
アカデミー賞をはじめ、様々な賞を獲得したこの作品。
見に行かなくっちゃ~と思いつつ、
バイオレンスと殺し屋さんを強調した前宣伝と、
公開当初旅行していたこともあって行きそびれておりました。
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
ノーカントリー NO COUNTRY FOR OLD MEN 2008
?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!

見渡す限り乾燥した荒野、
荒涼たるテキサス、
これほどまでに音楽がないと、
風の流れる音さえこれから始まるドラマを予感させる効果音になる。
全く音楽のない映画って初めてだと思うけれど、まるで現場にいるかのような臨場感がある。
時代は1980年代、
アメリカ経済は戦後最悪、高インフレと高失業、
レーガン政権は行政サービスや社会保障を民間に開放しできるだけ削減、効率を優先させる「小さな政府」の立場を取り、国家によるサービスの縮小と、大幅な規制緩和、市場原理主義の重視を行なった。
堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んだが、この頃から現在に至る格差の増大が始まったらしい。
ベトナム戦争を境にアメリカは変わった。
絵に描いたような現実味のないホームドラマや明るく甘い恋愛映画が影をひそめ、
麻薬・暴力・性が露骨に描かれ、言葉も汚くなっていく。
社会構造、家族形態、犯罪さえも複雑で残忍なものへと変わっていく。

モスはベトナム帰還兵、かなりサバイバルに慣れている。
ハンティング中、麻薬取引に失敗した密輸取引業者同士の銃撃が終わった後の壮絶な場面に遭遇。
普通なら恐ろしくなって、即警察に通報するでしょうに・・・
金がないってことは逃げた奴がいる→血痕から手負いと判断→炎天下木陰にいるはず
という推理で逃げた男を発見、200万ドルの入ったスーツケースを持ち逃げする。
この人、ただ者じゃ~ありません。
普通のおっちゃんにこんなことは出来ません。
届け出たら1割もらえたかも・・・アメリカにそんな制度はあるのかいな?
欲張らないでせめて10万ドル位にしておいたら良かったのに・・・
現場で水をくれと言っていた瀕死の男に、仏心を起こして水を運んでやったのが2つ目の失敗。
もし行かなければまんまとお金を手に入れられたかも。
発信機ったって、ある程度近寄らないと作動しないやつですもんね。
そんな彼の選択で、彼を取り巻く人々の人生が変わっていく。
「一つの発見が人生を変えることもあり、たった一つの失敗が人生をだめにすることもある。」
密輸組織が追跡に使うわんこの犬種は「ドゴ・アルヘンティーノ」でしょうか。
すんごい面構えで、「鉄砲いらずの猟犬」の異名をとる猪狩りなんかに使われるアルゼンチンの犬種のようです。

行く先々で出会う人々を無表情・無感情に殺す、殺し屋シガー。
今までどんな人生を送ってきたのかなどの情報は何もない。
彼の腕を疑い、別の殺し屋を雇った依頼主をも殺すって、一体何に突き動かされて殺人を犯すのか?
お金の為という訳でもなく、淡々と自分のルールに従って、モスを追い詰める。
武器も家畜を殺すのに使う特殊なもの。
これを見て、この武器を使う人なんていないでしょうね?怖っ!
時としてコイントスで人の命をもてあそぶ。
「人生一寸先は闇、何が起こるかわからない。」などと言われます。
彼の存在はそんな人間の存在としてのはかなさを思い知らせる死神のようなものかも。
この方結構律儀です。撃たれた血だらけのズボンを脱ぐのに、ビニールシート敷いたりなんかして・・・
殺し屋するにゃ、医学知識や技術も必要なんですね。自分で縫合してました。
病院行ったら足が付くものね。厳しい~。
そんな彼も、交差点で赤信号で突っ込んできた車にぶつかられ交通事故に遭う。
今まで真面目に生きてきた人にさえも、突然理由もなく悪夢のような出来事を起こしてきた加害者シガーでさえ、そんな悪夢の被害者になりうる。
誰にだってとんでもないことは起こりうるもんだ。
この傷(骨が飛び出してるって)も自分で何とかするのかいな?
ショーにでてくるカウボーイのような出で立ちのウッディー・ハレルソンは何だったのでしょう。
あれだけって?友情出演ってやつ?
それより、あれだけ派手にドンパチやって、近隣住人は出てこないのかしら?
怖くてカーテンの陰に隠れてるって?
保安官ベルは「昔はこんなひどい事件は起こらなかった。全く理解できない。」と嘆く。
いつの時代も、人は年をとると「昔はよかった」と懐かしむ。
年をとったという証拠かも?

