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革命期に生きた経済人

2011-04-24 22:59:18 | 読書/新聞/映画など
東大安田講堂を寄贈したことで知られる安田善次郎の伝記的小説を読みました。

渡辺房男『儲けすぎた男 小説安田善次郎』(文藝春秋、2010年7月30日、1600円+税)

富山の極貧の下級武士の家に生まれ、何度もつれもどされながら、このまま一生を終わっていいのかと19歳でついに江戸に脱出した安田善次郎は、丁稚奉公で働きずめのすえ、ちいさな両替商の店をもつ。

もちまえの才覚と寝食をわすれた商いで、わずかながらにも力を蓄え始めたときに明治維新に巻き込まれる。

一枚一文の寛永銭を一朱銀や百文の天保銭に両替してわずかな手数料を稼いでい安田善次郎は、幕府や新政府の通貨政策につぎつぎに巻き込まれ、逆にそれをチャンスとして巨額の富を短期間に築いていった。

幕府は、財政ひっ迫の中で、より小型の小判を発行して、その流通を善次郎など両替商におしつけた。新政府は、太政官札につづいて、円の明治通宝など紙幣を大量に流通させていく。

みるみる太政官札の価値が失われていくなかで、安田善次郎は、時代の流れの本質と根底の方向をみきわめて、大半の両替商たちが不安のなかで大勢にながされていくのと反対の行動を一貫してとり続け、巨額の富を築いていった。

駆けだしからわずかの期間に、三井とならぶ本両替商に加えられた。

国立銀行の設立が相次ぐときにも、善次郎は、慎重な姿勢をくずさず、小野組など巨大な力をもった本両替商の破たんや三井の苦境にも巻き込まれない。政府の政策がかわってから、銀行設立に動く。のちの富士銀行、現在のみずほ銀行の前身の安田銀行などを設立した。

そして、戦前の4大財閥、安田、三井、三菱、住友のひとつをつくり上げた。

時代の大転換期に、流れの本質を見抜きながら慎重にビジネスを組み立て、大きなチャンスにする人たちがいる。

晩年、安田善次郎は、東京・大阪を6時間でむすぶ弾丸鉄道を自力で建設する計画をすすめていたが、国有鉄道のライバルになることをおそれた政府が認可することはついになかった。





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