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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

「いいえ」の語源

2016年05月04日 | 日記
『日本語語源詮索辞典』(武光誠)は、読み物としても興味深い本です。

その本の中から一つ紹介します。

いいえ

 現在では、「はい」と「いいえ」が、応諾と拒否を表すもっとも一般的な言いまわしになっている。「はい」の語源については、後で述べよう。
「いな」か訛って「いえ」になり、それかさらに「いいえ」になった。拒否を表す古代語の「いな」には、ふつう「否」の宇があてられる。

  否と言へど強(し)ふる志斐(しひ)のが強(しい)語り
    このごろ聞かずて朕(われ)恋ひにけり 

 否と言えご語れと詔(の)らせこそ
    志斐いは奏(もお)せ強い語りと言う

『万葉集』に出てくる天皇と語部(かたりべ)の老女との問答の和歌である。若い天皇の教育のために昔話をする老女の話は、うるさいようでも、聞かないでいると聞きたくなるというのだ。

もともと古代語では『な』の一音で否定を表した。「なかれ」「なし」といった語はそこから派生している。「いな」も、1な」にひびきを整える「い」を付けたものだ。
 「魚を奉うれ」「な」
ではいかにも不愛想だ。
「魚を奉うれ」「いな」
とする方かよい。
 「悲しむな」より「悲しむなかれ」が優しく聞こえる。もっとも「悲しむな」「泣くな」という表現は現代人も用いるが。
 「いな」という応答が、いかにものんびりしたものなので、中世の武家社会でそれが、より歯切れの良い「いや」に変わった。「INA」が「IYA」になったわけだが、現在の京都弁でも「NA」が「NYA」に聞こえることがある。否は「INYA」でその「Nにが落ちて[IYA]になったのだ。
 「いや」という響きはきつい。そこで、江戸時代にあいまいに「いや」と言う「いえ」の語が生まれた。本当に嫌な時は大きな声で「IYA」と言い、いったん断るが、相手がもう少し譲歩するならば考えても良いと思えば。「IYE」と答える。そんなかけひきの言葉だった。… 「いえ」をさらに柔らかく、「いー」とのばす風智かできて「いいえ」になる。(以上)

「はい」は残念ながら掲載されていません。「はい」は、イエスの訳語とされますが、本来、「はい」は、「拝」で拝見、拝聴など、そのまま受け入れるという語であると法話本で読んだことがあります。だから相違する場合も「はい、それは違います」などという。

その知識の前提があったので「いいえ」に興味をもったのでした。
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