仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

見えないから、気づく

2024年01月12日 | 日記

『見えないから、気づく』 (ハヤカワ新書・2023/10/17・浅川智恵子著)、興味深く読みました。まずは本の説明から転載します。

 

IBMフェロー、日本科学未来館館長で、アクセシビリティ研究の第一人者が明かす
真のDE&I(多様性・公平性・包摂性)、そしてイノベーションの源泉とは

14歳のとき失明。ハンディキャップを越え、世界初の実用的な音声ブラウザ「ホームページ・リーダー」など数々のアクセシビリティ技術を開発し、日本人女性初の全米発明家殿堂入り。現在は日本科学未来館館長とIBMフェロー(最高位の技術職)を務める研究者が、自身の半生と発想の源泉を余すところなく語る。
「多様性のあるチームの方が、より多くのイノベーションを起こすことができることを身をもって体験した」という著者による、一人ひとりが個性を生かし、変化を恐れず前に進むためのメッセージ。

〈本書の内容より〉
視力と夢を失った日/目が見えなくてもプログラミングならできる!?/ホームページ・リーダーは世界に開かれた窓/研究、仕事、家庭の「三足のわらじ」/スマートフォンという革命/障害×テクノロジーが世界を動かす/不可能を可能にする“むちゃぶり力”/「なにかあったらどうするんだ症候群」との闘い/次世代のイノベーターへ/本当のDE & I(多様性・公平性・包摂性)へ向けて/変化とチャレンジで前へ

〈本書 第1章 失明によって奪われたもの、奪われないもの より抜粋〉
“人生では、何かを失う時が必ず訪れる。大切な人との別れだったり、親との別れであったり、仕事を失ったり。どう考えてもこれは乗り越えられないと思う時も、生きていればどこかでやってくる。私にもあった。私の場合はオリンピックの選手になりたいと思っていた小学生の頃、ほんのちょっとしたことがきっかけで夢と視力を完全に失った。今でもうまく語れないことがあるくらい、どう乗り越えたらよいのか本当にわからなかった。悩み続け、進んでいる方向が前かどうかもわからない状況で、とにかくがむしゃらに先に進んだ。やがて組織やさまざまな人々、そしてテクノロジーとの出会いが私に光をもたらし、障害は強みに変わっていった。途方に暮れて先が見えなかった私が、世界的IT企業のIBMで最高位の技術職であるフェローや日本科学未来館の館長といった大役を任せていただけるようになった。普通の私が歩んだ道のりと、テクノロジーで目指す未来についてお話ししたい。私と同じように喪失から立ち直ろうとしている誰かの心と未来に、小さな灯りがともることを願っている”(以上)

 

本を読んで一番、ワクワクした部分のみ転載します。

 

何より嬉しかったのは、目的とする仕事を行うために、遠回りをしなくて済むようになったことだ。音声出力は、あのオプタコンからの解放を意味した。それまで、仕事の上では本質ではないオプタコンに時問と労力をかけざるを得なかった。晴眼者(視覚に障害のない者)であれば全く必要のない作業だ。音声を使えば、すばやく必要な情報にアクセスできる。

音声出力という新しいテクノロジーによって、私はオプタコンにサヨナラを告げることができた。情報取得の手段が音声に変わることで、格段に作業効宰は上がった。テクノロジーはこれほどまでに、仕事を含めた生活の質を向Lさせてくれるものなのだ。

 技術開発における多様性の重要性を実感できたのも、この時期だった。ある会議で英語の点訳プログラムの話をした時のことだ。それまで、一事も発することがなかった会議の場で、コンピューターが障害者にもたらす恩恵について無我夢中で話したところ、参加者の一人から思いも寄らない言葉が返ってきた。

 

「目の見えないあなただからこそ、ユーザーの気持ちがわかるのですね」

 

 この瞬間、自分にとってハンディキャップとしか捉えていなかった視覚障害が、むしろ強みになることを知った。ずっと探し求めていた、自分にしかできない仕事に出会えたのだ。

それはハンディキャップだと思っていた視覚障害が、自分の中で強みというものに昇華した瞬問たった。

 (以上)

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