ゴッドファーザーのビトとマイケルの違いのように、時代の変化で犯罪も変わった。
義理と人情の厚かったビトの時代、
麻薬取引が資金源になり仁義も何も無くなるマイケルの時代。
一見、モスとシガーの逃走・追跡バイオレンス劇のようで、
実は時代の変化と、簡単に変わってしまう人生の脆弱さをテーマにした映画なんじゃないでしょうか。
そんな時代の変化と人々の人生を見続け、何とかモスを救おうとする保安官ベル。
救えなかったという彼の無力感が、テキサスの荒涼とした風景と重なる。
「人間ってのは、奪われたものを取り戻そうとしてさらに失う。結局は出血を止めるしかない。」という
保安官ベルの叔父の言葉が深い。
パンフレットの隅っこに、タイトル「NO COUNTRY FOR OLD MEN」の意味を発見!
アイルランドの詩人イェイツの詩の引用で、
老いや死が避けられない現実であるということを意味しているそうです。
こういう解説がないと、詩全般に疎い私は理解に苦しみます。
原作は、ピューリッツァ賞受賞作家コーマック・マッカーシー。
含蓄のあるタイトルをお付けになります。
助演男優賞のハビエル・バルデムを始めて見たのはBS放送での「海を飛ぶ夢」。
不気味なオカッパ頭と言われてますが、懐かしのマッシュルームカットでは?
呼び方で随分イメージが変わりますね。
ジョス・ブローリンって始めて見たけれど、ジェームス・ブローリンの子供か?
クラーク・ゲーブルファンの私には、
「ゲーブルとロンバート」でゲーブルを演じてた人(似てない~と不満)として記憶に残っておりました。
バーバラ・ストライサンドと結婚したと知りびっくりしたのですが、そのブローリンの子供ですね。
お父さんの方がハンサム~。
ダイアン・レインの夫ですって~、またまたビックリ、
***** 今週 見た 映画 *****
4月1日 マイ・ブルーベリー・ナイツ
4月2日 ノーカントリー
見に行かなくっちゃ~と思いつつ、
バイオレンスと殺し屋さんを強調した前宣伝と、
公開当初旅行していたこともあって行きそびれておりました。
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
ノーカントリー NO COUNTRY FOR OLD MEN 2008
?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!

見渡す限り乾燥した荒野、
荒涼たるテキサス、
これほどまでに音楽がないと、
風の流れる音さえこれから始まるドラマを予感させる効果音になる。
全く音楽のない映画って初めてだと思うけれど、まるで現場にいるかのような臨場感がある。
時代は1980年代、
アメリカ経済は戦後最悪、高インフレと高失業、
レーガン政権は行政サービスや社会保障を民間に開放しできるだけ削減、効率を優先させる「小さな政府」の立場を取り、国家によるサービスの縮小と、大幅な規制緩和、市場原理主義の重視を行なった。
堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んだが、この頃から現在に至る格差の増大が始まったらしい。
ベトナム戦争を境にアメリカは変わった。
絵に描いたような現実味のないホームドラマや明るく甘い恋愛映画が影をひそめ、
麻薬・暴力・性が露骨に描かれ、言葉も汚くなっていく。
社会構造、家族形態、犯罪さえも複雑で残忍なものへと変わっていく。

