経済産業省原子力安全・保安院による国主催原発シンポジウムへの動員など「やらせ」問題で、事実関係を調べる第三者委員会は30日、中間報告をま とめ、東北電力のシンポジウムでも新たに保安院の関与が疑われる事案があったと指摘した。また、九州、四国、中部の3電力が、それぞれ開催したシンポジウ ムで、当時の保安院職員が電力会社に動員要請などをしたと認めたケースについて、報告書は事実認定した。
調査対象は、過去5年間に開催された国主催のシンポジウムや住民説明会を中心とした計41件。調査は、▽開催当時、実施に関与した資源エネルギー 庁や保安院の職員、電力会社社員など延べ約70人へのヒアリング▽関連文書や電子媒体の精査▽電力会社への追加調査▽経産省職員へのアンケート--などの 方法で実施した。
中間報告で新たに発覚した東北電のケースは、06年10月28、29日に宮城県石巻市と女川町で開かれた女川原発の耐震安全性を巡る住民説明会 で、保安院職員が東北電に動員を要請した疑い。また、九電をめぐっては、昨年5月の川内原発3号機増設計画に関する第1次公開ヒアリングや今年6月の玄海 原発の運転再開に向けた県民向け説明番組で、エネ庁が再開に向けた意思表明などを要請したと報道されたが、報告書はこれらを追認した。
一方、九電など3電力で「やらせ」を事実認定した3ケースについては、特に詳細を報告した。九電については、05年10月の玄海原発3号機のプル サーマル計画のシンポで、九電担当者が、当時の原子力安全広報課長と事前に打ち合わせ「動員、さくら質問等、“とり注(取り扱い注意)”でお願いする」と 記載したメモを作成したと指摘。四国電力については、06年6月の伊方原発のシンポで、担当者が同課長との打ち合わせ後「シンポのキーは、動員を確保する こと、賛成派がうまく発言すること、反対派の怒号をどう抑えるか」とのメモを作成していた。さらに07年8月の中部電浜岡原発のシンポでは、同課職員が、 反対派に偏らないよう中部電側で質問文を作成して参加者に質問を依頼するよう要請したという。
委員長の大泉隆史弁護士は、この保安院の関与を認定した、この3件について「問題がある」と強調。国が関与した「疑い」のある事案や、その他のシ ンポなどと合わせて調査を継続する姿勢を示した。いずれの事案も電力会社からの報告で判明。経産省職員へのヒアリングやアンケートで具体的な情報提供がな いことから、省内の組織的な隠蔽の可能性がないか、さらに慎重な調査が求められそうだ。同委員会は再発防止策も協議し、9月末をメドに最終報告を行う。 【和田憲二、小倉祥徳】