「夢売るふたり」 西川美和監督・脚本(「ゆれる」他)
松たかこ・阿部サダヲと、大好きな二人の共演とあれば見ないわけにいかない。
かなり愉しみにしていた。
仲の良い夫婦(松・阿部)が切り盛りしている居酒屋は活況に満ち、夫婦は活き活きと仕事している。が、突然の火災に見舞われ店を失ってしまう。
落ち込んで鬱々と過ごす夫に対し、健気に凹むことなく乗り越えようとする聡い妻。
ある日、夫の行きがかり上の浮気がバレて、これがきっかけで妻は再建の為の妙案を
思いつく。ここに辿り着くストーリー展開がいい。そして、この場面の松たか子の
したたかな動作にニヤリとしてしまう。殊に熱くなってきた湯船に水を入れようと
する夫に、蛇口を緩慢な足先の運びで遮る動作に嫉妬の凄さが表れる。
女を騙し大金を借りること。それが妻が考えた資金作りだった。
阿部サダオなんてこれ以上ないくらいに嵌まり役だ。人が良く、ちょっと卑屈で
正義感もそこそこあるが軽薄。もて顔ではないけど、嫌われ顔でもない。
女の自尊心をけして損なわず、嫌味なく同調してみせる。計算のできない男だから
憎めない。こんな男が弱っているときに現われたら傾いてしまう女を笑えない。
もう少しというところで夫は本気で恋をしてしまう。
聡い妻はすぐに気付くが口を閉ざす。その女のところに向かうであろう夫が乗った
自転車の後ろを哀しい目で追う妻。迷いつつ後ろ髪を引かれつつのらりくらりと
自転車を漕ぐ阿部サダヲと、実質去っていくであろう夫を見送る松たか子の場面の
表現が印象的だ。
惨めな感じがしないのは松たか子の良さだ。脚本上の役柄もあるがこの人が
演じてこその泥臭さのない賢さの勝った妻であった。
泣いてすがったり、喚きたてたり、可愛いフリをできない女。これが出来ていたら
或いは阿部夫は振り返り戻ったりもしたかも知れないが、だからこその松妻なのだ。
爽快なほどのしたたかさで計算した人生設計だったけれど、男の感情までは
どんな賢い妻でもコントロールできなかった。
結末はふたりの性格が象徴的に表現されている。
余談だが、「夢売るふたり」を見るつもりで出かけたら、映っていたのは
「最強のふたり」だったネットで予約を入れたときに間違えてしまった。
「最強のふたり」というタイトルを捕まえたときに何の違和感もなく購入して
しまったのだけど、こちらのタイトルでもピタリと当て嵌まる、よね。
因みに「最強のふたり」もいい作品だった
松たかこ・阿部サダヲと、大好きな二人の共演とあれば見ないわけにいかない。
かなり愉しみにしていた。
仲の良い夫婦(松・阿部)が切り盛りしている居酒屋は活況に満ち、夫婦は活き活きと仕事している。が、突然の火災に見舞われ店を失ってしまう。
落ち込んで鬱々と過ごす夫に対し、健気に凹むことなく乗り越えようとする聡い妻。
ある日、夫の行きがかり上の浮気がバレて、これがきっかけで妻は再建の為の妙案を
思いつく。ここに辿り着くストーリー展開がいい。そして、この場面の松たか子の
したたかな動作にニヤリとしてしまう。殊に熱くなってきた湯船に水を入れようと
する夫に、蛇口を緩慢な足先の運びで遮る動作に嫉妬の凄さが表れる。
女を騙し大金を借りること。それが妻が考えた資金作りだった。
阿部サダオなんてこれ以上ないくらいに嵌まり役だ。人が良く、ちょっと卑屈で
正義感もそこそこあるが軽薄。もて顔ではないけど、嫌われ顔でもない。
女の自尊心をけして損なわず、嫌味なく同調してみせる。計算のできない男だから
憎めない。こんな男が弱っているときに現われたら傾いてしまう女を笑えない。
もう少しというところで夫は本気で恋をしてしまう。
聡い妻はすぐに気付くが口を閉ざす。その女のところに向かうであろう夫が乗った
自転車の後ろを哀しい目で追う妻。迷いつつ後ろ髪を引かれつつのらりくらりと
自転車を漕ぐ阿部サダヲと、実質去っていくであろう夫を見送る松たか子の場面の
表現が印象的だ。
惨めな感じがしないのは松たか子の良さだ。脚本上の役柄もあるがこの人が
演じてこその泥臭さのない賢さの勝った妻であった。
泣いてすがったり、喚きたてたり、可愛いフリをできない女。これが出来ていたら
或いは阿部夫は振り返り戻ったりもしたかも知れないが、だからこその松妻なのだ。
爽快なほどのしたたかさで計算した人生設計だったけれど、男の感情までは
どんな賢い妻でもコントロールできなかった。
結末はふたりの性格が象徴的に表現されている。
余談だが、「夢売るふたり」を見るつもりで出かけたら、映っていたのは
「最強のふたり」だったネットで予約を入れたときに間違えてしまった。
「最強のふたり」というタイトルを捕まえたときに何の違和感もなく購入して
しまったのだけど、こちらのタイトルでもピタリと当て嵌まる、よね。
因みに「最強のふたり」もいい作品だった