モスはベトナム帰還兵、かなりサバイバルに慣れている。
ハンティング中、麻薬取引に失敗した密輸取引業者同士の銃撃が終わった後の壮絶な場面に遭遇。
普通なら恐ろしくなって、即警察に通報するでしょうに・・・
金がないってことは逃げた奴がいる→血痕から手負いと判断→炎天下木陰にいるはず
という推理で逃げた男を発見、200万ドルの入ったスーツケースを持ち逃げする。
この人、ただ者じゃ~ありません。
普通のおっちゃんにこんなことは出来ません。
届け出たら1割もらえたかも・・・アメリカにそんな制度はあるのかいな?
欲張らないでせめて10万ドル位にしておいたら良かったのに・・・
現場で水をくれと言っていた瀕死の男に、仏心を起こして水を運んでやったのが2つ目の失敗。
もし行かなければまんまとお金を手に入れられたかも。
発信機ったって、ある程度近寄らないと作動しないやつですもんね。
そんな彼の選択で、彼を取り巻く人々の人生が変わっていく。
「一つの発見が人生を変えることもあり、たった一つの失敗が人生をだめにすることもある。」
密輸組織が追跡に使うわんこの犬種は「ドゴ・アルヘンティーノ」でしょうか。
すんごい面構えで、「鉄砲いらずの猟犬」の異名をとる猪狩りなんかに使われるアルゼンチンの犬種のようです。

行く先々で出会う人々を無表情・無感情に殺す、殺し屋シガー。
今までどんな人生を送ってきたのかなどの情報は何もない。
彼の腕を疑い、別の殺し屋を雇った依頼主をも殺すって、一体何に突き動かされて殺人を犯すのか?
お金の為という訳でもなく、淡々と自分のルールに従って、モスを追い詰める。
武器も家畜を殺すのに使う特殊なもの。
これを見て、この武器を使う人なんていないでしょうね?怖っ!
時としてコイントスで人の命をもてあそぶ。
「人生一寸先は闇、何が起こるかわからない。」などと言われます。
彼の存在はそんな人間の存在としてのはかなさを思い知らせる死神のようなものかも。
この方結構律儀です。撃たれた血だらけのズボンを脱ぐのに、ビニールシート敷いたりなんかして・・・
殺し屋するにゃ、医学知識や技術も必要なんですね。自分で縫合してました。
病院行ったら足が付くものね。厳しい~。
そんな彼も、交差点で赤信号で突っ込んできた車にぶつかられ交通事故に遭う。
今まで真面目に生きてきた人にさえも、突然理由もなく悪夢のような出来事を起こしてきた加害者シガーでさえ、そんな悪夢の被害者になりうる。
誰にだってとんでもないことは起こりうるもんだ。
この傷(骨が飛び出してるって)も自分で何とかするのかいな?
ショーにでてくるカウボーイのような出で立ちのウッディー・ハレルソンは何だったのでしょう。
あれだけって?友情出演ってやつ?
それより、あれだけ派手にドンパチやって、近隣住人は出てこないのかしら?
怖くてカーテンの陰に隠れてるって?
保安官ベルは「昔はこんなひどい事件は起こらなかった。全く理解できない。」と嘆く。
いつの時代も、人は年をとると「昔はよかった」と懐かしむ。
年をとったという証拠かも?

