野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

「家電がダサイのは営業のせいではない」はその通りだが、こんな仕組みもある

2013-12-11 06:33:07 | その他
先日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」に「営業がダサいから日本の家電が花柄ウルトラマンになるって本当?」という記事があった。日本の家電が販売不振に陥り商品のデザインもダサくなっている要因は営業にあるという意見への反論であるが、非常に興味ある記事だったので、参考にしようと思う。『営業が「売り場」を、魅力ある「買い場」に変える提案を行っても、そんなことよりも価格を下げろと要求されかねません。まして、小売からすれば、ひとつのメーカーの製品は、 あまた競い合っているなかのひとつの品揃えにすぎません。営業の問題というよりは、マーケティング戦略、とくに製品のアイデンティティづくり、店頭でのユーザー体験も含めた ブランド・マネジメントに真剣に取り組み、それで違いをつくろうという会社が少ないからじゃないでしょうか。 そもそもがブランドで違いをつくるというのではなく、個々の製品でライバルとガチンコ勝負をしようとする、しかも登場してくるのはライバルと違いがあまりない製品ばかりで、 それを売れといわれる、だから「とりあえず、店頭で目立たなくちゃ売れない!」となってきます。 開発も、目立つデザイン、新しそうに見える機能や仕様を追いかける、 その悪循環がぐるぐる回るのです。 売ることだけに目が向き、消費者のほうに目が向いていないというは、そのとおりかもしれませんが、それを変えるには、マーケティングの 組み立て方、戦略から変えないと無理じゃないでしょうか。営業だけのせいにするのはあまりにも酷な話です。とりあえずは、ブランドマネージャーに、消費者目線を持っている人を 起用したほうが早い解決になるかもしれません』


■「ブランドで違いをつくるというのではなく、個々の製品でライバルとガチンコ勝負をしようとする、しかも登場してくるのはライバルと違いがあまりない製品ばかりで、 それを売れといわれる、だから「とりあえず、店頭で目立たなくちゃ売れない!」となってきます。」という分析は多くの商品が置かれている状況で、ずばりその通りだと思う。また、こうした分析や議論は多くの営業や開発陣もその通りだと素直にうなづく事であり、おそらく皆が集まって問題点を議論し始めた先の行きつく結論はたぶんそこなんだろう。だが、会議を一歩離れ自分の仕事に戻ると、目先の仕事優先になってくるので、さっきの議論そっちのけでライバルと違いがあまりない製品ばかりのガチンコ製品を開発し、しかも出来た製品は競合他社品と鼻の差の違いぐらいしかユーザーは見出せず、顧客は不満はあっても結果的に信頼できる従来からの継続商品に目線は行ってしまう。それは確かにそうだろうなと思いながらも、一方、11月に開催した「KX40周年を祝う有志の会」の寄稿集に、製品開発を担う開発陣が自ら開発した製品を、開発出身者自ら優れたマーケティング戦略を採用する事で結果的に販売を飛躍的に伸ばし、且つ米国市場において今なお多くの顧客から絶大な信頼を得た仕組みが報告されている。
Grass Roots: 30 Years of Team Green」は極めて劣勢にあった商品を一躍にしてカワサキをトップランナーに押し出した具体的なシステムである。こんな仕組みは意外と身近にあるので気が付かないまま、実際は、その仕組みのバックボーンに支えられて優位に立って戦えているにも関わらず、時代変わりすると往々にして恩恵を忘れてしまい易い。しかし、この仕組みが、競争が激化した米国のMX市場で、全くのゼロに近い市場占拠率を他社以上の占拠率に高め、且つ30年以上もカワサキブランドを牽引しているのも疑いのない事実だ。こうしてみると、皆で議論を尽くしてと言うより、マーケティングセンスが良くて消費者目線を持っている感の良い人をリーダーに起用したほうが早い解決になるというのはそうかもしれない。

