし長髪ではない)だと思うので、美化しすぎ。恐らくコミック化(それも少女漫画タッチの)の際にアリスも美形化されたのだろうが。
作家アリスシリーズは独身のおっさん二人がいちゃいちゃする話なので、そういうのを好む視聴者向けに振った配役かもしれん。
優香が演じるキャラは原作に登場しないが、原作の女性キャラは火村の下宿のばあちゃんくらいなので、テレビの絵的にはやむを得ない改変だろう。
推理の方は、一応「和製エラリー・クイーン」と呼ばれる人の原作があるので本格的。筋は通っていた。穴もない。有栖川有栖かよくやる「犯行とは直接関係ない些細な手がかりを取っ掛かりにして追い詰める。犯行自体はガッチリ証明しない」パターンだった。
アリスのしゃべり方が忙しないとか、優香とかが火村の歪んだ情熱を説明しすぎとか、気に入らないとこは多々あるが、推理はちゃんとしてるので、とりあえず見続けるだろう。次はシャングリラ関係ないはずの「異形の客」だし。