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森羅万象 ~ 歩く印象派

怪獣デザインの三原則:成田亨。

2007年11月25日 23時23分48秒 | 歩く印象派
(上:アルカイック・スマイルをたたえるウルトラマン。)
待望の展示会であった。惜しくも2002年に世を去っている。
ウルトラマンの「ジェットビートル」はお世辞にもあまり格好いいデザインでとは思えなかった。あれは成田氏によるものではない。
しかし、続く「ウルトラセブン」でのウルトラホークには心を奪われてしまった。そしてそのデザインを手がけた成田亨の名をわすれることはできない。

今回の展示でウルトラマンやウルトラセブンの造形が彼から産まれたことを初めて知った。
だが、当初のデザインは今私たちが目にしている物とは似ても似つかぬ代物で驚いた。一番最初のマンは半身を鱗が覆っていた。(絵をお見せしたいがあいにく手持ちの画像がない。)

こちらはセブンの初稿。

セブンのデザインには逸話がある。ウルトラマンの着ぐるみに入っていた人は八頭身だったので、セブンも同じようにあつらえておいたところ、紹介された人物を見て成田は驚いた。肩幅のがっちりしたその男は五頭身半の体躯であった。殺陣は非常に旨いらしいのだが・・・。驚いた成田はキャストを変えてくれと言ったが、(予算の関係で)変更は利かないとのことだった。そこで、急遽、セブンの衣装は上半身に鎧のようなものを用い胴から脚にかけてラインも加え全身に目がいかないように工夫した。さらに色も身体がスリムに見える青色を指定した。しかし、玩具メーカー(バンダイ)の意向で赤にされてしまう。
もう、セブンに関しては、あきらめの境地に達した成田は、その分、ウルトラホークや基地の造形に力を注ぐことに決め込んだ。その結果ウルトラシリーズでもっとも充実したメカ(ホーク1号2号3号やマグマライザー、ハイドロジェット、ポインター号など)が登場することになる。とんだ怪我の功名である。


ところで「怪獣とウルトラマン」の関係を「カオス(混沌)とコスモス(秩序)」と位置づけた成田亨は怪獣をデザインするにあたって次の3つの原則を掲げた。

 1.怪獣は怪獣であって妖怪(お化け)ではない。だから首が二つとか、手足が何本にもなるお化けは作らない。
 2.地球上のある動物が、ただ巨大化したという発想はやめる。
 3.身体がこわれたようなデザインをしない。脳がはみ出たり、内蔵むき出しだったり、ダラダラ血を流すことをしない。

セブン途中で円谷プロを辞した成田。後年「角の生えたウルトラマンなど私は認めない。」とビデオで語っている。

「私は彫刻家だから物の形を変えることで怪獣を作った。」とも云っている。

A市での会期は12月5日まで。
こちらも参照ください。
怪獣と美術  <成田亨の造形美術とその後の怪獣美術>
これから見に行かれる方のために一つだけ大事なことをお伝えしておく。会場内でビデオが上映されているのだが、これを是非とも観ておくこと。でないと、展示の面白さが半減してしまう。但しこのビデオ、お世辞にも見やすいものではなく、画質、音質とも悪く、ほとんど素人が撮影したものをただ無編集のまま流しているだけである。(しかも1時間超。)それでも、見る価値は十分ある。

もう一つ、成田亨は京都の大江町に鬼の像を作っている。なかなか興味深い話なので近々載せる予定である。これも上記のビデオを見ておかないと訳が判らない。

手作り特撮、どこへ 経営難の円谷プロ、CGに比重

2007年11月25日 23時19分51秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2007年11月25日12時53分朝日COM

 怪獣が倒れ、ミニチュアのビルが崩れる――。ウルトラマンシリーズおなじみのシーンが、今後は見られなくなるかも知れない。作品を手がける円谷プロダクションが経営難から映像制作会社の傘下に入り、親会社は制作費が膨らむミニチュア撮影からの撤退を示唆したからだ。国民的ヒーロー作品の特徴だった「手作り」特撮の行方はいかに。

●親会社「制作費かさむ」撤退指示

 円谷プロは苦しんでいました――。10月末、こんな全面広告が日経新聞に掲載された。りりしいウルトラマンの横には謝罪や経緯を説明する文章が並び、同社がグループ会社になったことを伝えた。「ファンの皆さまにはほんとうにご心配ばかりかけてきました。訴訟ごと、スキャンダル、そして重い資金難など『世界の円谷』として恥ずかしいことでした」

