映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「すずめの戸締まり」

2022年11月15日 | アニメ映画
新海誠監督新作。
九州で叔母と2人暮らしをしている鈴芽は、
登校中に廃墟を探している不思議な青年と出会う。
彼のことが妙に気になって、廃墟に向かった鈴芽だったが…というあらすじ。

ボーイミーツガール要素ももちろんありますが、今回かなり薄い。
なんと女性の連帯が描かれます。それがかなりいい感じ。
新海監督の現時点での最高傑作ではという声もチラホラ聞きます。
系統としては「星を追う子ども」路線なのですが、段違いの出来栄えです。

相変わらずきらきらとした、美しい風景が描かれています。

鑑賞上の注意ですが、
演出として緊急速報メール、アラートの音が鳴るシーンが何度もあるので、
災害にトラウマのあるかたは、もしかするとやめておいたほうがいいかもしれません。
それと小動物っぽいものがかわいそうな目に遭います。

ラストまでばれ

死を扱った日本のエンタテインメントは泥臭くべちゃっとしたものが多くて、
髪を一つくくりで片側に流したお母さんがフフフって笑いながら庭で洗濯物を干したり
フフフって笑いながらエプロンしてお料理してたり、
お母さんの手紙が出てきたり、霊とお話したり、過去映像がスローモーションになったり、
わあわあ泣いたり叫んだり。
アーーーこりゃだめだーーーってなるんですが、この映画のお母さんの扱いはよかった。
なんか木工なさっていて、作業の段取りに個性が見える感じ。

お母さんの死因などは中盤以降まで隠されていて、
主人公の移動先の共通点に徐々に気づいて、それで終盤の日記の日付でああやっぱり、
となるように作られているのでは?と思っているが、
割と記事や紹介文などで「311を描いた映画」と書かれていて戸惑う。
私はこの映画が「311を描きました!むしろタイトル311フォーエバーです!」
みたいな宣伝の仕方をしていたら、きっと見なかったと思います。
この映画は震災と死がメインではなく、災害を阻止しようとする鈴芽の頑張りと淡い恋、
育ててくれた叔母との関係、行先の土地で出会った女性たちとの連帯がメインなんだけど、
震災をエンタテインメント化した作品と区別のつかない人も多かろうから
ある程度のバッシングは覚悟なさってるのだろう、度胸あるな監督。

この映画で私が、んーと思ったのは2点。
おい教師志望ならもうちょっと学生から離れて喫煙しなよね、ってことと
怪我しててもイケメンでも、知らない人を家に上げたらだめだよってこと。
(これは叔母さんが言及したのでまあよい)

「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」との共通点が意外に多かった。
現実を物語に落とし込んだ作品であること、保護者の死があるところ、
しかし悲劇を売りにするのではなく、生きている人間の再生を真摯に描いていること、
女性たちの連帯が描かれるところ。
この映画の、恋愛の比重がおおきいのはいかにも新海監督っぽい。
でもまあ草太さんもすずめさんも、周囲の人間との関係がきちんと表現されていたので
恋愛するためにボトっと落ちてきた人形…という感じは全然しなかった。

この映画のヒロインの相手役の草太さん、監督の作品では異例の男子で、
姿かたちが美しいということ以外、序盤はなにも情報がない。
そしてなんだかとても礼儀正しい人だというのが辛うじてわかる。
そしてどんどんヒロインポジションを占領していき、
突然現れた友人の芹澤という人からやっとまともな情報が得られる。
この作品で鈴芽は救いを得るけど、もっと劇的に良い方向へ変化したのは草太さんのほうだと思う。
ヒロインなのだ彼は…。

ところでお友達の芹澤さん、SNSで検索したら
本編では全く描かれなかった2人の出会いや家庭環境の空想で溢れかえっていてニッコリした。
そう、描かれてない部分が巨大すぎるくせに
思わせぶりなことを言われるとオタクはつい空想をしてしまうのだ…。
とりあえずどっちかの家に泊まったりはしただろうから(でも合鍵はもらってない)
草太のダイナミック寝相は体験済だろう。
夜中に目が覚めたら草太が猫のポーズ(ヨガの)で寝ていて「!!!???」ってなった芹澤はいるはずだ。
あと転がってきた草太が自分を乗り越えて、部屋の端まで行って、
また戻ってきて布団にリターンしたときは笑いをこらえるのに苦労したに違いない。
新海監督、「世間が騒ぐBLというものを我もしてみむとてするなり…」と適当にやってあれなら、
もう本当に才能ってやつを見せつけられた気がするので(女性スタッフの意見を反映したのかもだけど)
次回作もぜひBL要素を盛り込んで、凡人の我々をキャーキャー言わせてほしい。
百合もいいと思います。どっちもやろう!

ダイジンは、私は猫としては全然見てなくて、ずっと神だと思ってたんだけど、
ねこがかわいそう!という意見をたくさん見かけて少しびっくりした。
日本の神ってああいう残虐なところがあり、
でも突然子供のように振る舞ったりするイメージなので。
しかしダイジンは最初から最後まで行動を理解できたが、
サダイジンは途中叔母さんに憑依したりしてよく分からなかった。
まあ結果的にはあれでよかったということで、ダイジンより位の高い神なのだろうか。
それと映画とはあまり関係ないが日本の神のイメージに(仏ではない)
荒魂・和魂というような二面性があるのは、
地震(自然災害)が多いことと無関係ではないのかもしれない。

