映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

卒業の朝  EMPEROR'S CLUB

2013-02-05 | 映画 さ行
前回の「塀の中のジュリアス・シーザー」でご紹介した2002年の「卒業の朝」。
非常にいい映画なので、ちゃんとアップしときます。
原作はアメリカの作家で医者のイーサン・ケイニンの短編小説『宮殿泥棒』。
舞台はアメリカ東部の私立男子校(英国流に言うならパブリックスクール)。

大阪の府立共学校(元は男子校でしたが)出身の私には、私立男子校の雰囲気というのは
想像の域を超えておりますが、昔から「チップス先生さようなら」や「いまを生きる」など
私立男子校を舞台にした映画は多いですね。


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      卒業の朝  Emperor’s  Club    2002

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 < ストーリー >
引退し余生を送っていた元教師ハンダートのもとに、大企業のトップとなった卒業生ベルから
同窓会の誘いが届く。25年ぶりに皆が集まった所で、ベルはかつて苦杯をなめた伝統行事のリマッチを
開催したいと申し出る。25年前、伝統行事「ジュリアス・シーザー・コンテスト」でベルはある事件を
起こし、ハンダートには忘れがたい苦い思い出が残っていた。
全寮制の名門男子校でローマ史を教えるハンダートは、歴史を通して生徒の人間形成を行おうと
情熱を注いでいた。素直で真面目な生徒達は切磋琢磨し彼の熱意に応えていたが、上院議員の
息子ベルの転入で状況は一変する。
何かとハンダートに反抗し、他の生徒にまで悪い影響を及ぼすようになベル。
そこで負けず嫌いの性格を刺激し勉学に向けようと、コンテスト出場を目指すよう励ますが、
ベルに甘い点数をつけてしまう。コンテストでベルは何をしたのか? リマッチでの結果は?


1976年のアメリカ東部男子私立高校「聖ベネディクト」を舞台に、
教育とは、教師とは、美徳・信念とは、正しく生きるとはなど多くのテーマを盛り込んだ秀作です。
学生時代「歴史」とは過去の出来事を覚える記憶教科で、考えたり議論するという意識は薄かった
のですが、本作のハンダート先生の授業を見て、認識を新たにしました。

この映画にはギリシャ・ローマの偉人たちの含蓄ある言葉が溢れています。
学校のモットー「始めの一歩が終わりを決める」に始まり「偉大なる先人の歩んだ道を歩め」
「世の中に貢献しない野心や征服には意味が無い。社会貢献がなければ勝者になっても
歴史に名前を残すことはできない」、
「重要なのはただ生きるのではなく、正しく生きるということ」
「歴史を学ばぬ者は永遠に子供である」 等々。
少々耳が痛いですが、生徒たちはギリシャ・ローマの古代史を通して、善と悪、潔く正しく生きること、
社会貢献などについて学んでいきます。

冒頭から生徒の心を掴み尊敬を集める教師は、一人の転校生の登場でその力量を試される。
どちらに軍配が上がるか他の生徒達が見守る中、生き詰まる様な二人のやりとり。
最大のテーマは二人の価値観の対立です。
過程に重きを置くか、結果を重視するか。
たとえ勝利することができなくても正しく、潔く生きることが大切だと説く教師と、
結果が総てで手段を選ばぬ生徒との戦いです。
シェークスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」で、シーザーと共にアントニウスを共に殺害するか
どうかで議論するブルータスとカシウス。
結果的にアントニウスに殺されるブルータスを「先に殺しておけば皇帝になれたのに、殺らなかったのは
腰抜けだからだ」と言い放つ生徒に、殺人という行為は同じでもシーザーの暗殺はローマ共和制の未来のためで、アントニウスの殺害はただの殺戮でしかないというくだりは、ソクラテスの「正しく生きる」
ということの意味を強く訴えている。
年に一度行なわれる「ジュリアス・シーザー」コンテストに出場するという目標に向かって
一度は真面目に勉強を始めた生徒に、教師としての喜びを感じ、成績に手心を加えてしまったことで
教師の苦悩が始まる。その上コンテストで驚きの手痛いしっぺ返しをくう。
カンニングを暴いておけば生徒の未来は変わっていたのか?
上院議員を父に持つ生徒の糾弾を校長に阻まれた教師。
クラスで正義を説く教師も、父を恐れて不正を見逃したと生徒は感じる。

後味の悪い複雑な思いを抱えたまま、25年の時が流れ、
件の生徒が各界で活躍している生徒たちと引退している教師を担ぎ出し、ある下心を持って
シーザーコンテストのリマッチを主催する。
ここでのあっと驚く結末は・・・映画を見てのお楽しみ~。

最後の対決での教師の言葉が胸を突く。
「誰しも、いずれ鏡に映る自分自身を見つめなければならない時が来る。自分の真の姿をだ。」
他人は騙せても自分を欺くことはできないというメッセージ。
一人の生徒を導くことはできなかったけれど、他の生徒達の姿に「希望」を見つけ、
再度教壇に立つことにする教師。

教育って・・・難しいねぇ。
いま話題の体罰指導じゃないけれど、教育の場で間違ったことを刷り込まれると
それを良しと思ってしまいますからね。

「いまを生きる」もそうでしたが、父と息子の葛藤もこの映画の鍵になっています。


英国やアメリカのエリートたちはこういう教育を受けているんでしょうか?
古代ギリシャやローマの英知は素晴らしい。
あの時代から2000数百年をへて、人間は果たして進歩しているのかしら?
日本人の倫理観の支えは儒教?石門心学?それとも武士道?


教師を演じるのはケヴィン・クライン。
生徒を演じたのは、今を時めく若手俳優、「イントゥ・ザ・ワイルド」のエミール・ハーシュ、
LOOPER」のポール・ダノ、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ、
TVドラマ「グッド・ワイフ」のジョシュ・チャールズら。
皆な主役・準主役級に成長したって、すごいね。



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