厚労省「平成24年「国民健康・栄養調査」の結果」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000032074.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000032813.pdf)p9の「「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況」では、「過去から現在にかけて継続的に受けている」は約6割であるが、40代男性では38.7%に留まっている。以前、国立循環器病研究センターがプレスリリース「<糖尿病実態アンケート調査結果>約半数の患者さんが血糖管理目標に達していない」(http://www.ncvc.go.jp/pr/release/005581.html)を出しており、「①約半数が血糖管理目標に達していない、②特に50代後半から60代に血糖管理が悪い方が多い、③4割以上が眼科を定期受診していない、④8割以上が糖尿病連携手帳を所持していない」とある。また、以前の「治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ecfl.html)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ecfl-att/2r9852000002ecj9.pdf)p4では、「医師から糖尿病と言われたことがある人で、ほとんど治療を受けていない人は約4割で、また、定期通院を自己中断した主な理由としては、仕事が多忙であるとの理由が多く(51%)を占め、男性・若年・サラリーマンや専門職に中断が多くなっている」とあった。このように糖尿病診療はひどい実態であることはしっかり認識したい。現在、「糖尿病網膜症による失明者は年間3,000人以上(新規失明者の約18%)、糖尿病腎症による新規透析導入者は年間16,000人以上(新規透析導入の約44%)、糖尿病足病変による下肢切断者が年間3,000人以上(全切断患者の40~45%)」(http://www.jds.or.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid000025_6B756D616D6F746F323031332E706466)とされる。糖尿病は、心筋梗塞や脳卒中のリスク要因(http://www.dm-net.co.jp/seminar/16/)(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/019849.php)としても小さくない。地域保健従事者は、従来どおりの糖尿病予防の普及啓発(栄養・運動等)や特定健診・保健指導の推進ではいけないであろう。第一は、「データヘルス」である。今年度からの保健事業指針改正(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000044053.pdf)を真剣に受け止めたい。厚労相資料(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/1115/sankou_01_1.pdf)p4「レセプト等のデータ分析に基づく保健事業(データヘルス)」に示されているように、平成26年度中に、全ての健保組合で「データヘルス計画」作成に取り組まれ、平成27年~29年に第1期計画が実施される。厚生労働省「健康づくり推進本部」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkoudukuri_sokusin/index.html)の4月11日「工程表及び目標案」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000043526.pdf)では、p2「データ利活用の推進」で「個人に対する介護予防・保健事業を効果的に実施するため、KDB等を活用したデータに基づく保健事業の実施」「都道府県等における保健・医療・介護連携した施策を推進するためのデータ利活用の推進;地域別の特徴や課題、取組等を客観的かつ容易に把握できるよう、保健・医療・介護の関連情報を、国民も含めて広く共有(見える化)するためのシステムの構築等を推進する」とある。「特定健診・保健指導データ」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02a-2.html)は受診者のみのデータであって、レセプトデータの分析が不可欠である。市町村国保では、国保データベース(KDB)システムを前面に出さなければならない。昨年10月の「国保データベース(KDB)システム活用マニュアル」(http://www.kokuho.or.jp/hoken/public/lib/kdb_manual_ver.1.1.pdf)p87~「糖尿病の発症・重症化予防を重点課題に設定」が解説されており、普及・普遍化しなければならない。厚労省「医療保険者による保健事業について」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/hokenjigyou/index.html)には、データ分析に基づく保健事業事例集;データヘルス事例集(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/hokenjigyou/jirei.html)も出ており、参考にしたい。昨年8月、厚生労働省が「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000019326.html)で5兆円規模の医療費・介護費の抑制目標を発表(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401250-Hokenkyoku-Iryouhitekiseikataisakusuishinshitsu/0000019923.pdf)、(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401250-Hokenkyoku-Iryouhitekiseikataisakusuishinshitsu/0000019922.pdf)したが、厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000015v0b-att/2r98520000015v4o.pdf)p11~15、(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001w361-att/2r9852000001w3ai.pdf)では、それぞれ保健事業による大幅な医療費適正化事例が紹介されているように、決して夢物語ではないであろう。