闘う建築家、安藤忠雄
安藤忠雄の建築にはじめて出会ったのは、もう10年以上も前の、瀬戸内海の直島でした。宿泊施設をともなう滞在型の美術館のオープンに招待されて、そのユニークな建築物に出会いました。
安藤忠雄著『建築家 安藤忠雄』新潮社、2008年10月25日、1900円+税
安藤忠雄の自伝です。
キーワードは、闘う建築家。自分の事務所を、「ゲリラの活動拠点」と呼ぶ。「小国の自立と人間の自由と平等という理想の実現のために、あくまで個を拠点にしながら、既成の社会と闘う人生を選んだチェ・ゲバラに強い影響をうけていた」のだ。67歳。
大学へ行くことなく、独学で建築家の道を一歩一歩たどっていった安藤忠雄にとって、建築家への道は、光と影の緊張にみちた道筋だった。
「既成のものを否定し、今に反逆するーーーーー。経済国ニッポンへとなし崩し的に進んでいく社会にあって、安保闘争にはじまる60年代には、それに抗って自分たちの人生を生きようという時代の精神が確かにあった。」彼の20代だ。
「そんな60年代の精神が、ある一瞬、世界中で共鳴しあって一つの大きな流れとなった。1968年におきた全世界的な革命運動である。」「若者たちの凄まじいエネルギーは、一瞬とはいえ、確かに時代を動かした。私たちの世代の社会意識、生き方はこのとき決定づけられたのではないだろうか。」ここに、闘う建築家、安藤忠雄の原点がある。
実質的なデビュー作は、三軒長屋の真ん中、間口2間16坪のコンクリートの箱の家だった。物議をかもした賛否両論のなかで、「都市ゲリラ住宅」をてがけていく。しだいに大邸宅も。地面に埋め込まれたような造形、コンクリートの打ちっぱなしのかたちも出来上がっていった。
1990年以降には、公共建築も増えてきた。小住宅から内外の都市へ。表参道ヒルズもそのひとつだ。都市に対して建築はいかにあるべきか、建築は都市になにができるのか。また、かずかずの商業建築にもとりくむ。
「見えてくるのが社会批評としての建築というテーマだ」「その場所にその時代にしかできない建築」「重要なのは、建築の背後にある意志の強さだ」
「人間が集まって生きるその場所が、商品として消費されるものであってはならない。」
「やはり建物はつくるより、育てるほうが難しい。」
そして、過疎の島を文化の島へとめざす直島の建築。「”命”ある箱をわたしはつくっていきたい」
さらに子供たちのための建築。「今の子供たちの最大の不幸は、日常に自分たちの意思でなにかができる、余白の時間と場所を持てないことだ」「人間本来の生命力に期待する」
環境問題にとりくむ、「海の森」。
伝統、文化、感性。「もっと自由に、もっと生の感覚を」
安藤忠雄はいう、「たいていは失敗に終わった。--そうして、小さな希望の光をつないで、必死に生きてきた」「無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う。」
安藤忠雄の建築にはじめて出会ったのは、もう10年以上も前の、瀬戸内海の直島でした。宿泊施設をともなう滞在型の美術館のオープンに招待されて、そのユニークな建築物に出会いました。
安藤忠雄著『建築家 安藤忠雄』新潮社、2008年10月25日、1900円+税
安藤忠雄の自伝です。
キーワードは、闘う建築家。自分の事務所を、「ゲリラの活動拠点」と呼ぶ。「小国の自立と人間の自由と平等という理想の実現のために、あくまで個を拠点にしながら、既成の社会と闘う人生を選んだチェ・ゲバラに強い影響をうけていた」のだ。67歳。
大学へ行くことなく、独学で建築家の道を一歩一歩たどっていった安藤忠雄にとって、建築家への道は、光と影の緊張にみちた道筋だった。
「既成のものを否定し、今に反逆するーーーーー。経済国ニッポンへとなし崩し的に進んでいく社会にあって、安保闘争にはじまる60年代には、それに抗って自分たちの人生を生きようという時代の精神が確かにあった。」彼の20代だ。
「そんな60年代の精神が、ある一瞬、世界中で共鳴しあって一つの大きな流れとなった。1968年におきた全世界的な革命運動である。」「若者たちの凄まじいエネルギーは、一瞬とはいえ、確かに時代を動かした。私たちの世代の社会意識、生き方はこのとき決定づけられたのではないだろうか。」ここに、闘う建築家、安藤忠雄の原点がある。
実質的なデビュー作は、三軒長屋の真ん中、間口2間16坪のコンクリートの箱の家だった。物議をかもした賛否両論のなかで、「都市ゲリラ住宅」をてがけていく。しだいに大邸宅も。地面に埋め込まれたような造形、コンクリートの打ちっぱなしのかたちも出来上がっていった。
1990年以降には、公共建築も増えてきた。小住宅から内外の都市へ。表参道ヒルズもそのひとつだ。都市に対して建築はいかにあるべきか、建築は都市になにができるのか。また、かずかずの商業建築にもとりくむ。
「見えてくるのが社会批評としての建築というテーマだ」「その場所にその時代にしかできない建築」「重要なのは、建築の背後にある意志の強さだ」
「人間が集まって生きるその場所が、商品として消費されるものであってはならない。」
「やはり建物はつくるより、育てるほうが難しい。」
そして、過疎の島を文化の島へとめざす直島の建築。「”命”ある箱をわたしはつくっていきたい」
さらに子供たちのための建築。「今の子供たちの最大の不幸は、日常に自分たちの意思でなにかができる、余白の時間と場所を持てないことだ」「人間本来の生命力に期待する」
環境問題にとりくむ、「海の森」。
伝統、文化、感性。「もっと自由に、もっと生の感覚を」
安藤忠雄はいう、「たいていは失敗に終わった。--そうして、小さな希望の光をつないで、必死に生きてきた」「無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う。」
芦屋にお住まいだそうで、革命思想とは裏腹な邸宅街にいらっしゃるので、壮年は穏やかに社会と同調されているのでしょうか。その反骨精神を表した斬新な建築デザインが現代の代表的モデルになりました。フランスのル・コルビジエがコンクリートの大聖堂を建てた、崇高なモダニズムと人間への限りない信頼が、安藤先生の作品やお言葉に垣間見れることに感動します。ネットラーニングも、教育界に緩やかかつ正当な革命を起こしていくことに期待しています!