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沖縄 自決しなかった祖父 慰霊の日に13歳孫が詩を朗読

2007年06月25日 12時32分08秒 | 沖縄の旅
6月23日17時31分配信 毎日新聞

沖縄 自決しなかった祖父 慰霊の日に13歳孫が詩を朗読

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式典での朗読が決まった日、匹田さんは「祖父の体験を語り継ぎたい」と話した=那覇市国場の沖縄尚学付属中で、野田武撮影
 沖縄戦戦没者慰霊の日の23日、沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和の礎(いしじ)では、早朝から遺族たちが次々に訪れ、祈りをささげた。だが「鉄の暴風」から62年を経て、地獄絵さながらだった集団自決を巡って高校の歴史教科書が書き換えられ、波紋が広がる。安倍晋三首相も参列した戦没者追悼式では、集団自決があった慶良間列島の座間味(ざまみ)島で米軍に投降した「14歳の祖父」に寄り添い、13歳の孫が平和を誓う詩「写真の中の少年」を読み上げた。
 同県浦添市に住む沖縄尚学高付中2年、匹田(ひきた)崇一朗さん(13)。小学5年だった04年、母が「おじいさんが写ってるよ」と一冊の写真集を見せてくれた。そこには、05年に76歳で亡くなった祖父、松本忠芳さんの若い日の姿があった。
 1945年3月27日、投降を促され、当時14歳の忠芳さんが母親や親せきら二十数人とともにガマ(壕(ごう))を出た直後に米軍が撮影した1枚。匹田さんは忠芳さんがぽつりぽつりと語る言葉に耳を傾けた。
 詩は、祖父の思いを紡ぐ。
 <やっとの思いで入れてもらった親戚(しんせき)の防空壕 泣きじゃくる赤ん坊の口をふさぎ 息を殺して奴(やつ)の通り過ぎるのを祈った>
 モノクロ写真に写る14歳の祖父は、恐怖と絶望感に震えてうつむいていた。想像もしなかった、62年前に祖父に起きた出来事。当時の祖父に近い年齢になった今年「詩に書きたい」と思った。
 <壕の外でアメリカ兵の声 『出て来い』と叫んでいる 出て行くと殺される 『もう終わりだ』 少年は心の中でつぶやいた>
 住民は「捕虜になったら男は八つ裂きに、女は強姦(ごうかん)される」と聞かされていた。狭い島に逃げ場はなく、米軍上陸後、住民約800人のうち200人近くが自ら、そして家族の命を絶ったとされる。忠芳さんは「このままいても殺されるだけ」と先頭に立って出ていった母に命を救われた。
 <だから今の僕がいる 命のリレーは 祖父から母へ 母から僕へとつながった>
 「戦争は怖い。でも、自分の命を守るために皆必死で生きていた」。忠芳さんの体験談から感じた匹田さんは、詩の最後をこう結んだ。
 <少年から聞いたあの忌まわしい戦争の話を 風化させることなく 語り継いでいこう>
【上野央絵】


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