「国保データベース(KDB)システム」(http://www.kokuho.or.jp/hoken/public/lib/kdb_manual_ver.1.1.pdf)の分析をみれば、今までの保健事業が貧弱にみえるかもしれない。第二に、「医療計画(糖尿病)」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)との連動である。医療計画作成支援データブック(http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=141464&name=2r98520000036flz.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000036854.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000036855.pdf)では、糖尿病医療指標として、糖尿病合併症管理料、糖尿病透析予防指導管理料、生活習慣病管理料等の圏域ごとのレセプト分析による比較検討が可能になっていることは理解したい。平成26年度診療報酬改定(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032996.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039891.pdf)のp51~「主治医機能の評価」では糖尿病、高血圧症、脂質異常症、認知症の4疾病のうち2つ以上(疑いは除く。)を有する患者が対象であることが注目される。糖尿病診療は専門病院中心から、「かかりつけ医中心&かかりつけ医・専門医の医療連携&地域全体でのチーム医療&個人参加型疾病管理」への構造転換を図る必要がある。糖尿病連携手帳(http://www.nittokyo.or.jp/pdf/goods/renkei_techou001.pdf)(http://www.nittokyo.or.jp/ryouyougoods_handbook.html)は、その効果的なツールではあるが、手帳だけあっても役に立たない。そういえば、厚労省医療保険部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008f07.html#shingi126706)での医療保険制度改革スケジュール(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000044082.pdf)では「大病院外来定額自己負担」が項目にあがっており、朝日新聞「紹介状なしの大病院受診、初診料を患者の全額負担案」(http://apital.asahi.com/article/news/2014050900004.html)と報道されている。医療保険制度改革は糖尿病診療にも大きな影響を及ぼすような気がしないでもない。糖尿病診療は、今流行の「総合医」だけで成り立つものではなく、地域全体の医療改革が求められているように感じる。第三に、「健康寿命延伸産業」(http://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140331008/20140331008.html)(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kenkoujyumyou/index.html)との連動である。24日の「「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦」(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html)のこれまでの成果(http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2014/20140624saikosenryaku_hontai.pdf)p7では、「健康ライフコンパス:自己採血による簡易な検査で結果を通知する健康管理サービスを提供」「グレーゾーン解消制度で医師法等に違反しないことが確認(2014年2月) されてから、店舗数を大幅に拡大(2月:84店→4月:124店)」が挙がっている。すでに「臨床検査技師等に関する法律」「薬事法」の一部改正、「検体測定室に関するガイドライン」の制定(http://www.jamt.or.jp/news/2014/news_001103.html)がなされ、経済産業省(http://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140331008/20140331008.html)と厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kenkoujyumyou/index.html)の「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」では、「③簡易な検査(測定)を行うケース」も類型の一つになっている。「簡易な検査(測定)を行うケース」については、キャリアブレイン「薬局での自己採血が解禁へ、糖尿病検査- 改正告示、新たな「健康拠点」に弾み」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/42400.html)、キャリアブレイン「薬局で糖尿病スクリーニング、成果に手応え」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/40421.html)と報道されているもので、糖尿病診断アクセス革命のホームページ(http://a1c.umin.jp/)では、薬局で血糖値を測定するプロジェクトが紹介されている。