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宇宙最初期の巨大ブラックホールを発見

2011年06月16日 22時38分03秒 | 地球の不思議・宇宙の不思議

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宇宙最初期の巨大ブラックホールを発見
周囲の物質を吸い込む宇宙最初期の超大質量ブラックホール(想像図)。
(Illustration courtesy A. Hobart CXC/NASA)

 宇宙深部を長時間観測したデータから、宇宙最初期に形成された銀河の中心部には超大質量ブラックホールが存在する可能性が明らかになった。

 十分成長した大きな銀河の大半は、中心部にブラックホールを持っている。ビッグバンからわずか10億年後には、多数の巨大ブラックホールが存在したと以前から指摘されていた。

 今回の研究で活躍したのはNASAのチャンドラX線観測衛星。ブラックホールに吸い込まれた物質は猛烈な速度で衝突し合い、エネルギーを放出する。その 際に放射される強力なX線をチャンドラで観測、データを解析した結果、地球からはるか遠くに(したがってはるか昔に)多数のブラックホールが存在する証拠 が見つかった。

 宇宙の最深部の観測は45日間に及び、X線スペクトルの観測としては最長記録である。しかし、当初は有力な証拠を発見できなかった。その後、チャンドラの撮影画像が蓄積され、データ間の相関関係も明らかになり、かすかなX線放射を発見した。

 このX線が地球に到達するまでには少なくとも130億年を費やしており、放射源は宇宙最初期に形成された超大質量ブラックホールと推測されている。大多数の質量は、太陽の10万~100万倍に達する。

 研究チームのリーダーを務めたハワイ大学の宇宙物理学者エゼキエル・トライスター(Ezequiel Treister)氏は次のように話す。「観測可能な超大質量ブラックホールでは最も古い可能性が高い。おそらく、宇宙の最初期に形成されたのだろう」。

 X線観測では存在が確実視されたブラックホールを確認するため、トライスター氏らは「HUDF=ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」の可視光・ 遠赤外線データを利用した。HUDFは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡が2003年に探査した、およそ130億年前の銀河が含まれる宇宙の最深部である。

 光の速度は有限で、遠方の天体ほど光が地球へ到達するまでに時間がかかり、地球から見れば若い頃の姿となる。逆に、誕生から137億5000万年経過した宇宙では、HUDFの銀河は限りなく古いことになる。

 研究チームは、ハッブルが既に撮影した領域をチャンドラでX線観測し、可視光画像の上にX線データを重ね合わせた。X線だけでは銀河内にブラックホール が存在する手掛かりは発見できなかったが、可視光と組み合わせると全体の約30%、197個の銀河でブラックホールの存在を示唆する結果が得られた。

 トライスター氏は、宇宙最初期のすべての銀河に、いまだ検出されていない超大質量ブラックホールが存在するのではないかと考えている。

 ただし、研究チームが観測したほとんどのX線放射は、恒星質量のブラックホールより高エネルギーだった。チームでは、超大質量ブラックホールを厚い物質 層が取り巻いているため、エネルギーが非常に高いX線しか外部に放出されないと推測している。「いままで“隠れて”いたのは、大量のガスやちりがすべてを 覆い尽くしているからだろう」とトライスター氏は述べる。

 同氏は今後、さらに遠くの宇宙領域から放射されるX線をより長い時間をかけて観測する計画だという。実現すれば、宇宙最初期の超大質量ブラックホールを大量に発見できる可能性があり、宇宙のより大きな謎に迫ることができるだろう。

「銀河の形成と超大質量ブラックホールは密接に関係している。しかし、どの程度の影響を与えあっているのかは不明だ。さらに過去の宇宙を観測すれば、何らかの手掛かりを得られるのではないか」とトライスター氏は期待している。

 今回の研究結果は、6月16日発行の「Nature」誌に掲載されている。

Dave Mosher for National Geographic News



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