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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

存続か消滅か―人口減少における宗教の戦略①

2024年01月14日 | 都市開教

『宗教・エスニシティ』(岩波講座 社会学・2023/10/18・北田暁大,岸政彦,筒井淳也,丸山里美,山根純佳編集)からの転載です。

 

目次

1 宗教と社会(宗教とウェルビーイング(櫻井義秀)
公共空間における宗教―フランスの事例を通して(伊達聖伸)
日本人の宗教性を測る(横井桃子)
地域福祉と宗教(板井正斉)
存続か消滅か―人口減少における宗教の戦略(高瀬顕功))
2 日本社会とエスニシティ(多文化主義/多文化共生の変容とオルタナティブの模索(塩原良和)
現代日本における移民女性の配置の変容と社会的再生産の困難(〓谷幸)
新しい権力エリートの創り出す再生産領域の国際分業―グローバル都市化をめざす国家戦略特区と外国人家事労働者(定松文)
最低賃金の労働市場における外国人労働者の出身国の変遷―静岡県焼津市の水産加工業の事例(高畑幸)
外国にルーツを持つ高校年齢層の教育と家庭背景の国籍別比較―国勢調査(一九八〇-二〇一五年)でみる長期推移(鍛治致)
難民の社会学―日本の難民受け入れと今後の展開に向けて(人見泰弘))
OVERVIEW(社会の中の宗教―新たな役割に注目して(稲場圭信)
日本の外国人・エスニシティの現状と課題(丹野清人)

(以上)

存続か消滅か―人口減少における宗教の戦略(高瀬顕功)からの限界集落の現況を転載します。

 

過疎とは、人口減少のために一定の生活水準を維持することが困難になった状態のことをいう。人口減少は、地域の高齢化や少子化によってもたらされる。

 大野晃は、巾町村の基礎的社会組織である集落を分類し、六五歳以上の高齢者が集落人口の半分を超え、冠婚葬祭をはじめとした水路の清掃や道路の草刈りなどの社会的共同生活の維持が困難な状態にある集落のことを「限界集落」と呼んだ(大野―2008.)。限界集落の手前には「準限界集落」という、社会的共同生活をなんとか維持しているものの、跡継ぎの確保が難しい状態の集落があるという。この限界を超えれば、人口戸数ゼロの「消滅集落」となる。

 また、増田寛也は、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計から、二〇一〇年から二〇四〇年までの間に、二〇-三九歳の若年女性人口が五割以下に減少する基礎自治体を「消滅可能性都市」と呼び、日本全体の四九・八%、八九六自治体がこれにあたるという(増田二〇一四)。

 この「増田レポート」をうけ、宗教社会学者の石井研士は、消滅可能性のある八九六自治体に位置する宗教法人を算出し、全宗教法人の二五・六%にあたる、六万二九七一法人が二〇四〇年までに消滅する可能性を指摘している(石井二〇一五)。石井は、消滅の可能性のある宗教法人を「限界宗教法人」と呼んでいるが、宗教系統別にみると、神道系が最も多く三万二八六七法人で令体の五二・二%を占める。ついで、仏教系が多く、二万四七七〇法人で三九・三%を占める。したがって、神道系と仏教系の宗教法人が「限界宗教法人」の九割以上を占めることになる。また、系統別全宗教法人に占める「限界宗教法人」の割合は、神道系が四〇.一%、仏教系が三二・七%、キリスト教系が二十四%、諸教が三〇・七%となっている。

 同様に、宗教学者の板井正斉は全国の宗教法人の住所データから神社と寺院の位置を抽出し、GIS(地理情報システム)を用いた分析を行った(板井二〇一九)。それによれば、消滅可能性都市内に位置する宗教法人は六万三三〇〇で、全法人数の三五・六%を占める。さらに、系統別全宗教法人のうち消滅可能性都市内に位置する神社の割合は、四〇・七%(三万一六九二社)、寺院の割合は、三二・九%(二万四〇九三力寺)であることが示されており、石井の「限界宗教法人」とほぼ同じ割合で、少なくない寺社が消滅可能にさらされていることをあきらかにした。(以上)

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