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男尊女卑という病

2019年06月05日 | 現代の病理
『~という病』の本は、積極的借りて読んでいます。『男尊女卑という病』 (片田 珠美著・幻冬舎新書)は、際立った論説はありませんが、「草食系男子」の記述は、初めて接しました。記述の論説が全てだとは思いませんが、考えるヒントにはなります。以下転載します。

草食系男子の、女性への関心はどこへ消えたか

 若い女性が保守化する一方で、「草食化」する若い男性が増えている。
 2006年頃から注目され始めた「草食(系)男子」は、今や少数派とは言えないようだ。「出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所、2010年)によると、独身男性(18~34歳)の約61%に交際相手がいないという。交際相手もおらず、「異性との交際を望んでいない未婚者」の割合は、27・6%にもなるらしい。
 こういう男性は、ある意味、進化した特別種のようにも見える。女性を見下すとか対等に扱うとか、そういった話以前に、彼らは女性に対する関心が低い。異性と交際し、結婚し、自分の子孫を残すことにも淡白だ。
 彼らはある意味、自分自身にしか興味がない。たとえば、すごくきれい好きだったり、部屋を整理整頓していたり、自分の空間に他人が入ってくるのを嫌がったりする。稼いだお金は、自分の趣味や遊びにすべて使いたいと思っている。性欲を満たしたい時は、風俗に行けば十分だと考えている人も少なくないだろう。
 このような草食系男子の心理の根底には、何があるのか。女性への関心を失い、子孫を残そうという意志も希薄な若い男性が、最近なぜ増えたのだろうか。
 おそらくそこには、人間が基本的に持っていると言われる二つの「欲動」が関係していると思われる。
 フロイトによれば、人間には基本的に二つの「欲動」がある。「性欲動」と「自己保存欲動」だ。平たく言えば、「性欲動」は子孫を残したいという欲望、「自己保存欲勣」は自分が生き延びたいという欲望につながる。
 基本的に、この二つの「欲動」が両立していれば問題ない。しかし両立できない場合も出てくる。たとえば、少ない食料を分配する際、自分の取り分を多くしないと生き延びることができないのなら、子孫はいないほうがいい。だから「自己保存欲動」が強くなると、人間は「性欲動」、つまり子孫を残す方向に向かわなくなると考えられている。
 では草食系の男性の場合はどうか。
 今の若い男性は、生命の危機にさらされているわけではないが、やはり経済的な問題から、ある種の追いつめられ感や、それに近いものを感じているのかもしれない。正社員で働いていても給料はそれほど高くない。昔のように、勤続年数が長くなるほど給料が上がる保証もない。そのうえ、いつリストラ対象になるかわからないし、会社自体が倒産するかもしれない。
 非正規雇用なら、だいたい給料は正規雇用の半分以下、年収200万円程度と言われている。これでは、自分の生活のために使えるお金もほとんどないだろう。
 そういう状態なのに、女性と付き合おうとすれば、越えなければならないハードルがいくつもある。好きになった女性に優しくアプローチすることに始まり、彼女が喜ぶプレゼントやデートコースを用意しなければならない。費用は男性が持つのが基本である。 しかも、セックスに至るまでにはいくつもの手続きがいる。万一、断られれば自分が深く傷つく。交際が発展し、うまく結婚までこぎつけても、子供ができれば生活費が増えるし、教育費もかかる。そうすると、自分の趣味に使えるお金が減ってしまう。
 こうした現実世界をキツいと感じて、自分が生き延びる道だけを第一に考えようとする男性が、草食系になっていくのではないだろうか。そちらに割く時間とエネルギーがあるなら、自分のために使いたいというわけである。
 もしかしたら、彼らはステディな関係で誰かと一緒に暮らすのは、お金もストレスもかかりすぎると感じていて「性欲動」より「自己保存欲動」が勝ってしまうのかもしれない。
(以上)

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