兵庫の廃墟は摩耶山かなと思った。(遊園地はほとんど残ってない)
関西の廃墟の中で一番有名な摩耶ホテルがあります。
ミミズのデザインと動きはよかった。マグマと内臓とヤマタノオロチを混ぜたような。
シンメトリなとぐろの巻き方も気持ち悪かった。
あとすごく気になるポテトサラダ入り焼うどん…味の想像ができないのでそのうち作ります。
気になる細部が沢山あるのはいい映画だと私は思う。
できるだけ多くの人に鑑賞してほしい。



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「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」

2022年11月13日 | バトル映画

ワカンダの王、ティ・チャラを病で失った妹のシュリは、
心に大きな傷を負い、立ち直れないでいた。
母のラモンダが守護する国を、海底帝国タロカンが襲う…というあらすじ。

ブラックパンサー、ティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマン氏が
2020年に病死なさって、何もかもが急遽変更になった作品です。
監督は前作に引き続きライアン・クーグラー。

「スパイダーマン ノーウェイホーム」と同等かそれ以上に
主人公がつらい目に遭うMCU作品だった。
しかし死を商業利用した作品では決してなく、
喪失と真摯に向き合い、物語に落とし込んであったと私は思う。

ラストばれ

女性主人公の受難の物語としてはシリーズ最辛かもしれない。

ティ・チャラ王の死は大きく扱われていたがメインではなかった。
シュリ姫は兄の死を嘆き悲しむ泣き女のような存在ではなかった。
新たなスーパーヒーローの誕生と、その試練のために流されたおびただしい血、
彼女の苦しみと涙、強さ、克服がきちんと描かれました。
訃報を聞いたとき、物語の中ではティ・チャラ王は生きていることにしてほしいかな…
彼も月にいるってことにならないかな…とも思ったんですが、ここまでされたら文句などない。

苦しみと迷走を描いた映画は時々ラストを放り投げた状態で終わって、
迷走しっとったんお前(監督)かーい!!ってなることがあるのですが、
この映画はどんなにつらくて先などないように思える瞬間も
きちんとコントロールされている安心感があって、その信頼は裏切られなかった。

この映画の脚本の一番素晴らしいアイディアは間違いなく祖先の平原で、
「うわ……………(言葉もない)」ってうならされた。
しかも、直接的ではないにしろティ・チャラ王を認める発言とかあって、
あのシーンはずっと年収低すぎポーズでした。
画もいいし、絶望だし、救いがない。でも優しい。
ネコチャンにタップしてもらうと推しが出るって都市伝説があるよシュリ姫!
(王家の先祖をガチャ扱い不敬罪)

予告でネイモアが出るらしいのを見て、
アクアマンとキャラかぶりした海パン羽パタパタおじさんとかどうするんだろう…
と少々不安でした。
しかしさすがMCU、腕力でねじ伏せた。
西洋世界の植民地主義の描き方がえぐくて、海パンとかもうそれどころではなかった。

取り返しのつかない出来事の映像が巻き戻る表現、
911を扱った某作品でもありましたが本当に切ない。
巻き戻ればどんなに素晴らしいだろう、と思うんだけど
それは絶対に実現しないんですよね。彼女はそれをよく知っている。

少し面白かったのは、葬儀で白一色になったり、みんな踊っていたり、
統治者が感情まるだしで部下の処遇を決定したり、
なんだか居心地が悪かったんですけど、考えたら葬式で黒を着たり
悲痛な顔で静かにしていたり、
身分の高いものは感情を表に出してはいけなかったりするのは全部西欧の価値観で、
なるほど他国が舞台のエンタテインメント映画でそれらに倣う必要はそういえばないのでした。
あと、普通の映画では見ない感じのファッション、とても似合っていて素敵でした。

最後でちょっとだけ残念に思ったのは突然出てきた「彼」。
ほかのシリーズならともかく有色人種の女性たちが活躍するこの映画に彼は必要だろうか…?
と少し疑問だった。
しかしメタ的に見ると、これは制作会社の保険なのかもしれない。
今後役者さんの誰がどうなってもシリーズを続けられるように。
でも祖先の平原の演出と、ラストのネイモアのセリフで
シュリ姫闇落ち展開もありうるな…と思うと、びくびくなんですけど。
ちょっとケヴィン…頼むよ…。




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「GREEN BULLET(グリーンバレット)」

2022年11月02日 | アクション映画

「ベイビーわるきゅーれ」が良かったので見に行った。
ちなみに女性客と男性客、ちょうど半々だった。

殺し屋を目指す6人の女子たちが強化合宿に参加する話。
女子たちは、去年のミスマガジンコンクールで何らかの賞に入った子なんだな。
自然体のキャラクター設定で(鹿目さんを除いて)、リアル寄りだったのが合ってた。
殺しの強化合宿で女子たちが険悪になったりキャッキャしたりするのが好きな人向け。

内容ばれ

私は「ベイビーわるきゅーれ」のほうが好きかなあ。
「最強殺し屋伝説国岡」のスピンオフてき映画なのを知らずに見て、
まあストーリーが分からなくなる等はなかったけど、
国岡ツヨイツヨイシーンにかなり尺が割かれるので、
別にそれはそんなに見たいって訳じゃないです…ってなりました。

半グレや人殺しのヒャッハー集団が絶対に性加害しようとしないのは、
邦画ではまだ珍しいので他エンタテインメントも見習ってほしい。
そういえば阪元監督はハリウッド映画がお好きで、
今作でもハリウッド映画ねたがいくつかあった。

起業家のかた、1万6千円のシャトーブリアンや、2万5千円の鮨とか
(数字は不確かです)やたら値段を出してくる所に親近感が湧いたけど(笑)
悪役で安心した。
音楽流して話すタイプの講習は総じてやばいという認識でいいんだな矢張り。
カメラマンも悪だな…と思ったが違って少し驚いた。



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