毎日新聞 2012年10月04日 東京朝刊
約10万年周期で起きており、年平均気温が今より約8度低い「氷期」を起こした新たな仕組みを、国立極 地研究所と北海道大のチームが南極の氷の分析で明らかにした。硫酸塩という微粒子(エアロゾル)が大気中で増えて雲ができやすくなり、太陽光が遮られたと いう。地球温暖化の予測精度向上につながる成果で、4日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
南極大陸にある日本の「ドームふじ基地」(標高3810メートル)で、約30万年前までの大気を閉じ込 めた氷を掘削。氷を、ドライアイスのように気体に昇華させて硫酸塩をフィルターでこし取る装置を開発して含有量を調べ、そこから各年代での大気中の存在量 を導いた。その結果、氷期での硫酸塩は、氷期以外の暖かい時期「間氷期」より多く、硫酸塩の増加による気温低下は、8度のうち最大で5度になると試算した。
硫酸塩は、さまざまな産業活動で生じる大気汚染物質。温暖化現象をめぐっては、二酸化炭素濃度が上がっ ているのに気温が下がった時期がある。原因として硫酸塩が指摘されたが、影響の程度は謎だった。北大の飯塚芳徳・助教は「気温と硫酸塩の関係が分かり、温 暖化を高精度に予測できるようになる」と話す。【野田武】