「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

花水木揺らしたるシシュポスの岩 石母田星人 「滝」6月号<瀬音集>

2013-06-08 05:51:01 | 日記
 萌え出した葉の間に、空に向いて咲く花水木。<果てしな
い徒労・報われない努力>を意味する「シシュポスの岩」が
配されて、通勤途中の街路樹を思った。日に日に咲き増えて
行く花水木の(実は花は真ん中の緑の部分)はひらひらと風に
よく動くが、きょうは何だか憂鬱な気分を抱えているらしい、
シーシュポスは人の名前で、罰として巨大な岩を山頂に上げ
るように命ぜられるのだが、あと少しで山頂という所で、岩
はその重みで底まで転がり落ちてしまう。「揺らしたる」が
その振動に揺れたように感じられたとしたら、心はかなりの
ダメージを受けているのでしょう。明るい花水木との対比が
見事ですが、作者がちょっと心配になる句ですね。(H)