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慶良間諸島の集団自決は日本軍の命令~米軍公文書発見 2006/10/07

2007年06月23日 22時20分27秒 | 沖縄の旅
右傾化が進む日本社会で、歴史的な事実までも捏造されていることが分かった。3日付け『沖縄タイムス』朝刊一面トップ記事は、関東学院大学の林博史教授がアメリカ公文書館で発見した『慶良間列島作戦報告書』で、日本軍が住民に対して「集団自決」を命令していた、と報道している。

 沖縄戦では慶良間諸島や伊江島などで集団自決は確かにあり、その事実は否定できない。住民を自決に追い込んだことが問題なのに、最近は「軍命があったかどうか」だけを議論し、その結果「軍命否定」の動きだけが活発化していた。

 慶良間諸島は渡嘉敷村と座間味村を構成する大小20の島々からなる。沖縄戦では米軍が最初に上陸(1945年3月26日)したのが慶良間諸島である。集団自決は座間味村で358人、渡嘉敷村で329人と記録されている(『沖縄大百科事典』)。

 林教授が発見した資料(報道)によると、慶良間の住民を男女別に収容し尋問した結果として「3月21日に、日本兵が慶留間(けるま)の島民に対して山中に隠れ、米軍が上陸してきた時には自決せよと命じたと繰り返し語っている」と記述されている。

 米軍は慶良間諸島を占領したあと、「米国海軍軍政府布告第1号」(ニミッツ布告)を公布し、”南西諸島における最高行政の責任は占領軍司令長官にある” として、日本のすべての権限の停止を宣言している。占領政策のスタートだ。その米軍が行った調査だけに貴重な記録である。

 日本軍の命令を否定する作家らは「軍命の証拠がない」ことを根拠にし、沖縄タイムス社発行の『鉄の暴風』は単なる伝聞に過ぎないと断定。その記述を引用した沖縄戦関係の書籍を間違いと糾弾していた。

 作家の曽野綾子は『日本軍の住民自決命令はなかった 集団自決の真実』を著し、その帯には「大江健三郎氏の『沖縄ノート』のウソ」と批判している。『沖縄ノート』は『鉄の暴風』からの引用で確実な証拠はない、としている。

 小さな島でお互いに肩を寄せ合って生活しいる住民は戦後、多くを語らなかった。それだけに「軍の命令はなかった」という言葉だけが勢いよく語られることになった。今回の資料発見は右傾化していく日本社会にも一石を投じる、貴重なものである。

(比嘉康文)


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