「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

鰭酒やマチスの女みな太し 谷口加代 「滝」3月号<滝集>

2014-04-09 04:54:34 | 日記
 単に外気の寒さを言うならば熱燗でも良かったはずで、80
度位まで燗をして、お酒に炙った鰭の旨みが溶け出すまでの
時間に、嘗ての二人を滲ませているようですね。酔いが回っ
て親しさが戻るに連れて、作者の透けるような白い肌がバラ
色を帯びてくる懐かしさに駆られた男性との会話が「マチス
の女みな太し」のフレーズに集約されているのでしょう。
私は絵画を評する知識を持ちえないのですが、野獣派と呼
ばれることを好まず、画風や表現方法が変わっても、マチス
は、マチスとして、描く人生を貫いた人のようです。懐かし
い人が語る自分の事を聞きながら、そんな自分も居たことを
思い出す「自分らしさ」に、『私は、私を、私らしく生きる』
と、心の中で宣言したような句だと思いました。(H)