(上:アルカイック・スマイルをたたえるウルトラマン。)
待望の展示会であった。惜しくも2002年に世を去っている。
ウルトラマンの「ジェットビートル」はお世辞にもあまり格好いいデザインでとは思えなかった。あれは成田氏によるものではない。
しかし、続く「ウルトラセブン」でのウルトラホークには心を奪われてしまった。そしてそのデザインを手がけた成田亨の名をわすれることはできない。
今回の展示でウルトラマンやウルトラセブンの造形が彼から産まれたことを初めて知った。
だが、当初のデザインは今私たちが目にしている物とは似ても似つかぬ代物で驚いた。一番最初のマンは半身を鱗が覆っていた。(絵をお見せしたいがあいにく手持ちの画像がない。)
こちらはセブンの初稿。
セブンのデザインには逸話がある。ウルトラマンの着ぐるみに入っていた人は八頭身だったので、セブンも同じようにあつらえておいたところ、紹介された人物を見て成田は驚いた。肩幅のがっちりしたその男は五頭身半の体躯であった。殺陣は非常に旨いらしいのだが・・・。驚いた成田はキャストを変えてくれと言ったが、(予算の関係で)変更は利かないとのことだった。そこで、急遽、セブンの衣装は上半身に鎧のようなものを用い胴から脚にかけてラインも加え全身に目がいかないように工夫した。さらに色も身体がスリムに見える青色を指定した。しかし、玩具メーカー(バンダイ)の意向で赤にされてしまう。
もう、セブンに関しては、あきらめの境地に達した成田は、その分、ウルトラホークや基地の造形に力を注ぐことに決め込んだ。その結果ウルトラシリーズでもっとも充実したメカ(ホーク1号2号3号やマグマライザー、ハイドロジェット、ポインター号など)が登場することになる。とんだ怪我の功名である。
ところで「怪獣とウルトラマン」の関係を「カオス(混沌)とコスモス(秩序)」と位置づけた成田亨は怪獣をデザインするにあたって次の3つの原則を掲げた。
1.怪獣は怪獣であって妖怪(お化け)ではない。だから首が二つとか、手足が何本にもなるお化けは作らない。
2.地球上のある動物が、ただ巨大化したという発想はやめる。
3.身体がこわれたようなデザインをしない。脳がはみ出たり、内蔵むき出しだったり、ダラダラ血を流すことをしない。
セブン途中で円谷プロを辞した成田。後年「角の生えたウルトラマンなど私は認めない。」とビデオで語っている。
「私は彫刻家だから物の形を変えることで怪獣を作った。」とも云っている。
A市での会期は12月5日まで。
こちらも参照ください。
怪獣と美術 <成田亨の造形美術とその後の怪獣美術>
これから見に行かれる方のために一つだけ大事なことをお伝えしておく。会場内でビデオが上映されているのだが、これを是非とも観ておくこと。でないと、展示の面白さが半減してしまう。但しこのビデオ、お世辞にも見やすいものではなく、画質、音質とも悪く、ほとんど素人が撮影したものをただ無編集のまま流しているだけである。(しかも1時間超。)それでも、見る価値は十分ある。
もう一つ、成田亨は京都の大江町に鬼の像を作っている。なかなか興味深い話なので近々載せる予定である。これも上記のビデオを見ておかないと訳が判らない。
待望の展示会であった。惜しくも2002年に世を去っている。
ウルトラマンの「ジェットビートル」はお世辞にもあまり格好いいデザインでとは思えなかった。あれは成田氏によるものではない。
しかし、続く「ウルトラセブン」でのウルトラホークには心を奪われてしまった。そしてそのデザインを手がけた成田亨の名をわすれることはできない。
今回の展示でウルトラマンやウルトラセブンの造形が彼から産まれたことを初めて知った。
だが、当初のデザインは今私たちが目にしている物とは似ても似つかぬ代物で驚いた。一番最初のマンは半身を鱗が覆っていた。(絵をお見せしたいがあいにく手持ちの画像がない。)
こちらはセブンの初稿。
セブンのデザインには逸話がある。ウルトラマンの着ぐるみに入っていた人は八頭身だったので、セブンも同じようにあつらえておいたところ、紹介された人物を見て成田は驚いた。肩幅のがっちりしたその男は五頭身半の体躯であった。殺陣は非常に旨いらしいのだが・・・。驚いた成田はキャストを変えてくれと言ったが、(予算の関係で)変更は利かないとのことだった。そこで、急遽、セブンの衣装は上半身に鎧のようなものを用い胴から脚にかけてラインも加え全身に目がいかないように工夫した。さらに色も身体がスリムに見える青色を指定した。しかし、玩具メーカー(バンダイ)の意向で赤にされてしまう。
もう、セブンに関しては、あきらめの境地に達した成田は、その分、ウルトラホークや基地の造形に力を注ぐことに決め込んだ。その結果ウルトラシリーズでもっとも充実したメカ(ホーク1号2号3号やマグマライザー、ハイドロジェット、ポインター号など)が登場することになる。とんだ怪我の功名である。
ところで「怪獣とウルトラマン」の関係を「カオス(混沌)とコスモス(秩序)」と位置づけた成田亨は怪獣をデザインするにあたって次の3つの原則を掲げた。
1.怪獣は怪獣であって妖怪(お化け)ではない。だから首が二つとか、手足が何本にもなるお化けは作らない。
2.地球上のある動物が、ただ巨大化したという発想はやめる。
3.身体がこわれたようなデザインをしない。脳がはみ出たり、内蔵むき出しだったり、ダラダラ血を流すことをしない。
セブン途中で円谷プロを辞した成田。後年「角の生えたウルトラマンなど私は認めない。」とビデオで語っている。
「私は彫刻家だから物の形を変えることで怪獣を作った。」とも云っている。
A市での会期は12月5日まで。
こちらも参照ください。
怪獣と美術 <成田亨の造形美術とその後の怪獣美術>
これから見に行かれる方のために一つだけ大事なことをお伝えしておく。会場内でビデオが上映されているのだが、これを是非とも観ておくこと。でないと、展示の面白さが半減してしまう。但しこのビデオ、お世辞にも見やすいものではなく、画質、音質とも悪く、ほとんど素人が撮影したものをただ無編集のまま流しているだけである。(しかも1時間超。)それでも、見る価値は十分ある。
もう一つ、成田亨は京都の大江町に鬼の像を作っている。なかなか興味深い話なので近々載せる予定である。これも上記のビデオを見ておかないと訳が判らない。