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2018年鈴鹿8耐、終わってみればヤマハの4連覇

2018-07-30 10:09:08 | モータースポーツ
「ヤマハ発動機レース情報: 7/29鈴鹿8耐、ただ一点、1コーナーを見つめるマイケル。今何を想う」
2018年の鈴鹿8耐、前日からの台風12号が三重県に上陸し、雨風とも強くなっていた状況を引きずり心配されるも、予定通り11時半スタートで8時間耐久が始まった。終ってみれば、“ヤマハワークスの圧勝で4連覇達成。"続く2位がホンダワークスチーム、3位はカワサキの準ワークスチームグリーンだった。順当な結果に終わったと思われるが、ヤマハワークスライダーの支柱たる中須賀選手が前日の走行でハイサイド転倒打撲し8耐本番を欠場したなかでの優勝は価値がある。8耐マシンの基本仕様を決めてきた№1ライダーの本番欠場に、ヤマハ陣営は多分、顔面蒼白になっただろうと類推されるも、残り2人のライダーが中須賀の欠場を埋めるに十二分の働きで優勝を勝ち取った。レース結果と重要な出来事を纏めた、CycleNews誌の記事「2018 Suzuka 8 Hours Race Result」は分かりやすい。

個人的には、今年の8耐、7月中旬までに公開された事前合同テストでの結果を見る範囲では、ヤマハワークスが一番確率が高く、ついでカワサキチ―ムグリーンが続くという印象をもった。だが、3年間、ヤマハワークスは圧勝の実力から自分のペースを崩さすナーバスにコンサバな走行に徹する事がも出来たが、今年はチームグリーンが肉薄する環境に変った。そこには両チームとも互いに大きなリスクをもって勝負に望むことなる。所詮、相手は1チームのみだから、どちらが残るかは分からん。それだけに肉薄するレース展開になればなるほど益々予断を許さないレースになると思う、下馬評の低いチームが勝利する可能性もあり、これは面白くなると予想していた。

ところが、8耐ウィークの公式予選で、カワサキのジョナサン・レイ選手が2分5秒168という従来のレコードを大きく更新するタイムをマークし、全セッション通してのトップタイムをマークした。同じくカワサキのハスラム選手も6秒台に入った。一方、ヤマハワークスは中須賀選手もアレックス・ローズ選手も新品タイヤではなくユーズトタイヤを使用しての公式予選走行となったようだ。結局、公式予選での順位は、1位がカワサキのチームグリーン、2位がヤマハワークス、3位がホンダワークスとなった。この経緯を纏めた記事によると、「2回目の公式予選セッションではNo.21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMのブルーライダー中須賀克行がタイムを更新。それに対しNo.11 Kawasaki Team GREENの渡辺一馬はタイムを更新できず、その差は広がる結果になった。しかし、台風の影響でトップ10トライアルの開催自体が心配される中、この予選でトップを目指すNo.11 Kawasaki Team GREENのイエローライダー、ジョナサン・レイがニュータイヤを履いて驚異の走りを披露。これまでの鈴鹿8耐最速タイムである2分6秒000を大幅に更新する2分5秒168を記録してトップに浮上し、さらにはレッドライダーのレオン・ハスラムもタイムを更新して、予選をトップで通過した。」とある。

上位10チームは、土曜日(28日)に行われるトップ10トライアルで最終的なスターティンググリッドが決定するので、公式予選ではトップタイムを確保する必要性は必ずしもないが、台風12号がすぐそこに来ている状況で、土曜日のタイムトライヤル自体が中止になる可能性があるので、カワサキチームグリーン陣営は、この公式予選に掛けたことになる。8時間のレースなので、スーパーポール方式のグリッド中の一番になる意味がどこにあるのかの意見もあるが、ライダーもチームも最も早いのはどのチームかには最大の関心を払うものである。それは最も早く走れると言う証左になるので、レース本番にもちこむ自軍の心の余裕と相手へ無言のプレッシャーを与える意味でもポールポジションはチームにとっては重要な要素なのだろう。この点において、チームグリーンはタイヤ制限のあるなかで、新品タイヤを公式予選で投入し2分5秒台にもってきた作戦、カワサキ陣営の考えは功を奏した。結局、土曜日は不安定な天候の可能性を考慮しスーパーポールは中止され、40分間の計時予選形式に変更された。ここでも新品タイヤ投入でカワサキチームグリーンは5秒台を連発し、ニュータイヤでの圧倒的強さを示した。そんな中で、ヤマハのエース中須賀選手がS字でハイサイド転倒しコース脇にうずくまる光景がTVに映し出された。朝からの雨でグリップが低下して滑りやすくなっていた路面に、ヤマハは計時予選で5秒台を出す作戦だったのが狂いを生じさせたのではないかと邪推してしまう。こうして結果だけ見ると、ここまでのカワサキチームグリーンの作戦は見事だと評価されるべきだろう。なにせ、最大の敵、ヤマハワークスのNo1ライダーにミスを生じさせ、それまでヤマハ優位の状況からカワサキ優位に流れが変わったのだから、見事だった。
  「公式計時前の練習走行で転倒したヤマハのエース中須賀選手、結局、本番レースには出場せず」
結局、公式計時予選の結果は、下記の通りでこの順位でスタート順が決った。
P1 - 2'05.403 - #11 Kawasaki Team GREEN (RAE) / Kawasaki
P2 - 2'06.127 - #33 Red Bull Honda with 日本郵便 (中上) / Honda
P3 - 2'06.170 - #21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM (LOWES) / YAMAHA
P4 - 2'06.177 - #634 MuSASHi RT HARC-PRO.Honda (‐‐‐) / Honda
P5 - 2'06.642 - #12 ヨシムラ スズキ MOTUL (RAY) / SUZUKI