■例えば、百合草三佐雄さんが寄稿した「KX40周年にあたっての思い出」の中には、
『 ’76年KMCに駐在したが、各レース場はスズキ、ヤマハのオンパレードでKXの姿は殆ど見られなかった。そこで、販売店の支援費として営業で使っていた費用をR&Dに移管してもらい チームグリーンを創設した。ピート堤さんを長としてジョーダンを補佐とし、レースにおける代理店の支援を行った。これが当たって、各地でカワサキが驚異的な活躍をすることとなった。例えば、’89年(年間)のラスベガスWorld Mini GPではKXのEntriesが43%、KXのWinsが71%またPonca CityのNMA FinalsではKXのEntriesが46%、Winsが76%と驚異的な成長である。これらの成績も明石の開発部隊の研鑽の賜物であり、チームワークの業績である。』
また、伊吹 清孝さんの寄稿「 「KX40周年記念 寄稿」の中にも、『KX40年の歴史に山谷はありましたが、永年にわたって活動を支えてきたもう一つの強い柱として「チ-ムグリーン」があります。米国におけるモトクロスレース活動の中で日本人とアメリカ人が協力して生み、世界に広げて育ててきた独自の誇るべきシステムです。レースに限った事ではありませんが、ビジネスを強くする要素は、高いハードの技術と独創的で確かなソフトの両方が不可欠であることをKXの歴史を振り返り改めて認識させられます』として、「US kawasakiのTeamGreen」の仕組みと実績を高く評価している。「Grass Roots: 30 Years of Team Green」は概念論ではなく具体的な展開だからこそ多くの顧客に長く支持されてきた。先月、「KX40周年を祝う有志の会」は大成功で、多くの皆さんの祝福を受けたKXの歴史は、まさに「Grass Roots: 30 Years of Team Green」の仕組みがなせる成果であって、その土壌があってこそ、「開発陣はモトクロッサーの最適技術を開発し続け、世界中のモトクロスファンに愛され、多くのチャンピオンシップでチャンピオンを勝ち取りながらKXは進歩し、多くのカワサキファンからの真摯な指摘と支持を受けて、毎年進化し続けてきた結果であり、そして現在も進化し続けている歴史がKXの40周年」と言えるのだと思う。

■「US kawasakiのTeamGreen」
    「あなたもTeam Greenメンバーになれる」
カワサキのKXマシンを購入したユーザーは誰でも「Team Greenメンバー」として登録でき、全米各地で開催されるレーストラックにおいて分け隔てなく同等の支援を受けることができる。一部の特別なライダーのみが優遇される特権ではなく、レーストラックでは、場合によってはカワサキユーザー以外のモトクロスユーザーへの支援をも除外しなかった。勿論、Team Greenの卒業生からAMAモトクロスの著名な多くのチャンピオンを輩出したことは言うまでもない。Team Green活動は、広く言えば米国の多くのモトクロスユーザーを支援し、そして育て、米国のモトクロス市場を守ってきたと言っても過言ではないだろう。開発と販売ソフト及び実績が極めて上手にジョイントし成功した好例であり、草の根活動の二輪販売戦略の見本として大いに参考となる。 欧米の二輪企業はブランド戦略を前面に押出し、低迷しているUS市場で確実に販売を伸ばしている。単なる工業製品の店頭販売から脱却し、ブランドというソフトを前面に押出した企業がUS市場から支持されている事だと思う。ユーザーからの信頼性を高め、ブランド・ロイヤリティを得て長期的にユーザーを囲い込んでいくこと、これが重要だ。 欧米でも、とかく目立ちやすい活動には主力を置きたがるが、地道な「草の根活動」にこそ重きを置くべきだろう。とくに市場が低迷している時代には、より必要なのかもしれない。
                                              

■ 「Kawasaki Team Green活動  -その1
  「Kawasaki Team Green活動  -その2
  「Kawasaki Team Green活動  -その3
  「Kawasaki Team Green 30周年 - 話題3題 (Team Green その4)
  「Kawasaki Team Green ・・・ その5
    
                       
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