 同社を引き受けたのはCM制作大手のティー・ワイ・オー(TYO)。「映像コンテンツ集団」を掲げ、映画、CG、WEB、ゲームソフトなど約40のグループ会社をもつ。ジャスダックにも上場している。

 先月17日の記者説明会で、TYOの吉田博昭社長は「円谷プロは同族経営が続き、共同体と企業が混同されていた」と指摘。制作費がかさんだ要因に、円谷作品の特徴であるミニチュアを挙げ、こう続けた。

 「リアルでないし、『チャチさがいい』と言うのはオタク。あまりにも少数の異常な愛着にこだわってはいけない」「今後は安価に短時間で仕上がるCGなどをフル動員してかっこいいものを作りたい」

 この発言に反応したのは、特撮ファンたち。インターネットの掲示板などには「賛同できない」「寂しい」の書き込みが相次ぎ、円谷プロにも古くから特撮にかかわってきたスタッフから問い合わせが寄せられているという。

 円谷プロは、「ゴジラ」などを手がけ「特撮の神様」と呼ばれた円谷英二によって48年に設立された「円谷特殊技術研究所」が前身。「ウルトラマン」(66年)をはじめ、ミニチュアのセットを駆使し、巨大ヒーローと怪獣が戦う作品は、日本の特撮のシンボル的存在でもある。だが、「いい作品のためには金を惜しまない」という姿勢に同族経営の弊害が加わり、「働いていない人が多く、1本作るたびに首が絞められる経営」(吉田社長)だったという。

 円谷プロの大岡新一・副社長によれば「コストの問題から、制作の基軸はすでにCGになっている」という。

 同社のCG合成の歴史は「ウルトラマンティガ」(96年)に始まる。当初は怪獣の変形などに使う程度だった。が、「ウルトラマンネクサス」(04年)でビル街などのミニチュアを一気に減らしCGに切り替えたところ、「シリーズの世界観と違う」と不評を買い、次の「ウルトラマンマックス」(05年)でいったん原点へと戻る。

 しかし、ミニチュアは手作りだけに制作費がかさむ上、保管料もかかる。現在放送中の「ULTRASEVEN X」(TBS系)では、実写とCG中心になり、特撮と実写の2班体制だった撮影チームも統一し、経費を半減させた。

 大岡副社長は「ミニチュアを捨てたわけではないが、コストを度外視してまでこだわることはできない」と語る。

 もっとも映像制作の世界でミニチュア撮影は時代遅れになったわけではない。

 「ミニチュアの情報量は多い。窓の格子など建物のディテールはCGより優れている部分もある」。劇場版ウルトラマンなどでミニチュア製作を手がけた造形美術工房「マーブリング・ファイン・アーツ」の岩崎憲彦社長は強調する。

 怪獣が登場するような特撮は減ったが、通常映画で、景色などのCGに合成する素材としてミニチュアの需要が国内外で多くあるという。上映中の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」でも街並みなどに使われている。

 『円谷英二の映像世界』の編者で、特撮映像研究家の竹内博さんも言う。

 「英二さんは昭和30年代に『電子技術と映画、テレビの融合の時代が来る』とCGの到来を予言していた。ミニチュアか、CGかの議論ではなく、共存を図っていくのが創業者の理念にかなうのでは」

 大岡副社長も経営に余裕ができれば演出に応じて効果的に使っていきたい考えだ。長く特撮カメラマンを務めた経験から「伝承芸の域だけにいったん途絶えれば復活は難しい」との危機感があるからだ。

●新作ではミニチュア使わず

 円谷プロにとっては、お家芸の継続のためにも、経営再建とファン層の拡大が急務。来月開局する衛星放送局BS11で始まる新番組「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル」(土曜夜7時~)に、関係者は大きな期待を寄せる。

 ウルトラマンシリーズに登場した怪獣たちが戦いを繰り広げる物語。ミニチュアはほとんど使わずロケ撮影もしない。徹底して制作コストを下げる一方、放送と同時にインターネットや携帯電話に番組を配信するほか、デジタルカードを使ったゲーム機と連動させ怪獣ブーム再燃を狙う。

 森島恒行新社長は「TYOの時代の先端をいくセンスも採り入れながら、09年には新たなウルトラマンシリーズや新しいキャラクターを誕生させたい」と意気込む。