レース本番前までのカワサキチームグリーンの動きは的を得て見事だったので、本番にどのような作戦で臨むのか、大いに興味があった。あれだけ脅威的なタイムで走れるなら、ジョナサン・レイとハスラム2名だけを出走させ、スタートのレイが逃げて20秒台のマージンを築きハスラムに繋げられれば、チームグリーンに勝運あると考えていた。ところが、カワサキのスタートライダーのハスラムはホンダ、ヤマハ、ヨシムラ等との団子状態から抜けだせない。本来のヤマハなら、スタートはエース中須賀が担当し逃げる構図だったはずだが、ヤマハは大きく方向転換せざるを得ず、練習走行では最も遅かったファン・デル・マークがスタートライダに指名されたので、あれー、なんでカワサキはレイをスタートにもって来ないんだと思った。スタートで20秒前後のマージンが築けたら優位にレースを展開できるはずだと考えたが、そうではなかった。ヤマハのツイッター「ヤマハ発動機レース情報」に投稿された、スタート前のファン・デル・マーク選手の超緊張した顔に、大丈夫かいなと一瞬同情してしまったほどだ。中須賀の状況は当日、一切の公式発表はなかったが、ヤマハのツイッタに出てくる文面から、中須賀の欠場はすぐに分かった。だからカワサキがスタートから幾分かのマージンを築けたらばカワサキ優位と思ったが、それもすぐに駄目だと思った。予選の、ニュータイヤで一発タイムを出せても、本番ではカワサキのエースレイがヤマハワークスのファン・デル・マーク選手相手に全くマージンを作れなかったことだ。本番用タイヤではタイムの優位性がない。予選の一発は早くとも本番ではタイムがでない。むしろヤマハワークスのファン・デル・マーク選手に肉薄された。それほどスタートライダーのファン・デル・マークの走りに安定感があって早かった。レース巧者という意味では、世界選手権の結果を見る範囲でのジョナサン・レイはファン・デル・マークより優位にあるはずだったなのに、それがなく、むしろスティント後半では尻を突かれている走りではどうしようもあるまい。

で、結果は冷酷で、本番でのカワサキは作戦負けだったような気がする。スタートでレイを投入して逃げの体制を築くべきだったが、それが出来ず、ヤマハに喰いつかれた。確かにピットアウト後のレイの一瞬の走りには見るものがあり凄かったが、それでもヤマハのファン・デル・マークに3、4秒位しかマージン築けず、加えてガス欠症状や雨天での注意散漫でのハイサイド転倒と、終わってみれば見る影なし。つまりレイが絡む3点がカワサキの敗因だろうと思えるが、一方、ガス欠やハイサイド転倒と一歩間違えたらリタイアになるところだったのに、それがなかっただけでもカワサキは運がよく助かったと思うべきだろう。結局、カワサキは現在持てる最大の力を投入したものの、ヤマハの実力がそれの上だったという事だ。思うに、ヤマハワークスはエース中須賀が駄目になった時点で、大きな精神的支柱を欠落してしまうハンディキャップを背負って8時間に臨まざるを得ず戦ったが、ファン・デル・マークや相棒のアレックス・ローズをあれだけレースに集中させた組織運営力は見事と言う他なし。

それにしても、ホンダHRCは昔のHRCではないな~。「ホンダは勝ちに拘る」とか「鈴鹿8耐では惨敗しない」と公言するなら、それ相当の覚悟を持って8耐に臨むべきであろう。事前合同テストの結果を見るに、ヤマハワークスにはいざ知らずカワサキの準ワークスにさえ大きく遅れをとっていることが明らかになっていた。レース本番では一時、ヤマハワークスに肉薄する場面もあったが、それもぺースカーが入った個所だけで、すぐに離されてしまった。カワサキの転倒修復でHRCは2位確保となったが、これがホンダワークスHRCが求める本来の姿では決してあるまい。ただ、現在持てる最強のエースを投入したカワサキは、HRC(持てる本来の力を発揮したならばの条件だが)やヤマハが更に今一歩前にでれば、これ以上の駒がないカワサキは相対的に苦しくなるだけに、そう考えると、今年のカワサキは最大のチャンスを逃したことになる。
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