昨日の『暴走老人』のつづきです。
温かい家庭で育つと高齢期に強固な人間関係を形成する
家族と暮らしていても人づきあいが苦手な人もいますし、一人暮らしでも多くの人と仲良くされる人もおられます。
昨年、ハバード大学の研究者らが発表した研究によれば、温かい家庭で育った人は高齢期になって強固な人間関係を構築していることがわかりました。
それは、一九三八年か八十年も継続的に行われている研究のひとつです。ハバード大学の学生や近隣のボストン市の男性に聞き取り調杏をし、中年期になった頃に、どのくらい嫌な気持ちに対処できるかを調べたり、高齢期になった人には現在の人間関係などを尋ねたりしています。
かつては二十歳代でいまでは八十歳代になった人たちに聞き取り訓査をしたところ、経済状況がどうであるかにかかわらず、子どもの頃に温かい家庭的な環境で育った男性ほど、中年期にはより健康的な方法で嫌な気分に対処しており、高齢になっても妻と強い絆をもっていることがわかりました。
仕事の問題や経済的なこと、病気になったり、子どものことでストレスをかかえたり、離婚を経験するなど、さまざまなことがさるのに、子どものときの環境が高齢期にまで影響を及ぼすものか、と研究結果を疑問視する研究者もいます。
これらの要因を考慮したさらなる研究が必要ですが、その研究者らは子どものときに具体的に何かあったという個別のことではなく、愛情に満たされた家庭的な環境で育まれたということが、長期間にわたる影響を及ぼすのだと述べています。
二十年ほど前に行われた研究でも、子どものときに愛情を往がれて育った人は、三十五年後の心臓疾患やほかの慢性疾患にかかるリスクが少ないという報告もあります。
人懐っこい人と出会うと、その人はなんとなく家族から愛されていたような感じがしていましたが、子どもの頃の家庭環境が(もちろん、個人の性格も影響するでしょう、がSが)、高齢期になってどのように人とつきあえるか、ということにまで影響するのかもしれません。
「まあいいか」が幸せの秘訣
じつはどの国の高齢者であっても、ある一定の条件が整えば年齢を重ねるほど気持ちがポジティブになり、主観的な幸福感が高まることが知られています。
また、高齢者はポジティブな情報により注意を払うようになります。たとえば若齢者や中年者とくらべて、高齢者は一般的な画像の記憶成績が低下しますが、ポジティブな情動を想起させる慚愧の記憶よりも、ネガティブな画像の記憶成績のほうがさらに低下するのです(つまり嫌な写真は、より忘れやすいということです)。
また高齢者ではネガティブな画像よりもポジティブな画像を見たときのほうが、脳の情動の指令センターである扁桃体の活動が高まるので、神経活動のレベルでもポジティブな情動に関連する情報が処理されやすくなっていると考えられます。
さらに高齢者はネガティブな情動が生じるような状況を日常的に避ける傾向かおることが指摘されています。つまり、うまく嫌な情報を忘れたり、目にしないようにしたりしながら暮らすことで、毎日なんとなく幸せに暮らせるようになっているのです。(以上)