ゴッドファーザーのビトとマイケルの違いのように、時代の変化で犯罪も変わった。
義理と人情の厚かったビトの時代、
麻薬取引が資金源になり仁義も何も無くなるマイケルの時代。
一見、モスとシガーの逃走・追跡バイオレンス劇のようで、
実は時代の変化と、簡単に変わってしまう人生の脆弱さをテーマにした映画なんじゃないでしょうか。
そんな時代の変化と人々の人生を見続け、何とかモスを救おうとする保安官ベル。
救えなかったという彼の無力感が、テキサスの荒涼とした風景と重なる。
「人間ってのは、奪われたものを取り戻そうとしてさらに失う。結局は出血を止めるしかない。」という
保安官ベルの叔父の言葉が深い。
パンフレットの隅っこに、タイトル「NO COUNTRY FOR OLD MEN」の意味を発見!
アイルランドの詩人イェイツの詩の引用で、
老いや死が避けられない現実であるということを意味しているそうです。
こういう解説がないと、詩全般に疎い私は理解に苦しみます。
原作は、ピューリッツァ賞受賞作家コーマック・マッカーシー。
含蓄のあるタイトルをお付けになります。
助演男優賞のハビエル・バルデムを始めて見たのはBS放送での「海を飛ぶ夢」。
不気味なオカッパ頭と言われてますが、懐かしのマッシュルームカットでは?
呼び方で随分イメージが変わりますね。
ジョス・ブローリンって始めて見たけれど、ジェームス・ブローリンの子供か?
クラーク・ゲーブルファンの私には、
「ゲーブルとロンバート」でゲーブルを演じてた人(似てない~と不満)として記憶に残っておりました。
バーバラ・ストライサンドと結婚したと知りびっくりしたのですが、そのブローリンの子供ですね。
お父さんの方がハンサム~。
ダイアン・レインの夫ですって~、またまたビックリ、

***** 今週 見た 映画 *****
4月1日 マイ・ブルーベリー・ナイツ
4月2日 ノーカントリー
ジョシュ・ブローリンのお父様のジェームズ・ブローリンは、これから公開されるリチャード・ギア主演の「ハンティング・パーティー」に出演していましたよ。年を取りましたがいい男でした。
TVキャスター役ですね。
もうご覧になったのですか?
事実に基づく社会派ドラマ、楽しみです。
私もお返しさせていただきました。
>パンフレットの隅っこに、タイトル「NO COUNTRY FOR OLD MAN」の意味を発見!
アイルランドの詩人イェイツの詩の引用で、
老いや死が避けられない現実であるということを意味しているそうです。
こういう解説がないと、詩全般に疎い私は理解に苦しみます。
そうなんですね。教えていただきありがとうございました。
またしてもコーエン兄弟の目の付け所に感服?
映画の中に結構詩が出てきますが、ネイティブはこのタイトルを聞いたらすぐわかるのでしょうかね?
TB、ありがとうございましたm(__)m
このアントン・シガーのその後の姿を見てみたいものです(笑)
何度かTBさせていただきましたが、同じgoo同士なのに残念ながら反映しませんでしたm(__)m
URLだけ置いて行きます。
http://blog.goo.ne.jp/nryoko1220/e/e3d7a0f1280f699266ec889d7c8ef1dc
お手数をおかけしました。
どうしてTB反映しないのでしょうか?
特に何も変更などしていないのですが・・・
これからもヨロシクお願いしま~す。
TB&コメントどうもです。なるほど避けられない死
ですか・・・・。確かにどんなかたちでさえ人間は死から避けられないものです。だけど非常なかたちで訪れる死は、分かっていても納得できないもんですよね。コインの裏・表で、シガーがやっちゃうのを決めるというのもある意味異常?な気もするけれど。彼にとってはひとつのルールーなのでしょうね。こんな相手と遭遇したら、それこそ最悪の運命(>_<)
ハビエル・バルデムのあの声、話し方がいまだに
脳裏に焼きついています。こわっ~!ちなみに、ペネロペ・クルスとお付き合いされているそうです。
長々とコメント、失礼しましたm(__)m
こんな相手と遭遇したら・・・
不運では片付けられないですが、今の世の中こういうことありますよね。
「誰でもよかった」なんて事件の報道を見るとやりきれません。
この映画面白かったのですが難解。特に保安官絡みのセリフは難しくて…タイトルの意味もイマイチ分かっていない私です。
あと、私のブログへのジョシュ・ブローリンの解説ありがとうございました。
最近ジョシュ・ブローリンはたくさんの映画に出てきますね。
「グーニーズ」では現在の渋さは皆無なので、同じ人物とウィキで調べるまで気がつきませんでした。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
若い時を知らないので、渋くない姿ちょっと想像つきません。
父のJ・ブローリンはゲーブルには似てなかったけれど、息子よりハンサムでしたよ。
「グーニーズ」見直さなくっちゃ。