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森羅万象 ~ 歩く印象派

■原発より危ない、動かしている連中

2011年08月30日 21時16分56秒 | 読んだ本・おすすめ本・映画・TV評

表紙画像 著者:飯田哲也、佐藤栄佐久、河野太郎  出版社:NHK出版 価格:¥ 1,050

■原発より危ない、動かしている連中

 猛暑が続く。今年の夏は電力不足で大パニックになるだろ うとか、熱中症で死人がたくさん出るだろうといわれたけれども、とりあえず本稿執筆時点(8月15日)では、大きな問題はない。原発を止めると産業が止ま る、日本経済はダメになるぞ、といった脅迫も眉につばして聞くようにしたい。
 原発なんて、なければないで済むもの。そして、誰も近くに住みたい とは思わないもの。それなのに人口減少と財政難に苦しむ地方を、札束で頬を張るようにして受け容れさせてきた。その挙げ句の果ての3・11なのに、九州電 力&佐賀県知事による「やらせ」事件のようなことが起きる。原発利権って、よほどオイシイものなのだろう。
 飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎の『「原子力ムラ」を超えて』は、日本の原子力政策・原子力行政が、いかに歪んだ構造にあるのかを明かす。副題は「ポスト福島のエネルギー政策」。
  飯田哲也は大学と大学院で核工学を専攻し、大手鉄鋼メーカーで原発にかかわった。現在は環境エネルギー政策研究所所長。佐藤栄佐久は前福島県知事。原発問 題で政府と対立したため、でっち上げの汚職事件で逮捕された(と私は考えている)。そして河野太郎は自民党代議士。佐藤も河野も、自民党政治のなんたるか を肌身で知っている人である。
 実際に原発を動かしているのは、電力会社と原発のハードを作る電機メーカーである。そこでは作って動かすことが最 優先される。専門知識のない役人や政治家は追認するだけ。学者たちもそこにからめとられている。安全性その他をチェックする機関もない。原発は危ないもの だけど、原発を動かしている連中はもっと危ない。
 かつて石炭から石油へのエネルギー転換では、たくさんの人がひどい目にあった。石油から原子力へでは、後世にまで影響を及ぼすひどい事故を起こした。大事なことを政治家や役人や学者や企業にまかせるのはもうよそう。

 

朝日COM 20110830