いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

棚上げ論。 whereabouts of shelving theory

2013-06-06 19:36:03 | 日記
 (1)田中元首相と周恩来元首相とが日中国交正常化交渉の中で、尖閣諸島領有権問題で双方が立場を主張せずに次世代に結論を先送りする「棚上げ論(shelving theory)」があったということは、日本国内でまことしやかにかねてから語り継がれてきた。

 もちろんこういう結論のない外交上の話は当事者しか知らないことで、正式に確認された文献(documents)などに残っている話でもない。仮に話の中で確認があったとしても当事者が首相でいる間だけの話だ。

 (2)現在超党派訪中団の代表として中国を訪問中の野中広務元衆院議員で官房長官が、中国共産党常務委員との会談で当時田中首相から尖閣問題棚上げを日中双方が確認したと聞いたと指摘(報道)した問題で、直ちに日本政府は外相、官房長官が「党を離れた一個人の発言と思っている。現職の国会議員でもない。」(報道)と否定してみせた。その立場、権限もない野中さんからすれば、そういうことだ。

 (3)元自民党衆院議員で官房長官であった人がわざわざ中国に出向いての会談、記者会見で政府方針とは相反する外交方針を述べることは、事の真偽は別にしても国益に反する非常識な政治手法、判断と言わざるを得ず理解できない。

 民主主義国家日本では政治信条、理念は自由で、自分の知っている情報を信念にもとづいて発言することは自由だが、国内で根拠にもとづいて発言し一定の国民的理解も得ていない、しかも日中両国で最大の政治的懸案になっている外交問題について相手国の中国共産党幹部との会談で独断的に主張するなどとは、元政治家の見識を疑われることだ。
 
 (4)仮にそれが真実であったとしても(多分政府の見解より野中さんの話のほうが正直なのだろうが)確認する正式文献もない以上、国同士の話の中で主張する内容ではない。

 中国では盛んに中国寄りの発言、立場の元政治家を中国に招いて現地で自国に都合のいい従来の好意的な発言を引き出している。民主党政権初代首相として米国一辺倒から脱却するアジア共同体構想を主張した鳩山さんも議員辞職後中国に招かれて、尖閣諸島の領有権問題は日中間に外交問題として存在すると発言して話題(問題)になったことがある。

 (5)ともに日本政府の見解とは相容れない中国寄り(都合)の主張に沿った発言だ。
 尖閣問題「棚上げ論」については、冒頭に述べたとおり日本国内にもそういうことがあったとまことしやかに伝えられておりその論議はあった。

 当時の日中双方の首相同士の話であり、正式に文献化されて確認されていない以上真偽の確認のしようもないが、その形式からも日中間の外交方針を縛(しば)るものでもないレベルであることはあきらかだ。
 そういう内容を権限も立場もない中で日中公式会談で述べるなどとは意味も意義もない、外交問題、解決処理を複雑に利用されることの理不尽(unreasonableness)な行動、発言だ。

 (6)野中さんの自明な理不尽な発言の背景になにがあるのか、かっては同じ自民党ながら現政権に対する反目でもあるのか、尖閣諸島を実効支配しているのは日本であり、意図のわからない棚上げ論の相手の有利になる図式で日中間の問題を先送りしようと模索しているとすれば国益を損なって、とても後輩政治家に教訓、反省を与える良識ある責任ある行動でもなく理解できない発言である。

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