平成26年度厚生労働省所管予算(http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokanyosan/)の資料(http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokanyosan/dl/gaiyo-03.pdf)p4では、新規で「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進;セルフメディケーション推進のため、 薬局・薬剤師を活用した健康情報の拠点整備や在宅医療に関するモデル事業を実施。」があり、日本薬剤師会ホームページで「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進」(http://www.nichiyaku.or.jp/action/wp-content/uploads/2013/12/131213_1.pdf)が解説されている。また、3月4日の全国健康関係主管課長会議資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2014/03/tp140313-01.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2014/03/dl/140313-01_01.pdf)p105「生活衛生関係営業地域活性化連携事業;本格的な高齢化社会に向けて、生活衛生関係営業者の連携のもと、各事業者の特性を活かした健康づくりや健康寿命の延伸、高齢者の生活支援等に係るサービスの実施を推進する。」とあり、これらの動きも注目である。なお、「「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦」」(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html)の本文(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun2JP.pdf)p94~「個人に対するインセンティブ;医療保険各法における保険者の保健事業として、ICTを活用した健康づくりモデルの大規模実証成果も踏まえつつ、一定の基準を満たした加入者へのヘルスケアポイントの付与や現金給付等を保険者が選択して行うことができる旨を明示し、その普及を図る。あわせて、個人の健康・予防に向けた取組に応じて、保険者が財政上中立な形で各被保険者の保険料に差を設けるようにすることを可能とするなどのインセンティブの導入についても、公的医療保険制度の趣旨を踏まえつつ検討する。」、「保険者に対するインセンティブ;後期高齢者医療への支援金の加算・減算制度について、保険者の保健事業の取組に対するより一層の効果的なインセンティブとなるよう、関係者の意見や特定健診・保健指導の効果検証等を踏まえ具体策を検討する。」、「経営者等に対するインセンティブとして、以下のような取組を通じ、健康経営に取り組む企業が、自らの取組を評価し、優れた企業が社会で評価される枠組み等を構築することにより、健康投資の促進が図られるよう、関係省庁において年度内に所要の措置を講ずる。・ 健康経営を普及させるため、健康増進に係る取組が企業間で比較できるよう評価指標を構築するとともに、評価指標が今後、保険者が策定・実施するデータヘルス計画の取組に活用されるよう、具体策を検討・ 東京証券取引所において、新たなテーマ銘柄(健康経営銘柄(仮称))の設定を検討・ 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」やCSR報告書等に「従業員等の健康管理や疾病予防等に関する取組」を記載・ 企業の従業員の健康増進に向けた優良取組事例の選定・表彰」、「ヘルスケア産業に対して資金供給及び経営ノウハウの提供等を行い、新たなビジネスモデルの開発・普及を促していくため、地域経済活性化支援機構(REVIC)において、「地域ヘルスケア産業支援ファンド(仮称)」を年度内に創設し、地域におけるヘルスケア産業の創出・拡大の支援を図る。」「企業や個人が安心して健康・予防サービスを利用できるよう、ニーズの高い「運動指導サービス」について、「民間機関による第三者認証」を試行的に実施するとともに、そのための学会や業界団体など専門家・専門機関による支援体制を整備する。また、この第三者認証制度等を活用し、事業者の特性に応じた政策金融の活用の可能性等を検討する。」「「医・農商工連携」など、地域資源を活用したヘルスケア産業の育成を図るため、地域版「次世代ヘルスケア産業協議会」の全国展開を図る。」「地域の保健師等の専門人材やアクティブシニア人材を活用するため、ヘルスケア産業を担う民間事業者等とのマッチング支援を行う。」「糖尿病が疑われる者等を対象として、ホテル・旅館などの地元観光資源等を活用して行う宿泊型新保健指導プログラム(仮称)を年度内に開発し、試行事業等を経た上で、その普及促進を図る。」「民間企業(コンビニ、飲食店等)による健康増進・生活支援・介護予防サービスの多機能拠点(総合相談、訪問・通所サービス、宅配・配食サービス、見守り等)を「街のワクワク(WAC WAC)プレイス」(仮称)として、市町村にその情報を一元的に集約して住民に提供する仕組みを来年度中に構築する。」とある。そういえば、3月19日の厚労省「医療法人の附帯業務の拡大について」通知(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/dl/140325-02.pdf)で、医療法人による配食サービスが可能になっており、高齢社会にあって、糖尿病食等の病院給食の配食サービスが期待される。保健事業従事者は、いつまでも縦割りで、狭義の保健事業に凝り固まっている場合ではない。①データヘルス、②医療計画との連動、③健康寿命延伸産業との連動 を通じた21世紀型の保健事業による新しい糖尿病対策の展開が期待される。