保健福祉の現場から

感じるままに

特定健診・保健指導の影響 ~がん検診~

2006年11月15日 | Weblog
今年度の地域・職域連携推進協議会を開催するにあたって、管内企業の福利厚生担当者を対象に実態調査を行ったところ、平成20年度からの特定健診・保健指導制度導入を知っていたのは、何と15%に留まっていた。特定健診・保健指導の概要(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1027-7e.pdf)を早急に普及する必要がある。さて、特定健診・保健指導により、企業には新たな負担が伴うことになるであろう。第一に、医療保険者として、従来ほとんど実施していない、被扶養者に対する特定健診・保健指導の新たな費用負担が生じる。健保組合と政管健保の被扶養者には一部国庫補助が予定されているが、本人負担を徴収したとしても、ある程度の負担増はやむを得ないであろう。また、国保等の他の保険者に委託した場合の事務手続き(費用決済、データ送受信、受診勧奨等)に関する負担も気になるところであり、今後の実施体制(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1011-6b.pdf)が注目されるところである。第二に、労働安全衛生法による事業主健診が手厚くなることによる負担増である。事業主健診と特定健診(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1106-11d.pdf)は健診項目が異なっているが、厚生労働省の考え(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1106-11b.pdf)では、事業主健診にHbA1c、尿酸、クレアチニン検査等の追加が検討されるようである。第三に、標準的な健診・保健指導プログラム(http://www.niph.go.jp/soshiki/jinzai/koroshoshiryo/kenshin/index.htm)に基づく保健指導(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/tdfk15-03.pdf)に伴う負担増である。先日の厚生労働省会議において、千葉県九十九里町の健康診査の結果(対象者40~64歳)で、「動機づけ支援」または「積極的支援」の対象者になったのは、ステップ3まで73.3%、ステップ4までで55.6%にのぼる(http://www.wic-net.com/search/search.cgi?mode=search&linktype=index&issue=467&No=4)とされている。国からは保健指導のアウトソーシング(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1106-11g.pdf)が推奨されているが、膨大な対象者への手厚い個別保健指導の費用負担はどうなるであろうか。「保健指導を徹底すれば、医療費が軽減する」とエビデンスをかざしても簡単ではないかもしれない。このように、企業側に新たな負担が求められた場合、懸念されるのは「がん検診」の行方である。従来から企業においても各種がん検診が実施されてきたが、がん検診は特殊な場合を除いて義務ではない。一方、市町村においては、平成20年度以降も、健康増進法に基づいて「がん検診」が実施されることになっている。平成25年度からは、特定健診・保健指導の実績(特定健診受診率、保健指導実施率、生活習慣病減少率等)に基づいて、各保険者に対して後期高齢者医療支援金の加算・減算措置が講じられるため、企業においては否応なしに特定健診・保健指導に力点が置かれるであろう。がん対策基本法(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/tdfk18.pdf)が制定されているが、果たして「がん検診」はどうなるか、注目されるところである。
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