仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

生きづらさの民俗学④

2024年08月29日 | 現代の病理
『生きづらさの民俗学――日常の中の差別・排除を捉える』(2023/11/4・及川祥平編集, 著,川松あかり編集, 著,辻元侑生編集, 著)からの転載です。

〈わたし〉自身の「生きづらさ」を認めることは、〈わかし〉の弱さや負けを認めることでも、〈わかし〉の生きづらさを他の誰かのせいにすることでもなく、〈わたし〉自身が身につけさせられてきた“普通”が<わたし>と同時に<わたし>以外の様々に異なる「生きづらさ」を抱えた人びとを疎外する可能性に気が付くことである。そしてそのとき、〈わたし〉の「生きづらさ」は、たくさんの他者とつながっていく結び目となりうるのである。
 〈わたし〉の「生きづらさ」やあの人の「生きづらさ」の背景に何かあるのか。その背景にある構造的な問題や、わたしたちの中に染みついた“普通”や当たり前、良いものや悪いものへの感性によって、最も苛烈に生きることを脅かされているのは誰だろうか。そのように考えていくことができれば、「生きづらさ」は、差別や排除をめぐる問題を、〈わたし〉自身の主観的な感覚から問い始めながら、社会問題への責任ある認識と応答につないでいく、足掛かりになるのである。
 本書は、多様な人びとが被る「生きづらさ」と「差別」について紹介していく。それが読行のみなさんにとって<わたし>自身の「生きづらさ」を認め、〈わたし〉自身が他行にもたらす「生きづらさ」を自覚して、それらを多様な人びとと共有したり、一緒になって収り除いたり、息や苦しさから解放されたりする助けになることを願っている。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 現代社会をめぐる状況 | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

現代の病理」カテゴリの最新記事