野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

中高生の副読本を読んでみた

2019-03-01 06:20:59 | その他
ひょんな事から面白い副読本を読んでみた。
中高生のための放射線副読本(放射線について考えよう)」だ。平成30年9月、文部科学省刊行とある。「はしがき」の「放射線は日常的に存在しており、放射線を受ける量をゼロにすることはできません。空気や食べ物などにも常に放射線を出す物質(放射性物質)が存在していますし、病院では放射線が検査や治療に利用されています」はその通りだと思う。更に「原子力発電所事故により避難したりしている児童生徒がいわれのないいじめを受けるといった問題も起きてしまいました」と続き、このいじめが二度と起きないように放射線に関する科学的な理解を深めるための一助とするべく、この本を刊行したとある。

この副読本の(2)放射線量と健康との関係に、「放射線が人の健康に及ぼす影響は、放射線の有無ではなく、その量が関係していることが分かっています。100 ミリシーベルト以上の放射線を人体が受けた場合には、がんになるリスクが上昇するということが科学的に明らかになっています。しかし、その程度について、国立がん研究センターの公表している資料 によれば、100 ~ 200 ミリシーベルトの放射線を受けたときのがん(固形がん)のリスクは被曝していない人の 1.08 倍であり、これは1日に110g しか野菜を食べなかったとき のリスク(1.06 倍)や高塩分の食品 を食べ続けたとき のリスク(1.11~1.15 倍)と同じ程度となっています」とある。加えて、右欄の「がんの相対的リスク」をみると、喫煙者や大量飲酒のがんの相対的リスクは1.6、運動不足によるが1.15~1.19、高塩分食品が1.11~1.15で、この値は放射線線量200~500ミリシーベルト1.19に相当している。
     「中高生のための放射線副読本」

線量100ミリシーベルトは、被爆時の基準だと記憶していたので、低線量の被爆程度について資料を探してみた。
放射能の危険性について長い経験と研究を継続してきた長崎大学の公表資料があったので、低線量被ばくが話題になった2012年に一部をコピーしていたの思いだした(長崎大学は東京電力の寄付口座申し出を拒否した大学である)。それによると、低線量被爆危険性の度合いについて、長崎大学の「国際被爆者医療センターの福島原発に関するQ&A(今は削除されている)」では、「100ミリシーベルト以下の放射量についての危険性は殆ど見られないと意見(専門家の意見では一致していないと但し書きはあるが)」があった。また、同大学の「原爆後障害医療研究施設の放射能Q&A(今は削除されている)」にも、「地球上に住んでいる以上、だれでも年間2.4ミリシーベルトの放射線を被ばくします。といっても、だれもこの自然放射線で害を受けてはいません。500ミリシーベルトを超えると放射線の影響があり、発がんの心配が出てきます。ちなみに、科学技術庁が決めた年間許容量は50ミリシーベルトです。これは、放射線の害から守るために、法的に定められた値です」、つまり、100ミリシーベルト以下の低線量被爆については、広島、長崎の被爆者では、むしろ一般よりも発ガン率も低いという結果が得られているという意見もあった。

福島の原発事故は一人の死者も出なかったが、放射能汚染への恐怖を植え付けてしまった精神的ダメージは大きかった。
その影響は、10年近くなった今でも消し去ることはできず、上記にあるような中高生向け副読本として生徒を指導せねばならぬほど根が深いようだ。放射線を浴びても、それはインフルウイルスの様に他人に移ることはなく、また遺伝することもないことは既知の事実だが、2011年の福島原発事故の時の政府の対応の不味さが、例えば時の大臣が記者に向かって放射能が移るぞと言ったり、それらが、今日まで放射能への偏見へと流れているのだろうと思えて仕方がない。しかし冷静に考えても、日本は広島と長崎が原爆投下によって甚大な被害を被ったので、放射能に対する過敏な反応は致しかたないが、その後の長崎・広島を見ても危険な街のままで誰も寄りつかなかったとは一度たりとも聞いた事はなく、長崎港へは世界中の多くの客船が寄港(神戸より多い)する素晴らしい街である事は今も全く変わらない。寺田寅彦の言葉にもあるように『ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることがむずかしい」ということです。「正当に怖がる」ために、まず正確な知識を得て、どのように対処すれば安全なのかを知ることが重要だと思います』。 こうしてみると、本副読本にも記載されている、喫煙や多量飲酒、肥満の方が放射能を恐れるよりはるかに全人類の脅威とみるべきだと思う。


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