「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

鳥帰る鳴らして帯を解きけり 菅原鬨也 「滝」4月号<飛沫抄>

2014-04-19 06:43:37 | 日記
たくさんのシーンが思われます。「鳴らして」を故意と解
釈すれば、何かに怒っている作者のようでもありますが、帯
を鳴らしているのは作者とは限らないですね。視線を帰る鳥
に置く背後で女性が着物を脱いでいるのかもしれない。絹鳴
りが聞こえているのですから部屋は静かなのでしょう。生活
感のないところに居るような気もして、だんだん想像が渡辺
淳一の小説めいてもくるのですが、生活の一齣として読めば、
鳥の帰る頃は卒業や入学の時期ですから、そんな式から帰っ
て来た奥様の「やっと脱げる」を代弁する絹鳴りとも思えま
す。いえ、「鳥帰る」は<古巣に帰る><春深まる>を同時
に感じる季語ですから、そこから想念がふくらんで、幼い頃
の思い出に繋がったとしたら、出掛けていたお母様が家事を
するために忙しく帯を解く音のようでもありますね。十七文
字を越えて、存分に私の妄想癖を満たしてくれる句にしばら
く浸っておりました。(H)