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各社二輪事業ー9月決算から

2011-11-09 06:30:59 | 二輪事業

二輪各社の9月決算報告資料から二輪の世界市場動向の一側面を見てみた。
これまで、中国、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどアジアを中心とした新興国で高い二輪需要が見込まれる中で、
特にホンダ/ヤマハの二輪企業は新興国需要に応えるべく生産ラインを急ピッチで整え市場を急拡大してきた。
ここにきて、平成20年の金融危機を発端に世界的な同時不況へ突入し、しかも国内の二輪需要は下降線の一方にある状況にあって、
二輪企業は、インドや中国、ベトナム/タイ/インドネシアといった東南アジアに加え、南米そして未開拓のアフリカ等、魅力的な市場に注目している。
世界不況の影響で失速を余儀なくされた二輪業界だが、中長期的に見れば更なる市場拡大のチャンスが見込めそうである。

一方、市場規模が大幅縮小した先進国市場では、日本企業の縮小の隙をついて欧米の二輪企業がシェアを拡大し、その勢いをもって新興国へ触手を伸ばしつつある。
欧米の二輪企業は、個性と独自性を前面に押し出した商品展開と顧客サポートによって確実に販売台数を伸ばし収益を確保している。
その代表格がハーレーダビッドソンだ。
そして、ドガッティやBMWも市場シェアを伸長しつつ為替も優位に働き、欧米二輪企業には日本企業に見られない明るい未来さえ感じられる。


まずは、
「ハーレーダビットソン」
 ■1-9月累計
  ・売上高  36.35億ドル
  ・営業利益  7.37億ドル
  ・営業利益率 20.3%
 ■第3四半期
  ・売上高  12.3億ドル (前年度比 +13.4%)
  ・営業利益  2.42億ドル(前年比+78%)
  ・営業利益率 19.7%
  ・販売台数 61838台   (前年度比+5.1%)
  ・全世界の販売台数は、各四半期毎に49595台→83396台→61838台と安定した台数を確保
「ホンダ」
 ■上半期
  ・売上高  6,876 億円(前年度比+8.6%)
  ・営業利益   838 億円(前年度比+36.8%)
  ・営業利益率  12.2% 
 ■第2四半期
  ・売上高  3,573 億円(前年度比+14.2%)
  ・営業利益  389 億円(前年度比+29.7%)
  ・営業利益率 10.9% 
「ヤマハ」
 ■1-9月累計
  ・売上高  6,915 億円(前年度比△0.4%)
  ・営業利益  329 億円(前年度比△22.9%)
  ・営業利益率  4.8%
  ・アジア及び中南米は伸長したが、欧州販売減と為替差損
 ■第3四半期
  ・売上高  2,292 億円(前年度比+7.1%)
  ・営業利益   94 億円(前年度比△20.9%)
  ・営業利益率 4.1%
「スズキ」
 ■上半期
  ・売上高  1,377 億円(前年度比+4.9%)
  ・営業利益   7 億円(前年度比+48億)
  ・営業利益率  0.5% 
「カワサキ」 
 ■上半期
  ・売上高  1,062 億円(前年度比△6.2%)
  ・営業利益  △23億円(前年度比△12億)
  ・先進国の販売不振と為替差損
  ・新興国への事業展開を促進する→インドネシア/タイ/ブラジル市場の拡大強化及びインド市場の開拓に着手
 ■第2四半期
  ・売上高  466 億円
  ・営業利益  △26億円(前年度比△8億)


  
日本企業を代表するホンダ四輪はタイ大洪水でまたも苦難に直面している。
日本の自動車大手で唯一、現地の自動車工場が冠水の直接被害を受け、
再稼働の時期はおろか被害の全容もまだ見えないが、救いは成長が続く二輪事業の存在である。

ホンダの頼みの綱は二輪事業と金融サービス事業である。
二輪事業はインドネシアやブラジルを中心とする南米での販売増をテコに、7~9月期の世界販売台数が前年同期比2割増の327万6000台と過去最多を更新。
同事業の営業利益は3割増の389億円に拡大し、二輪事業と金融サービス事業の黒字で四輪事業の赤字を吸収した形になった。
危機のたびにホンダ二輪はホンダの収益を支え、記憶している範囲では、過去これまでに3回以上、ホンダの危機を救ってきた。

そのホンダ二輪事業は新興国での大幅な販売増に支えられ、営業利益率12%の高収益を確保した。
先進国向け二輪の大幅な市場縮小と為替変動による収益の大幅悪化を吸収してるのが、東南アジア(インドネシア、タイ、ベトナム)のモペット群であり、
加えて南米(ブラジル、アルゼンチン、コロンビヤ)の125-150ccオートバイの大幅増加である。
ホンダは景気の急激な落込みと円高の先進国市場から、主力を新興国へ軸足を移し圧倒的な販売台数を背景に収益を確保した。

一方、ハーレーは大幅縮小した米国市場を中心に先進国での販売によって15%近い営業利益率を確保し、今期販売台数目標23万台だ。
収益性の高い大型二輪が良く売れている。

ヤマハも同様に新興国向けを中心に4%以上の営業利益率を確保した。

スズキは営業利益を前年度比+48億好転させ、前年度赤字決算から脱却し7億(営業利益率0.4%)の黒字を達成した。
要因として北米とアジア向け販売が大きく寄与した。但し、欧州は低迷している。

カワサキの上期決算は残念ながら宜しくなく、第1四半期より更に悪化し日本二輪企業の中で唯一赤字決算となった。
カワサキ二輪は2008年以来赤字計上を3年間続けており、今期営業利益目標50億を20億に下げて黒字転換を目指している。
川重HPに掲載された上半期決算には、二輪事業の2011年度見通し及び今後の新興国市場での事業展開についての説明が記述されているが、
1976年フィリッピンで生産開始したにも拘らず、カワサキの東南アジア市場開拓は他社日本二輪企業に比して遅れを取っている説明だろうと理解される。


先進国市場で確実に収益を確保し新興国への触手を伸ばしつつある欧米の二輪企業、今なお急進中の新興国に軸足を移したホンダとヤマハ。
何れの企業にとっても新興国は魅力ある市場に間違いない。
先進国を軸に生活に豊かさや潤いを与えるハーレーと新興国を軸に生活の足としてのホンダが二輪事業の主役であることに当面揺るぐことはない。


決算から少し分かった事は、
ハーレーやホンダ/ヤマハの二輪事業展開を観察すれば、世界的不況と言われる中でも二輪事業は極めて高い収益性を確保できる事業体と言える。
それは、市場動向を見た的確な戦略と素早い決断/実行力が高い収益性を確保できる事業体であることを、ハーレー、ホンダ/ヤマハの決算から読みとれる。
つまり、二輪事業は経営手腕によって、どうにでもなる事業体と言えるのではないだろうか。

そして、今期二輪企業の収益性のSHOOTOUT WINNER は「ハーレーダビッドソン」だろう。
ハーレーダビッドソンの主軸はハーレーが持つ独特の背景、つまりハーレーのバックグランドの明確さにある。
これが、先進国のみならず新興国の二輪ユーザに支持されている理由でもあると思う。


**参考「ハーレーでなければダメなんですか」

SHOOTOUT WINNER 「ハーレーダビッドソン」
 


コメント
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